第2話 悪魔との契約

        


 「お母さまいってきます。弟2人に負けない偉大なる悪魔と契約してきます。」



 と私は告げるも全く自信がない。弟達頑張り過ぎ・・・お姉ちゃんのハードルは、めちゃあがってるよー。と嘆きながら、私は契りの間に入って行った。


 契りの間は60坪くらいの部屋になる。例えるならば、コンビニくらいの大きさなので、魔王城の部屋としてはそこまで大きな部屋ではない。


 部屋の中心には魔法陣が描かれている。そこに悪魔が召喚されて契りを結ぶのであろう。


 私は部屋に入ると、魔法陣の側に立ち跪いた。そして悪魔が召喚されるように祈りを捧げた。


 たぶんこのやり方で間違いないはずだ。だって部屋に入ると正面に、大きな字で悪魔と契約するマニュアルと題して、このようにしたらよいと書いてあったからである。

 


 祈りを捧げると、冷気が部屋を包み込み、私は凍りつくような寒さを感じた。その時、突如として魔法陣から悪魔があらわれた。


 頭には凶々しい2つツノを生やし、奇怪な3つの顔があり、背中には凍えるような冷たい風を起こす翼、そして、右手には三叉槍を持つ悪魔。その名はサタン。お父様に力を与えた悪魔があらわれた。



 「貴様が、先代の魔王の血を継ぐ女か。たしかに先代を凌ぐ魔力をもっているな。貴様にも俺様の能力を与えてやるぞ!」



 とサタンは不敵な笑みを浮かべながら、私にそう言い放った。



 「ごめんなさい…」


 「えっ‼︎」


 

 サタンの奇怪な顔が、驚きの表情?と言うより言葉の意味がわからないかなような表情に変わる。



 「ごめんなさい。無理です。勘弁してください。」


 「えっ?? えっ!! えっ??」



 サタンは、自分の申し出を断っていることを理解した。


 

 「いや、オレのチカラを授けると言ってるねんけどなぁー」



 動揺したサタンは、先ほどの強い口調から一転し、へんな関西弁ような喋り方に変わってしまった。



 「ごめんなさい。本当に無理です」


 「ありえん。ありえへんわー」



 サタンは予期せぬ事態に呆然と立ち尽くしていた。


 


 「ハ、ハ、ハ、ハ、これは面白い。まさかサタンの申し出を断る子がいるとは!」



 魔法陣からさらなる悪魔が2体あらわれた。1人はカラスのような姿をした悪魔マルファス。そしてもう1人は天使のような姿をした悪魔サマエル。



「サタンの申し出を断るなんて、面白い娘だ。俺たちが代わりに力を授けようじゃないか」



 マルファスはサタンに継ぐ実力を持つと言われる悪魔。そして、サマエルにいたってはサタンに匹敵する実力を持つ悪魔と言われてる。



 「ごめんなさい…ほんとに無理なんです」


 「えーーーーーーーーーー」



 2人の悪魔もまたサタン同様に茫然と立ち尽くす。



 「いや・・・キサマ・・何しにこの契りの間に来たのだ?悪魔と契約しにきたのじゃないのか?」


 「はい、そうです。でも私・・・悪魔苦手なんです」



 私は素直な気持ちを悪魔達に伝えた。だって悪魔の姿が怖いんですもの。特にサタンの後に来たカラスのような悪魔、気持ち悪すぎ!絶対に無理。



「呼び出しておきながら、失礼なんですけど、帰ってもらえると嬉しいです」



 と私は涙目になりながら、悪魔達にお願いした。



 「こんな侮辱を受けたのは初めてだ!お前なんかに能力を授けに来たのがバカバカしい」



 と怒りに満ちた表情を浮かべながら、3人の悪魔は消え去ってしまった。


 私は、ほっとした表情を浮かべながら、安堵の気持ちに満ちていた。やっとあの怖い悪魔達がいなくなったのだから。



 さて、私はこれからどうしよう?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る