挑み続けた先に待つもの

西東友一

第1話 人事を尽くして天命を待った

「スーーーーーッ」

 視界は真っ暗。ざわめいた音が耳に届いていたが、深く息を吐き、ゼブラ模様の服が掴んでいる左手首のやや上の腕に全神経を集中させる。


ピクッ

 自分の腕を握っていたゼブラ模様の服の男の右手に力が入った。


「2対1で勝者クロサワ!!」

 

 しかし、ゼブラ男の右手に力が入ったのは左手に持ったその男の腕を持ち上げるためだった。


「はぁ、はぁ、うっしゃああああああぁっ。はぁはぁ・・・」

 肩で息をしていたクロサワと呼ばれた男は俯いた顔を上げるが、力尽きてまた下を向く。



 審判の手が離されると俺は気持ちを落ち着かせるために深く息を吐いて青コーナーに戻っていく。


「勝てねぇんだったら、リングで寝てろ!!」

「いつ見てもつまんねぇんだよ、お前の試合は!!」

 いつものように罵声が俺に飛んでくる。


「・・・さぁ、いくぞ」

「はいっ」

 トレーナーがロープを抑え、通りやすいようにしてくれた隙間を通り、控室へ向かう。


「てめぇのは総合格闘技じゃねぇ!!殴られ屋にでもなってろや!!辞めちまえ、サンドバックが!!」

「・・・」

 俺は何も言わず、ただ出口を見て善楽園ステージから消えて行った。

 


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