第4話 勇者が始まり終わる

真のサッカーの勇者を決める為に、俺たちはそれぞれ自分のチームを探す為に旅立った。


ネシスは西に、ナグルは東に、レイは北へと向かう。そして俺は南に向かおうとした。


「なんだと!! 今月の返済分をまだ用意できてないだと!! 貴様俺を舐めてんのか? いや、もう舐めてるなんて生温い! かじってんじゃねえか? もうかぶりついてるレベルだよな!!」


「いえ、そんなことはありません。一週間……いえ、四日でいいですから待ってください」

「待てねえな。残念だけど、体で払ってもらうしかねえな」

「そ……そんな……」


南に向かおうとした最初の一歩、いきなり妙な修羅場に出くわしていた。状況はわかりやすい展開で、借金をした娘さんが借金取りに追い詰められているようだ。


「ほら! かなり如何わしい店に一緒に行くぞ! ヘヘヘッ……あれだったら俺が最初の客になってやるから安心しな!」


「いや〜〜!! それは絶対に嫌です!! 最初があなたは嫌〜〜!! お願いです! 1日でいいから待ってください!!」


「待てねえって言ってるだろうが!! ほら! こっちにこい!」


「助けて!! お願いします! 旅の方! どうかお助けください!」

娘はそう言って俺にしがみついてくる。娘はいい感じに美人で、如何わしい店に入店したら速攻で予約したいレベルではあるのだが、すがられたら助けないわけにはいかないだろう。


「ちょっと待つんだブサイクな借金とりのおじさん」

「誰がブサイクな借金とりのおじさんだ!! なんだお前は?! こいつの知り合いなのか?」

「もちろん完全な他人だが、このまま放っておくわけにはいかないからな。どうだ、カネを払えば問題ないんだろ? いくらなんだ?」

「ふんっ、お前なんかが払える金額じゃねえんだよ! 300万ゴルドだぞ? 贅沢しなければ数年は生活できるほどの大金なんだぞ!」


王女から貰った金額がちょうど300万ゴルドだった。なんとも偶然とは怖いものだ。

「ほら、300万ゴルドある。これでその女性を見逃してやれ」

そう言って、金の入った袋を渡した。


「なんだと!! ほ、本当に300万ゴルド入ってやがる! しかたねえ、そいつは見逃してやるぜ!」


そう言って袋を持った借金取りはどこはへ去っていった。しっかし、硬貨が数え切れないくらいに入った袋をパッと見ただけで金額が分かるとは只者ではないなアイツ。


「あ、ありがとうございます! この御恩は一生忘れません!」

そう言って娘もどこかへ去っていった。



…………──あっ! 無一文になってしまった! しかも軽いお礼だけで娘も去っていくし、どうしよう……。


旅の第一歩で準備金の全てを失うという状況になって、初めて危機感を感じた。生活はどうするんだ? 飯はどうすればいいんだ? ていうかすでに腹が減ってきたぞ。うわ……やらかした……。

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