第43話 謝罪

「申し訳なかった。もう危害が加わることがないようにしたつもりだ。許してくれ」

 交差点で、山崎純子に渡辺会長が土下座している。

 少女は、当惑していた。どう言ったらいいのかと・・


ーーーー

 前日の夜。

 風間グループの応接室で、渡辺会長は少年に頭を下げていた。

「申し訳なかった、許してほしい」

 少年は、その謝罪に対して、冷たく言った。

「僕に謝ってもらってもしょうがない。やはり僕と同じように無関係な少女が危険な目になっている。その子の安全と、謝罪をお願いしたいね」

 その言葉に、渡辺会長は藁にもすがる気持ちで聞いた。

「その少女はどこに言ったら会えるのか?」


ーーーー

 少女に向かって土下座する渡辺会長。それをヒロは冷ややかに見ていた。

 この危機に対して、彼はどのように対応するのか・・・と

 対応次第では、良い方向にも、悪い方向にも進む。


 その渡辺会長に、少女は言った。

「もういいですよ、そんなに頭を下げられても・・・もう私は安全なんですか?」

「それは約束します」

 常務に対して、昨夜のうちに叱責してある。怪しい探偵などにはすでに伝わっているはずである。

「それならもういいです」

 少女は、安堵していった。

「いえいえ、ご両親にもぜひ謝罪させてください。お願いします」


 少年は、その対応に感心した。いろいろな意味で。

 少女の父親は著名な医師であった。

 その父親に謝罪が通じればもしや・・


「本当に、本当に申し訳ありませんでした」

 山崎純子とその姉の美智子に頭を下げる会長。

「いや、本当にもう大丈夫だから・・」

 純子にヒロは声をかけた。

「もういいの?」

「うん、もういい」

 その言葉を持って、ヒロは渡辺会長に言った。

「良かったね、許してもらえるようだよ」

「いや、一生かけて償わせてもらいます」

 その言葉・・・反省していると思われたヒロは言った。


「渡辺会長。本当に反省してるのかい?」

「はい、大変申し訳なかった、許してくれ」


 するとヒロはため息をついて言った。

「わかった。じゃあ・・もう彼女に危害を加えるつもりはないんだね」

「はい、誓って!」


 ヒロはそんな渡辺会長に告げた。


「わかった。じゃあ直接謝罪したお礼にチャンスをあげよう」

「え。。。」


 戸惑う相手に、ヒロは言った。

「じゃあ、振り返りなさい。渡辺会長」

 恐る恐る振り返る会長。その目には親子連れが目に入る。

 そして・・・その親は・・


「は・・・お・・親父?」

「え・・・」

 その目に映つったのは親子連れ。

 渡辺会長の実の息子夫婦と孫だった。

 彼らにしても驚きの光景だった。

 誰かに頭を下げること無かった父親。

 それが、少女に対して頭を下げている。

「お・・・お前・・・」


 この偶然の邂逅を活かすかどうかは渡辺会長次第。

 


ーーーー

「これで、もう一件落着?」

 話を聞いた松下奈美が聞いた。

 その場には・・・

 山崎純子・美智子姉妹。耕助もいる。

 そして榊怜子も来ていた。

「そうだね、みんな協力してくれてありがとう」

「なんだ、水臭いなあ」

 耕助が言う。

 これで一件落着。

 みんなの協力で解決することが出来た。


 皆の協力一致した結果、全てうまくいったのである。


 皆、一体感に包まれて達成感を味わっていた。


 その時は・・・

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