応援したくなる作品

 すみません。いきなり厳しい言い方になりますが先ず世界観の設定がとにかく甘い。巨象や神官、または魔法といったワードに対する説明がボヤッとしていて、逆に暈すにしては元々これらの言葉が独自に持っている意味が効き過ぎる。巨象は登場時「神にも似た」と形容されながら、(これは後々の流れから読めますが)その間に何も説明ないまま次の場面で「友人」と表現されている。かと思えば「大地の神」と明確に神そのものとして断言される。呼び方自体が変化することは悪いことではないです。読んでいけばそう呼ばれるための理由もある程度書かれています。しかしここは雑にならず理由を先に置いた方がよかったと思います。でないと作者は全体像を掴んでいますが読者(特に僕のような目敏い厄介者)は超然的視点からくる先走りだと感じブレと見えてしまう。せっかくモチーフがいいのに少しもったいないなと感じてしまいました。
 ここからは良いところを。「言葉を持たない者への一方的なコミュニケーション」ここの着目は素晴らしいと思う。理解といったあやふやなものを越えて自己の中で作り上げた意味をどんどん相手に付与していく。これはディスコミュニケーションでありながら否定が入らないので交流にもなり得てしまう。そんな関係性を深く切り込んでいけばそれだけで物語を成立できるくらい素晴らしい着眼点だと思います。おこがましいことを言えば、もっと相関をコンパクトにして巨象とエイラの関係を中心に描くとより面白くなるのではないかと思いました。ついついウエメセな言い方になってしまいましたがいち書き手として応援したくなる一作なのは間違いないです。マイルドな味わいさんにはどんどん書いてほしいと思います。