出航

「愛梨、おはよう」部屋のドアを少し開けて、お母さんが少し覗きむように、起こしに来た。

「おはよう」目を擦りながら返事をした。

「朝ご飯できてるわよー!!早く学校の準備して、こっちにおいでー」


 ベッドから立ち上がり、カーテンを開けて、窓から朝の光をいっぱいに浴びる。

 腕を頭に上げて、身体を伸ばし、全身の筋肉をほぐして、朝の気分にスイッチを入れていく。

 今日から中学校が始まる。身体はまだ春休みの中を漂っている。

 何週間ぶりの制服を着るだけで、何かワクワクしてしまう。


「おはよう」2歳年上の兄の亜蘭あらんが、すでにリビングでは朝食を始めいた。

「おはよう」

席に座り、朝食を食べ始める。

「愛梨って、中学2年になっても柔道を続ける気なの?」

「続けるけど、何か問題ある?」

「別に、ないけど…続ける理由はあるのかなって思ってるだけ」

「じゃあ、私のことだからほっといくらていいよ。」

それ以上は、亜蘭からも何か言ってくることはなかった。

分かっている。うちの学校の柔道部が弱小だということは知っている。亜蘭は中学生の頃、バスケットボール部で、市の大会で優勝したことがある。別に比較しているつもりはないのだろうが、少し不愉快だ。


亜蘭は食事を終わり、椅子が立ち上がり、食器をキッチンに持って行った。

「もう、出かけてるの?」

「ああ、中学みたいに近くないからな。」

 今年から高校一年生になる亜蘭が、急いそうと荷物を取りに行き、「行ってきます」と言って、学校に出かけてしまった。 

私も急いで食べて、学校に出かけないといけない。


マンションから、学校までは歩いて15分の距離にある。兄の亜蘭も今年の3月まで通っていた。


 桜並木を横目に、春の陽気にひたれながら、通学路を歩く。

 学校に到着して、教室の向かいって、室中の様子を伺うと、見知らぬ顔ばりが揃っていた。

 中に入ろうとしたら「ここ、1年の教室ですよ」と男の子に声をかけられた。


すっかり、進級していたことを忘れていた。

「ありがとう」慌ててすぐ上の階にある2年生の教室に急ぐ。

 教室に辿り着いた。

「おはよう。遅刻寸前じゃん」

「おはよう」

「相沢、お前の席あっちだよ」

「ありがとう」

席に着くと、よくわからない汗をかいて、頬をかすめた。

 着いて1分もしない内に、教室に先生が入って来た。

 友人の彩美あやみから『何かあった?』とスマホに連絡が入る。彩美の座ってる席を探して、こちらを向いていたので目が合った。そして、苦笑いを返す。

 間違って、1年生の教室に行ったなんて言ったら笑われるだろうなと思いつつ、『あとで、話す』と返信を送った。



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