第22話

ティルを抜いた俺はアノンのお母さんの前に行くとアノンが心配そうな声をかけてきた。



アノン「翔…お母さんの封印解けそう?」



翔「うん!大丈夫だよ、すぐ封印を解いてあげるからね!」



そう言い俺はティルに願いを告げる。



翔(ティル!アノンのお母さんの封印を解いてくれ!!)



ティル(分かってるわよ!)



投げやり気味にそう言う彼女の声が聞こえたかと思うと頭の中に文字が浮かぶ。


3→2


間違いなく残りの願いを叶えられる数のことだろう。


これが0になった時は装備者の命が奪われることになっているが俺にはあの能力があるから大丈夫だろう。



アノンのお母さんの方を確認する。すると、石の体にメキメキメキと亀裂が入ったかと思うと石の部分が弾け飛び、中から白いドラゴンの体が表れた。



中から出てきた白いドラゴン、聖竜王であるアノンのお母さんは純白の鱗に包まれており、姿形も美しかった。



ドラゴンを見てきれいだなと思うとは思わなかった。


少しの間見とれているとお母さんが口を開いた。



聖竜王「私の封印を解いてくれたのはあなたですか?」



竜の中でもトップに君臨するはずの竜王の一体であるにも関わらずアノンのお母さんはとても礼儀正しい人、いや竜だった。



翔「あ、はい!そうです、もう体調のほうは大丈夫ですか?」



聖竜王「ありがとうございます、私は聖竜王のウェールと言います。ウェールとお呼びください。

あなたのお名前をお聞きしても?」



翔「俺の名前は宇佐田翔です、あなたの娘さんのアノンに頼まれてきました。」



そう言うといままでタイミングを伺っていたアノンが我慢できずにウェールに向かって飛び出した。



アノン「お母さん!」



ウェール「アノン!」



ウェールさんもすぐアノンに気付き、人化を行いアノンに抱きついた。



ウェールさんはアノンと同じで白い髪に黄色い目のとても綺麗なお姉さんのような姿だった。



アノン「ごめんね!お母さん!もう言いつけ破らないから!」



ウェール「うんうん!もういいのよ、それよりあなたも無事で良かったわ!」



そう言いあいながら抱き合う二人に思わず涙を誘われた。



ティル「まさか、私の呪いが誰かを助ける日がくるなんてね、ほんとつくづくマスターといると初めての事ばかり起こるわね!」



カンナ「よかったですね!アノンちゃん!」



リーシア「これこそ家族のあるべき姿ですね!」



それぞれ別の反応を示しながらしばらくの間、二人が落ち着くまで見守っていた。







ウェール「本当に何から何までありがとうございます。

このお礼に何かさせて頂きたいのですが。」



翔「それでは、アノンと一緒に冒険をしたいのですがアノンを連れて行ってもよろしいですか?」



その言葉にウェールは少し寂しそうな顔をしたが



ウェール「アノンにも私以外との関わりを持って広い世界を見てほしいと思っていたのです。むしろこちらからお願いします。」



と言い頭を下げてきた。



翔「ありがとうございます。頼もしい仲間が増えて俺も嬉しいです。」



ウェールはニッコリ笑い、ふとアノンに尋ねた。



ウェール「ところでアノン、翔さんとはどこで会ったの?」



その質問にアノンはビクッとした後に



アノン「奴隷市場…」



と小声で言った。


その途端、ウェールは急に今までの優しい雰囲気を消し去りアノンに詰め寄った。



ウェール「なぜそんなところで会うの!!どういうことか説明しなさい!」



そして簡単にアノンが経緯を説明した。その間ウェールさんは俯いて黙って聞いていたが、話が終わった後矛先が俺に向いた。



ウェール「翔さん、あなたが奴隷市場に行った理由をお聞きしてもいいですか?」



翔「俺たちが奴隷市場に行ったのは、手っ取り早く強い仲間が欲しかったからです。アノン以外にもそこにいるリーシアも同じ奴隷市場で買いました。」



即答した俺をさらにフォローするようにリーシアも続く。



リーシア「主様のおっしゃることは本当です。現に市場の中で一番強いのは私とアノンちゃんでした。それに、主様はアノンちゃんのお母さんの話を聞いてすぐ助けると判断されたのです。ですから、主様は立派な方だと私が証言します!」



そう言いニコッと俺に笑いかける。



リーシアは本当に良い子だな~、どっかのカンナにも見習ってほしいと思っていると



カンナ「そうです!翔さんはちょっと意地悪してくることはありますけど本当に困ってるときは助けてくれたり気を遣ってくれるような良い人なんです!」



珍しくちゃんとしたこともカンナが言った。


カンナがストレートにほめてくるのが新鮮だったため少し照れてしまう。



ウェール「なるほど、疑ってしまって申し訳ありませんでした。翔さんは人として素晴らしい方なのですね、買ってくれたのがあなたみたいな人で良かったです。」



そしてアノンの方に向き直ると、俺に言った時より怖い顔で



ウェール「少しアノンと話をしてきますので皆さんはお待ちください。

アノン、ついてきなさい。」



こう言った。


アノンはもうすでに泣きそうな顔をしながら母親のあとについて行く。


そして、見えないところまで行ったあとウェールさんの怒鳴る声が聞こえてきた。







しばらくして、初めの優しそうな雰囲気に戻ったウェールさんと現在進行形で泣いているアノンが戻ってきた。



普段優しいお母さんが怒ると怖いよね…


俺達はいまだ泣き続けるアノンに同情しながら落ち着くまで待つことにした。




後書き

読んでいただきありがとうございました。


感想、レビュー、ブクマ、評価(下の星)、批評等していただいた皆様も本当にありがとうございました。


これからも投稿させていただきますので、

よろしくお願い致します!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る