第2話

 入学式が終わって帰宅中の私達三人は、普段と変わらず今日合ったことを話し合っていた。

 私は特に何もなかったから、なおくんと達也の出来事を聞くのに夢中だった。


「へえ、なんか達也らしいな」


「そんなことないですって、尚輝さんだって」


 男二人で盛り上がってるのは良いんだけど、二人とも私の事忘れてないかな?


「っと尚輝さんこのへんにしないと姉さんが拗ねちゃう」


「誰が拗ねるか!」


 羨ましいとは思ったけど!拗ねてない!


「あうっ……なおくん」


「そう怒んなって、何もなかったもんな」


 そう、何もなかったのだ。いつものメンバーで、休日の間の事を話してたりしてただけで本当に何もなかった。

 だからこそ距離を詰めたかったんだけども、恥ずかしくて出来なかった。


「まあ姉さん、こうみえて天然っていうか抜けてるとこあるから……」


「てん……?抜けてる?んん?」


「まあそこが結希らしいんだけどね、はぁ……」


 何か私の顔見ていきなり溜め息付かれたんだけど……?


「そういえば結希、今日誰かに呼ばれてなかったか?」


「そうだっけ?憶えてないや」


「……通りで俺んとこに通知が来るわけだ」


 ???

 なおくんは一体何を言ってるんだろうか?


「まあ明日謝るから、なおくん帰ろ?」


「っ!お、おう……」


 一方達也の方は……。


「なーんでこれで付き合ってないんだろ……両片想いなのにさ、今度こそ俺が動かないとダメか……はぁ」


 とかなんとか言って呆れながら後ろに付いてきてた。




 ☆




「おかえり、二人とも」


「ただいまーお母さん」


「……ただいま」


 リビングでテレビを見ていたお母さん、よくみるとメモ帳とスマホが手元にある。

 また旅行でも行く気なのかなあの二人……?


「そういえばお父さんは?」


「自室で仕事、全く今日ぐらいゆっくりすればいいのに」


 ちょっと拗ねた口調で口を尖らせながら、お父さんとイチャイチャしたかったみたいに愚痴ってくる。

 私は苦笑いをしながらスマホを取り出す。


「あ、結衣おばさんが今日うちに来るって」


「結衣が?」


「お、お父さん?!驚かせないでよもう」


 背後から声が聞こえて慌てて振り返った、音もなく現れるから心臓に悪いったらありゃしない。


「げっ……来るのか」


 私達とは逆に嫌な顔をしている達也。

 そういや従妹が達也に妙に懐いてたような……?


「今着いたって」


「速いな……」


「俺部屋戻り「たつ兄~!!」


 達也に抱き付き頬ずりしながら上機嫌な愛衣ちゃん。


「寂しかったよーたつ兄」


「……姉さん助けて」


 その一方お父さん達。


「お兄ちゃ~ん!!」


「ぐはっ……!お前もかわんねえな……」


「えへへー、褒められちゃった、せいくん」


 お父さんもお父さんで結衣おばさんに抱き付かれていた。

 遺伝だなーなんて呑気に見ていた。


「いや褒めてるんじゃなくて呆れてるだけ……」


「二人とも久し振り、愛衣も元気そうね」


「母さん見てないで助けて……」


 露骨に嫌そうな顔をしている達也、そんなことお構いなしに甘え始める愛衣ちゃん。

 無理矢理引き剥がそうとするお父さん、離れたくない結衣おばさん。

 私達は顔を見合わせて


「「「……遺伝だね」」」


 苦笑いで溜め息を付いていた。

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