第34話 流行りものと現実・その3

もう一つ、忘れられない出来事がある。

バレンタインだ。


女子がこれだけいて、チョコをあげないのはどうなんだ?

と誰かが言い出したのだと思う。


そこで、全員でお金を出し合ってチョコを買い、

プレゼントすることになった。



30人以上が少しずつ出し合えば、それなりの金額にはなる。

彼はきっと、高校生にしてはお高めのチョコを貰った、はず。

(買い出し係ではないので良く知らない)


そこは良い。問題はその一ヶ月後。

要するにホワイトデーだ。


大人し目の男子高校生が女子全員からの高級チョコ(?)を貰ったらどうなるか、

私達は想像していなかった。

別にお返しを期待してのことでもなかったし、あげたことも忘れていた。



ホワイトデー当日。

彼は大きな段ボールを抱えて登校してきた。


そう、お返しのお菓子だ。

そのまま教卓にどーんと置き、朝礼で配り始めた。


きっと、お家の人に相談したのだろうな^^;

本人も家族も、「お返しをしなければ」と考えたに違いない。


彼はきっと、ときめきとは別の意味でドキドキしたことだろう。


まぁみんな笑っていて和気あいあいとしていたし、

楽しい記憶の一つだ。……私には。



◇次回で終わりです。

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