第2廻-次元を超えた実力者!その名は柊龍舞!

Chapter5-G-FORCE/柊龍舞、アカメ登場


 窓辺から降り注ぐ温かな日差しを瞼に感じ、俺の意識は覚醒した。



 目を開くと真っ白な天井が視界に入る。

 シミ一つない綺麗な天井だ。



 そして一瞬の内に状況の全てを理解した。

 どうやら俺は病院にいるらしい。



 何の驚きもなかった。

 今より小さかった幼少期は病弱な体質だったため、目覚めたら病院のベッドの上というシチュエーションは特段珍しくなかったからだ。



まわる? 気がついたのね!」



「チョコか、えっと……おはよう?」



「おはようじゃないわよバカ! 心配したんだからね! あっ、チョコバー食べる?」



 チョコはいつもの要領でポケットからチョコバーを取り出した。

 袋には【ハジけて飛び出るコーラ味!】と書いてある。



「コ、コーラ味のチョコバー?」



 恐る恐るチョコバーを受け取り、一口かじってみる。

 コーラの風味とパチパチキャンディの弾ける食感がチョコとそれなりにマッチしていた。



 割といけるかもしれない。


 

 しかし無駄にパチパチと弾けたり、コーラ成分が強すぎるせいで全体的にせわしない味となっているためやっぱり普通のチョコバーの美味しいと思う。


「良かったぁ……なんだがうなされていたみたいだったから心配だったのよ。しきりに『兄さん……』、『兄さん……』って。でもアンタ一人っ子でしょ? お兄さんなんていたっけ?」



「……それよりここは何処だ? 見た所病室のようだが……」



「それから先はこのオレが説明してやろう」



『ふむ……やっと気がついたか、歯車の少年』



 病室の扉を開け、現れたのは七色の虹のようなカラーリングをしたヘアースタイルが目を引く切れ長の瞳をした美少年と青い龍騎士タイプのギアソルジャーだった。



 そしてその背後には少年に付き従うようにメイド服に身を包んだ白髪の美少女がその華奢な体躯に不釣り合いに感じるほど大きなアタッシュケースを持って立っていた。



 虹髪の少年が過剰なほど自信に溢れた表情をしているのに対し、白髪の少女は感情の類が全く読み取れないほど無表情だった。



 どっちも多分俺達よりは年上だ。

 だいたい中学生くらいだろうか。



「ここはGジー-FORCEフォースの管理する医療施設の一つだ。Gジー-FORCEフォースがどういう組織かは説明しなくてもいいな?」



 近年増加傾向にあるギアソルジャーを悪用した犯罪、通称GS犯罪に対抗し高い実力を持つコマンダーのみで結成された特殊部隊。

 それがGジー-FORCEフォースだ。



「知ってるよ、でもなんで俺がGジー-FORCEフォースの医療施設に運び込まれたの?」



「順を追って話す。まずは自己紹介からだ。私はGジー-FORCEフォース日本支部隊長のひいらぎ龍舞りょうまというものだ」



 虹髪の少年はギアシューターを起動し、自身のコマンダープロフィールをホログラム投影した。



【コマンダー】ひいらぎ龍舞りょうま

【年齢】14歳

【使用機体】ドラゴナイトブレイヴ

【ライセンス】Gジー-FORCEフォースライセンスetc...



「えェーーッ! アアア、アンタGジー-FORCEフォースの隊長さんだったのォーーッ!? なんでよ! 私達とそこまで歳変わらないじゃん! それにアンタのことなんか公式の大会で一度も見たこともないわよ!」



 コマンダープロフィールを見ていち早くチョコが反応した。


 Gジー-FORCEフォースの隊長クラスとなると少なくとも日本でトップクラスの実力を秘めたコマンダーだということは疑う余地もない事実だからだ。



「その理由はただ一つ、私が次元を超えた天才だからだ」



「自分でそれ言うッッ!? っていうか答えになってないッッ!」



「ちなみにこの髪は自毛だ」



「別に聞いてないわよ! だいたいそんなアニメのキャラクターみたいな髪色しといて堂々と嘘つくんじゃないわよ!」



「驚いた……実に異次元的な解答だ。ついでに言っておくと私は生粋のアニメオタクなんだが君の声は魔法少女アイアンハートに登場する双子のヒロインの声に良く似ている」



「知らないわよそんなこと!」



「試しに『どんな悪事も正義の拳で鉄拳制裁♡』と言ってみてくれないか? なにか新しい次元の扉が開けそうな気がする」



「あぁもう! なんでこんな頭の残念なやつがこの国で一番の実力者なのよォォォォォォ!」



「所詮二次元は二次元……三次元は三次元ということか。やはりアイちゃんとアンちゃんはアニメの中にしか存在しないようだな」



 クールな見た目に反してギャップがすごいなぁこの人。

 しかしこの人のギアソルジャーからは只者じゃない気配を感じる。

 ドラゴナイトブレイヴ……青い龍騎士タイプのギアソルジャーか。



「それでGジー-FORCEフォースの偉い人が俺に何か用?」



「そうだったな、そろそろ本題に入ろう」



 龍舞りょうまさんは虹色の髪をかき上げて、切れ長の瞳をより鋭くした。



「君をここに連れて来た理由は一つ、君のギアソルジャーを調査するためだ」



「フェニックスギアを?」



 少年がパチンと指を鳴らすのを合図に白髪のメイドがアタッシュケースを開けた。



 ケースの中に入っていたのはフェニックスギアだった。  



「フェニックスギア!」



 分厚いアタッシュケース越しとはいえこんなに近くにいたのにギアシューターのレーダーでもフェニックスギアの創成因子ホビアニウムを感知出来なかった。



 もしかしてあのケースにはソウルギアの活動を抑制する力でもあるのか?



『ふぁぁぁ……どうやら眠っていたようだな。あっ! まわる! 気がついたみたいだな! 心配したぞ!』



「フェニックスギアはひとまず君に返そう。ついでにG-FORCEウチの最先端技術を使ってメンテナンスを行っておいた。以前よりフェニックスギアはパワーアップしていることだろう」



 ギアシューターでフェニックスギアの創成因子ホビアニウムを計測すると今までより出力がパワーアップしている。

 龍舞このひとのいっていることは本当だ。



「すごいわ……さすがGジー-FORCEフォース! 技術力は随一ね!」



「確かに今までよりフェニックスギアは強くなったみたいだ、ありがとう」



 とりあえずここから出よう。

 病院というのは何年経っても居心地が悪くて叶わん。



「何処へ行く?」



「もう体力は十分に回復した。病人でもない俺が病院にいる理由はない」



「おかしなことを言うねぇ……君は今も病人のままだよ。それもなかなか重症だ。に疾患があるようだしな」



 不適な笑みを浮かべる龍舞りょうまさんに俺は苛立ちを募らせていく。




「なにを言ってるんだアンタ?」



「フフフ……それにまだフェニックスギアの調査が終了したとは一言も言ってないぞ」



「メンテナンスは終わったんだろ? これ以上こいつの何を調査するって言うんだ」



「実戦におけるフェニックスギアの戦闘力さ」



「戦闘力だと?」



「今から君にはソルジャーゲームをしてもらう。もちろん相手はこの私と私の愛用機、ドラゴナイトブレイヴとな」



「ッッ!?」



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