アノレキシアの百合

宵澤ひいな

アノレキシアの百合

1.親愛なる月彦くんへ

 

 人生にリセットが効くならば、

 あなたと出逢う前の私へ、

 すべてをリセットしたいものです。


 月彦つきひこくん。

 あなたへの想いが、こんなにも狂おしくなることを、

 出逢ったころに誰が予測できたでしょう。


 あなたは自律神経失調症で、交感神経と副交感神経がゼロヒャクを激しく行きつ戻りつする不快感にさいなまれながらも、決して怒りを私に浴びせることなく、王子として徹底した優しさをせつけてくれましたね。


 お店に遊びに来てくれたこと、本当に嬉しかったのです。

 店員の私に、口紅とマニキュアを予約したころの、あなた。

 そのころの深入りしない関係性をずっと持ち続けていたほうが、

 幸せだったのかしら。


 あなたからもらった沢山たくさんの思いやりを花束にして、私の心に飾っています。


日芽子ひめこさん」


 呼ぶ声が聴こえます。

 許されるなら、もう一度、あなたの横に咲く花に成りたいものですね。


 心と身体の行き場所を失ったかのような私を、たすけてください。

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