僕が主人公じゃない方です

脇役筆頭

自己紹介が主人公じゃない

自己紹介。


俺はどこにでもいる普通の成人男性。中肉中背の頭と酒癖の少し悪い父と、容姿端麗頭脳明晰、欠点という欠点は見つからないかのように思えるが唯一の欠点として男である母の間に爆誕した。


「ねぇ、パパ。どうして僕にはママがいないの?」


幼くして無神経な質問に良いことがないことを知る。空腹に耐える夜は少なくなかった。


父は伝説の魔法使いらしく、よく自分の武勇伝を語ってくれた。火の魔法を使えば高熱で火傷を負い、水の魔法を使えば津波を引き起こし溺れたそうだ。


「なに、魔法がみたいだと?なら酒を持ってこい。」


「でかしたぞ、澄み切った高そうな酒だな!…ん、魔法だと?今は…調子が悪いな。」


「若い頃は凄かったんだぞ?でも実はな、もう使え…なんだ!水じゃねぇか!」


結局見せてくれることはなかった。


父…もとい、母…?は父と比べたら全然らしいが、とてもすごい魔法使いだったらしい。


「実は生涯をかけた一番使いたい魔法は使えなかったのだけどね。」


仕事から帰った母はソファで寝ている父を見て遠い目をする。


「もういらないの。」


ため息混じりにおかま口調の野太い声で話す母に、返事をするかのように父が屁をこいた。俺は驚き、父と母とを交互に眺めてしまうのだった。


日中母は忙しくほとんどが仕事の毎日。それをせっせと消化するのが父の仕事。俺は学校に通っていた。


「パパって何人いる?」


「1人。」


謎は深まるばかりだったが、それ以外は特に平凡な毎日だった。そう、取り上げるほどのエピソードが無いほどに。


そうこうしているうちに学校を卒業し、あっという間に社会に放り出された。俺はこれといった特技もなければ才能もない。悪く言わなければ欠点がなかった。


俺は父の仕事について話を聞いてみることにした。


「なに、仕事が知りたいだと?なら酒を持ってこい。」


「これまた水じゃないのか?…え、仕事だと?今は…調子が悪いな。」


「若い頃は…やっぱり水じゃないか!」


父は日に日に臭くなる一方だった。


「なんの仕事をしているのかって?ふふふ、なんだと思う?」


母は今年で52であるが、朝起きた時以外は父と同じ匂いはしなかった。


俺はなんでもできたため、魔法適性がオールクリアだった。全て平凡ではあったが、使えない魔法がなかったのだ。


俺は魔法使いになることにした。


父達が伝説の魔法使いというのは本当だったのかもしれない。すごい魔法使いだったのも本当だったのかもしれないと、今更ながら考えを改めるのだった。


俺は卒業後、注目を浴びるために『超越』に着手することにした。成功しても失敗しても、こういう試みをしたということを評価してもらおうと考えたからだ。


俺は魔法に失敗し、大爆発を起こして死んでしまった。という落ちで事故紹介は終わりだ。


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