首を吊ったら女になって妹もできた…!?

ジョリアン

第1話 死のうとしたら目の前に妹がいて俺が女性に!

俺の名前は、松崎信介。

どこにでもいるごく普通のサラリーマンだ。

起きて、仕事に行き、業務をこなして、退勤し、家に帰ってご飯を食べて寝る。

ただそれだけをする毎日。

俺には夢があった。でもそれは叶わなかった。だから今の俺がいる。


皆は、世の中は理不尽だらだけだ、不平等だ。そう思った事はないだろうか。

他人からみたらどんなにちっぽけでも、自分にとっては大きな問題だと思った事はないだろうか。


何か失敗する度に、あの時こうしておけばよかったと後悔したことはないだろうか。


世の中そんなことばっかりだ。

現実は甘くない。そう全人類が思っているだろう。


そして、誰もが思うであろう事は……やり直したいという欲求だ。

後悔したあとに必ずくるのが人生のリセットだ。分岐点といってもいい。

あの頃に戻って人生をやり直したいと思う。

そういった気持ちだ。


でも、現実にはそんな都合のいい話はない。

誰もがそう思っている。

世の中誰もがそんなことができてしまったら、人生失敗談というものがなくなってしまう。

成功者の中にも必ず失敗している人はいる。

そうして失敗に失敗を重ねて成功を掴み取っているのが、ひと握りの世界だ。


「あぁ……俺の人生はなんて無駄なんだ…」

最初にも言ったが、俺には夢があった。そのためなら人生の全てを賭けてもいいと言えるものだ。

だが、それは現実が許さなかった。その夢に立ち向かおうとしていた時期もあったが、やはり現実は非情で俺の努力を無に帰す。

俺の夢は、妹と一緒に過ごす。そしてもし叶うならば妹と一緒に何かをしたかった。妹と一緒に何かをできるのであれば、なんでもいい。

でも現実は非情だった。

俺は一人っ子だった。

………え?なんだそんな事かって?

おい。お前ふざけんなよ!俺がどれだけ妹を待ち望んでいたと思っているんだ!

俺は妹が大好きなんだ!

どれだけ好きかっていうと友達の家に遊びにいく振りをして、友達の妹に会いに行っていたというぐらいだぞ!

ちなみにその友達にバレて思いっきり気持ち悪がられたけどな!


そう、人生の失敗だ。

どうしても上手くいかない。

妹がいれば・・・妹がいるところに生きたい。

それが俺が生まれてはじめて抱いた感情だ。


世の中には美少女ゲーと呼ばれるものがあり、その中にも妹モノというものがあるが、そんなものは幻だ。幻想だ。

俺はリアルの妹が好きなんだ!

え?オタクかと思った?

違う!俺は妹が欲しかっただけなんだ!別に世間でいうところのオタクだとかそういったものじゃない!


十分キモイと思った?

そう、他人からみたら全く重要じゃないどうでもいいこと。

だが……俺からしたら死活問題なんだ!

なぜ、俺がここまで妹が好きかというと、理由はとくにない。

友達が妹と遊んでるのをみて、俺も妹がほしい。

ただなんとなくそう思っただけだ。

そう、俺はただ単純に妹が欲しい。ただそれだけだった。


もしも妹がいたらどうするか、一緒に遊んで一緒に出かけて一緒に生活をしたい!

一人っ子では味わえなかった、妹がいる生活というのを俺も味わってみたい!

ただ純粋にそれだけのために、俺は人生を生きてきた。

保健体育の授業で、そういうことだと習った瞬間に両親に妹がほしい!と言ったら困られたくらいだ。

頼む、神様でもなんでもいいから俺に妹がいる世界に送ってくれ!

