超絶蹴球列伝 サッカーボーイ三浦くん 異世界編

RYOMA

第1話 決戦サッカーロボ編 最終話

「ダメだ! なんてキーパーなんだ! 言いたくないが、鉄壁とはまさにアイツの為の言葉だろう」


普段強気なキャプテン天音くんが、前半だけで52発のシュートを止められ弱音を吐く。


「身長2.44m、横幅 7.32m……まさかゴールの大きさと同じサイズのキーパーとは……くそっ! 死角がねえじゃねえか!」


俺とツートップを組むスーパーストライカーの飛山くんが愚痴をこぼす。相手チームのキーパーは、ゴールポストにすっぽり入るくらいにいい感じにフィットするボディーを持っていた。


「まあ、ロボットだからね、相手ロボットだから大きく作ろうと思えばできるよね、ロボットなんだから、なんでもありだよね」


チームの頭脳、司令塔の氷室くんがもはや自暴自棄気味にそう呟く。


「馬鹿野郎! 諦めんじゃねえよ! ロボットだろうが、人間だろうが、サッカーやってんなら関係ねえだろ! 同じサッカー選手同士、ゴールを奪うことだってできるはずだ!」


我ながら感心するほど熱い言葉を言い放った。


「しかし、三浦くん、あのキーパーからどうやってゴールを奪えばいいんだ」

「ふっ、考えがある。ボールを俺に集めろ!」


俺には明確にゴールを奪うビジョンがあった。ふっ、相手がロボットなら、ロボットであることを利用すればいい!


「三浦くん! 頼んだぞ!」


作戦通り、俺にボールを集めてくれる。俺は迷わず敵ゴールへとドリブルで駆け上がった。そして、敵のゴールキーパーに向かって──思いっきりを繰り出した。


まさに完全なドロップキック、スパイクの金具の当たったら痛い感じの部分を向けて、渾身の蹴りをロボキーパーの電子部分を狙って放った!


メリメリと金具がロボキーパーのボディーにめり込む。バチバチと電子部品がショートする音が聞こえ、モクモクと煙を吐き出し始めた。


ピッーー!!


「おっと、ヴィクトルズの三浦選手、これはいけません。相手キーパーに危険なプレイだ、これは一発退場になるでしょう」


「何やってるんだ! 退場だ! 外に出ろ!」

「ふっ、おい審判。まさかそれを本気で言ってるんじゃないだろうな」

「抗議しても無駄だ、あんな危険なプレイ認めるわけないだろ!」

「いいか。確かに人間相手ならあれは危険なプレイだろ。しかし! 相手はロボットだ! そんな無機物な相手に危険もクソもないだろ! いや、鉄の塊に蹴りを入れた俺の方が逆に危ない! 危険なプレイをしたのは鉄のボディーを持ったロボットキーパーの方だ!」


「なっ! た……確かにその言い分はわかるが……相手はロボットであると同時に選手でもあるわけだから……」

「なるほど、その意見も一理ある。ならばこうしよう、間をとってレッドカードではなく、イエローカードにするってのはどうだ!」

「ムムムッ……わかった、その提案にのろう」


「おっと、審判、三浦選手に説得された〜〜!! レッドカードを引っ込めて、イエローカードに変更してしまいます!」



「よし、みんな、これで前例ができたぞ! いいか、どんなラフプレーでも一回はセーフだ! サッカーロボットなど、スパイクの痛そうな金属部分で粉砕してやれ!」

ロボット相手になす術がなかったチームメイトたちは、いや、ダメだろ、ちょっと卑怯じゃねえ? と思いながらも、俺の作戦に賛同した。


それから俺たちの反撃が始まった──


みんなスパイクの金具の痛そうな部分を使って、サッカーロボに、ラフプレイを繰り出す。その度にイエローカードを出されるが、交代枠を最大まで使用して敵のチームの大半を機能停止まで追い込んだ。


「しっ……しまった! 俺はイエローカード二枚目だった!」


「馬鹿野郎! うっかり屋さんにも程があるぞ!」


飛山くんがうっかりして二枚目のイエローカードで退場になったが、その他は順調だ……しかし、一つ大事な事を忘れていることに気が付く。そう、サッカーロボの破壊に夢中になってしまい、ゴールを奪うことを忘れていたのだ。


「やばい、もうアディ……なんとかタイムだ! 時間がない、ロングシュートで決めるぞ!」

「そうか、もうア……なんとかタイムなのか! よし、パスを出すぞ三浦くん!」


「おっと、氷室くんからパスを貰った、三浦くん、かなり距離があるがシュート体制に入った! そこへ唯一生き残ったサッカーロボの七番が邪魔に入る!」


「邪魔するんじゃない!!」


俺は強引にシュートを放った。自慢じゃないが、俺のシュートはびっくりするほど痛い。それがサッカーロボの顔面をとらえる。バキッと音がしてサッカーロボの頭が吹き飛んだ。


チッ……やばい、やりすぎたか……一瞬、審判の笛の音が聞こえないか心配したが、なんとかファールを取られることはなかった。


すでにキーパーロボは破壊している。サッカーロボの頭を飛ばした俺のシュートは一直線に敵ゴールへと吸い込まれた。そして審判のゴールを告げる笛の音が鳴り響く。


「よし! 決まった!」


「ゴ〜〜〜ル! ヴィクトルズの三浦選手、見事にゴールを決めました! そしてここで試合終了のホイッスル! 1対0 ヴィクトルズ、見事、サッカーロボ軍団を打ち破りました! これで人類は救われました! サッカーロボ軍団の、人類ロボ化計画はこれで阻止されたのです!」


「みんな、三浦くんを胴上げだ!」

氷室くんがそう声をかけて、俺を胴上げしてくれる。わっしょいわっしょいと掛け声と共に、俺の体が宙を舞う。


母さん……俺、やったよ……兄貴の仇を討てたよ母さん……


田舎で元気に暮らしている母さんと、サッカーロボ軍団の試合に敗れて引きこもりになった兄に向けて心で報告した。

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