第3話 ゲーム開始(後編)

銀次が待機部屋に向かう際、黒のスーツにサングラスをかけた男や女は見かけたがそのような格好をしていない人間とは全くすれ違わない、そして彼らは銀次を見ると「一般人のくせにうちの組織…しかもあのシズクにたどり着いた小僧だ」や「物好きなガキだな、わざわざ自分から落ちてくるなんて」と口々に行っていた。銀次は彼らをシズクと同じ組織、それもシズクとは違い、末端で切捨てられる様な立場の人間だと察した。なぜなら自分がシズクの居る通称ゲームマスタールームに案内された際、彼らと同じ格好をしていた金髪の男性がシズクに殺されたからだ、と言っても殺された彼はシズクに対しては特に何をした訳でもなく、部屋に入る際ノックをせずにいきなり「役に立ちそうにもない気が狂ったクソガキを連れてきましたぜ」と言って部屋に入っただけだ。それに対してシズクは「…ん、ありがとう…でも気に食わないことがいくつか有るし…死のうか?」と言い、彼に歩いて近寄ったと思うと喉をナイフで切り裂き、いとも簡単に殺していた。さらにその後黒服の1人を部屋に呼びだし「始末しておいてよ、文句があるなら君も殺すよ?」と普通に言うと呼び出された黒服は顔を青ざめながら「了解しました、すぐに始めます」と言い、殺された男を引きずって部屋から出したと思うとすぐ違う黒服が入ってきてモップで彼の血で汚れた床を掃除していたからだ。普通に考えるといくら裏社会の人間といえども同じ組織の人間を殺し、さらに文句があるのならその人間も殺す、つまりシズクはこの組織の幹部クラス、さらにこの組織は年齢などは関係なく、実力…恐らく人を殺す能力に長けた人間が上に立っているのだろうと銀次は考えながら自らの待機室へ向かっていた。

銀次が自分の待機部屋に入るとまず目に付いたのはゲームマスタールームにあった多くの武器の山だった。これは恐らく他の人間が銀次の部屋に入った際に怪しまれないようにするための気遣いだろうと思い、武器の山から視線を動かすと次に目に付いたのは部屋の中央にあるテーブルだった。遠目にはリュックと何か色々なもの有るのが見て取れる。銀次はテーブルに近づき、置いてあるものを確認した。テーブルの上には大きなリュックサック、天然水入りのペットボトル、携行食であるカロリーバー、そしてスマートフォンだった。とりあえずスマートフォンを手に取り、電源を入れると端末にはただ坂口銀次と銀次のフルネームと過激派、という文字、そして電話のアイコンが出ており、試しに電話のアイコンを押すと???という欄が14個あるだけで電話は掛けられない、という状態であり、どうやって使うのか、ということを考えていると壁掛けモニターの電源が入り、バタフライマスクを被ったシズクのすがたがうつった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る