そう数え切れないほど願った。


何度も言うが、そんなことは絶対にありえない。起こりえない事象。

現実は常に非情。

いくら願ってもそんな願いはかなわない。

だったらもう死ぬしかない。

このまま生き続けたとしても、妹はどうせ生まれてこないし、むしろもう両親はそういうことをする事自体が疲れてしまうだろう年齢になっていた。

逆に俺が結婚して、そういう行為をしてもできるのは娘。

娘と妹は違う。そりゃ当たり前だ。


妹がいる女性と結婚して義理の妹でもいいか。と考えた時もあった

でもやっぱり俺自身に血のつながった妹がほしい。

そうでなければ、何か違う気がする

そうして、俺のモヤモヤは晴れなかった。


俺ももういい年だ。

いつまでも夢を見ているわけにはいかない。

だけど、やっぱり心の根底には、妹との生活があった


だから俺は、みんなが考えている上で一番最悪の展開をしてみようと思った。


「やり直せないなら、いっそ死んで、妹がいる世界に転生しよう」







そうして俺、松崎信介は

ラノベの転生主人公よろしく、首を吊って、自分の人生を終了した。




今までの長い前説から、当然そんなことは起こりえない。

俺の人生はそこで終了するはずだった。




だがどうしたことか。俺の意識はまだあった。


どうやら首を吊ろうとしたら、ロープが切れて俺は首を吊ったショックでそのまま床に落ちてそのまま気を失っていたらしい


だが、何かが明らかにおかしかった。

身体がおかしい。

色々と明らかにおかしかった。


「んー?」


まず、俺の声だ。

いつもの俺の声じゃなかった、なんかよく駅前とかコンビニとかで見かける女性のような声だった。

「声が高くなった・・・?」

ヘリウムガスでもすったんだろうか。体がいつもよりなんだか重い…。とにかく、俺の身に何が起こったのか鏡を見る必要がある。そう思って、洗面所に移動しようと目を開けた。


そこに広がっていたのは────

さっきまで俺が住んでいた実家の部屋じゃなかった。いや、実家なのは変わりはないようだ。

階下から親がメシだと呼んでる声がする。


つまりここは実家で間違いはないだろう。

であれば問題はこの部屋だ。


辺り一面は茶色ではなく真っ白の壁、ファーのクッションやピンクのストーブ……

まるで俺の脳内にある女子の部屋だ。

「一体なにが・・・?」

俺はいてもたってもいられず、自分の状況を確認しようと、扉に手をかけたときだった。

扉が思い向こう側からあけられたのだ。


「うわっ!起きてたんだー。でも、それなら返事しないとダメだよ?」


扉を開けたのは誰かわからない少女だった。

見た所高校生くらいだろうか。

黒髪のロングストレートヘアー。寝巻き姿なのをみるとまだまとめてないだけだろう。

目元はくりっとしていて、うっすらと化粧だけはしてあるようだ。


「えっと、ごめん。君は?ていうかいつ来たの?昨晩はいなかったよね?」

俺は扉をあけたそんな少女にそう聞くと少女はとんでもないことを言い出した。


「へ?何言ってるの、『お姉ちゃん』私は『お姉ちゃん』が生まれてそれ以来一緒に住んでるじゃない」


………まてまてまて。どういうことだ、これは。都合よく俺の願いがかなった?

それは素直に嬉しい。素直に嬉しいが、この少女はその他にも重要なワードを口に出していなかったか?


そう、『お姉ちゃん』だ。


「えっと、誰がお姉ちゃんなのかな?」

「んー?お姉ちゃんはお姉ちゃんじゃん。変なの。」

そういって目の前の少女は小さく笑った。

いや、まて。落ち着け。まずは状況を整理─────


「ほら、早くいかないとお母さんに怒られちゃうよ、早くいこ、お姉ちゃん」

「おわっ、ちょ!」


俺はそうやって少女に手を引かれるがまま階下にいった。

途中にある洗面所の鏡に少女に吊られながら映った自分の顔を見たときに悲鳴をあげなかったことを俺は誇りに思うだろう。


───そう、俺はなぜか首をつったら妹ができた上に、女子高生になっていたんだ

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