第2話 ハナビ

仕事を終え疲れきったまま駅へと車を走らせる。お迎えの時間だ。雨の中こちらへと一目散に走ってくる。構内から車までの距離ほんの少しの間傘を差せばいいのに面倒臭いらしい。

ロータリーでくるりと向きを変え、いま通ってきたばかりの道を戻る。

同じ時間に同じ場所同じ道。日暮れが早くすっかり夜になっている。少し前なら明るかったのに。時間は確実に流れている。

フロントガラスに打ち付ける雨のせいで前方が見えにくい。

「え?あれって花火じゃない?」

「あ、ほんとだ」

雨の中の打ち上げ花火。話してる間には終わってしまった数発の花火だった。季節外れすぎる。嘘みたいな光景。二人とも確かに見たんだ。そういえば花火大会もお祭りもない夏だった。

時間がずれてたら車の進行方向が違ってたら…なんて。一瞬そこに花火が見えたのは間違いない。

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