エルハイミR-おっさんが異世界転生して美少女!?-2

さいとう みさき

プロローグ

第1話プロローグ:私がエルハイミですわ!!


 ここは俗に言うファンタージ異世界。

 女神が実在して魔法が使えて竜やモンスターが歩き回っている世界。


 あたしはこの世界にテロリストに殺され転生して来た者。


 元男性だったけどこちらの世界では女性として生まれ育った。

 そしてあたし自身はこの世界では女の子だと自覚している。


 名をエルハイミ=ルド・シーナ・ガレントと言う。


 見た目は十五歳くらいの少女で金髪碧眼、トレードマークのこめかみの上に左右三つずつトゲの様なくせっ毛がある。


 自分で言うのも何だけど美人の部類に入ると思う。

 そして現在未亡人と言う身だ。



 「今回も違ったのかぁ、これで何度目?」


 焚火を見ながらあたしの従者兼『嫁』であるエルフのシェルは温めたスープをあたしに渡して来る。

 透明に近い金髪と深い緑色をした瞳を持つエルフの中でも飛び切りの美人だ。

 ただ、エルフ族の特徴で胸は非常に残念なのだけどね。


 あたしはそれを受け取る。



 「仕方ありません。実際に見に行かなければ分からないのですから」


 あたしそっくりで頭から竜の角とお尻に竜の尻尾を持つあたしの娘同然の女の子、コクがそう言う。

 長い黒髪が焚火の光を反射してつやつやとしている。

 大体見た目が十歳ちょっとの彼女は美しい陶器のような顔に似つかわしくない眉間にしわを寄せた。

 そしてスラっとした手足を投げ出してくつろいでいる。

 

 そこへやはり頭から竜の角とお尻に竜の尻尾を持つ赤毛でこめかみの上に左右二個づつトゲの様なくせっ毛を持つあたしにも何処と無く似ている五歳ちょっとの少し釣り目で活気のある可愛らしい女の子、セキがぺたりと寄り添い唸る。


 「はぁ~、またお母さんじゃ無かったね。ねえエルハイミ母さん、次の情報は?」


 セキは姉の様なコクの手元にあるスープを覗き込む。

 そして「お肉少ないあなぁ」とか言っている。


 「まだ確か乾燥肉があったはずだがセキよ、食うか?」


 年の頃三十路を過ぎた感じの左手が義手の男性が腰についているポーチをまさぐる。

 しかしそのポーチは小さいはずなのに彼の腕を肘の辺りまで飲み込んでいる。

 

 これは魔法のポーチ。

 

 エルフ族が作ったほとんど数次元ポケット。

 その気になればドラゴンだって入れられる。  

 


 「え~? 乾燥肉美味しくない! それよりショーゴが近くで狩りしてきてよ! 新鮮なお肉食べたい!」


 セキにそう言われたその男性は名をショーゴ・ゴンザレスと言い歴戦の戦士でもある。

 彼はすくっと立ってシェルに言う。


 「近くに野生の動物はいないか? 狩ってくる」

 

 シェルはめんどくさそうにしているモノのすぐに精霊魔法で近くの様子をうかがう。


 「近くにイノシシがいるわね。結構大きいかも」


 そう言ってシェルは向こうを指さす。

 

 「暇つぶしに私も行きやがるです」


 この場に似つかわしくないメイド服を着た黒髪の少女がそう言って一緒に立ち上がる。

 可愛らしい顔つきのあたしよりやや年下に見える彼女は短いスカートを翻す。

 思わずあたしはそれを覗き見る。

 可愛い顔に反して黒い下着を装着した絶対領域の中は「どきっ」とさせられる。

 


 しかしこの娘って本当に黒しか穿かないなぁ‥‥‥



 あたしがそう思っているとシェルがあたしの耳を引っ張る。


 「何クロエの下着のぞき見しているのよ! 全く相変わらずなんだからエルハイミは!」

 

 クロエと呼ばれたその少女はあたしを汚物でも見るような目で見る。


 「相変わらずでいやがりますね、主様は。しかし黒龍様に同じような事は許しませんでいやがりますよ!」


 「これクロエ、主様に失礼では無いか」


 凄んで見せるクロエさんに対して見た目が五十歳くらいの白髪交じりの髪の毛をオールバックで髭を携えたダンディーなおっさんがたしなめる。

 彼もこんな場に似つかわしくない執事のような格好をしている。

 

 名をクロと言い、クロエさん共々黒龍の化身であるコクの従者でドラゴンニュートだ。

 ちなみにセキも赤竜と言う太古の竜が転生した姿であたしの魔力によって孵化したせいであたしに似ているしあたしを母親としてなついてくれている。

 

 「お母様にならむしろそのままこの体ごとお召し上がりいただきたいです! いっそ抱いてください!!」


 コクは衛兵さんに聞かれたら「衛兵さん、この人です!」と言われそうなセリフをあたしに言って頬を染め抱き着いてくる。

 可愛い娘あつかいなんだけどこの子も転生した太古の黒龍であたしにそっくりなのはあたしの魔力で卵から孵化したせいだ。


 「コクっ! 離れなさいよ!」

 

  シェルがふくれるとその肩にキラキラと光る軌跡を残しフェアリーのマリアがとまる。


 「シェルぅ~、スープじゃなくお菓子無いの?」


 「お菓子ばかり食べてないでこのスープ飲みなさいって、マリア」

 

 スプーンにスープをすくってマリアに差し出すシェル。

 マリアはそれをフーフー吹きながら飲んでいる。


 あたしはもう一度焚火を見る。

 

 あたしたちはあたしの伴侶であるティアナの転生者を探している。

 色々あって彼女は短い人生をあたしを守るために終えた。

 しかし彼女は女神の力によって確実にこの世界に転生出来る事となっているのだがポンコツ女神のせいでもう一人いる冥界の女神がへそを曲げティアナの転生が何処になるか、何時するかが分からない状態になってしまった。


 あたしはため息をつきながら彼女の髪の色と同じ真っ赤な焚火の炎を眺める。


 そして彼女のあの笑顔を思い出す。


 早く見つけ出してまた一緒に静かに暮らしたい。

 あたしの大切な人。

 あたしの愛する人。

 同じ女性同士でもあたしたちは愛し合っている。


 「ティアナ‥‥‥」


 ぽつりとそう言うあたしにシェルが残念そうに言ってくる。

 

 「エルハイミ、渡りのエルフからの風のメッセージだわ。どうやら今度は南みたいね。ティアナの転生者かも知れないわ」


 従者であり一応あたしの「妻」でもあるシェルはティアナがいない間あたしの正妻だって言ってるけど唇以外許していない。

 そんな彼女だがティアナを探す事は協力してくれる。


 だからこうして風の精霊を使った全世界のエルフ同士のネットワークの情報もちゃんと教えてくれる。

 

 シェルの言葉に他のみんなも注目する。


 「今度は南ですわね」


 あたしがそう言うとみんな静かに首を縦に振る。

 そしてあたしたちはティアナの転生者を探しにまた動き出すのだった。

 

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