公爵の密かな楽しみ

のの(まゆたん@病持ちで返信等おくれます

第1話 思い出と来訪者

この御話は 金の髪 美丈夫の姿を持つ

黒の国の大貴族リュース公リジャイアヌスの小話・・



その日 朝早く娘のアルテイア姫が出かけた 明後日には戻るという・・


湖の中にある城で のんびりしていた


丁度 時間が出来て する事のないリュース公は 本を読んでいて・・それから


昼近くに・・リュース公は 


うたた寝をして 昔の出来事を幾つか夢に見る


それらを思い出し くすっと軽く笑う・・


夢に出て来たのは 思い出の中の黒髪 焔の瞳の少年 黒の王アーシュラン様

まだ 黒の王子だった頃の・・



今もだが あの方は アーシュラン様は案外とポーカーフェイスは 苦手のようだ・・


くすくすと笑う・・


我が黒の国の主・・今は 少年の姿になった黒の王・火竜王(サラマンデイア)



記憶をなくし 子供の姿に変わり・・やはり あの頃の記憶がないせいか 少し変わられた


白の国の処刑から逃れて逃げ出して会った当初の子供の頃・・大人になられた後も見せてた


あの寂しげな 暗い表情をあまり表に出す事が少なくなった・・。


特に 森の魔法使いの弟子のワン子に会われてからは

本当に子供のような無邪気な一面も何度か見た・・。


それに 今は 同じ血族の者達がいないとはいえ 


傍には 記憶をなくしても 今もなお愛しておられるエルトニア姫に 将軍となったセルト殿

側近のタルベリイ殿・・私の娘アルテイシアもいる・・・。


あの頃は 黒の国を奪還する為の 戦いばかりの日々に・・奪還後は 国の立て直しやら

様々な出来事が続いたが・・


合間の僅かな時間で 私が 巨人族の言葉に文字 加えて近隣の国の言葉 

他にも様々な必要な知識を 教えたものだが・・

・・・・

・・・・・・・。


本棚の中から教科書代わりに使っていた 巨人族の本を久しぶりに手に取る・・


ついでに・・ つい二人きりの時は さりげに・・悪さを私が仕掛けたものだが 

・・最初はきょとんとされ・・後には


必死でかわしておられたな・・ふふっ



リュース公は 元は両生体で 子供の頃は女性だった頃もあるせいか・・


戯れ(たわむれ)の恋の相手なら 別に男女は問わない・・。


だが 少々 好みにはうるさいが・・選ぶのは極上の者・・。


最初の相手が あの先の黒の王・・アーシュランの父親 竜の王だったせいもある


もし・・最初の妻が生きていたなら あるいは あの白の国の羽琴の姫君・・エリンシア姫が

私の妻になってくれたなら・・


この時折 湧き上がるうずくような戯れの恋を求める癖は おさまったかも 知れないが・・


「・・それにして あの時の黒の王子だった頃のアーシュラン様の表情は 初々しくて

良かった・・」しみじみと思い出して 口に出す


あの時 この黒の国 奪還中の戦い・・


私は 巨人族に一時囚われた大事な娘のアルテイシアを救う為

黒の王子であったアーシュラン様を 巨人族の兵士に引き渡したのだ・・


勿論 彼を すぐに救出するつもりではあったのだが・・


彼は 素早く 巨人族の牢屋の中から逃げ出し 傷だらけの身体で 私の居城に忍び込み

私の背中越しに立って ショート・ソードを私の首筋にあて

問う・・


彼の口元には 軽い笑み 

しかし赤く燃えるような大きな焔の瞳は笑ってない


「それは 貴方が怒るのも無理はありませんが ですが 

ですが・・こちらにも こちらの事情があったです」とリュース公は言った


「人をだまして 巨人族に引き渡す程の事情とは・・?」アーシュラン


「信じないのは 貴方の勝手ですがね アーシュラン殿」軽くため息をつくリュース公


「で・・とりあえず これをどけてくれません?」

後ろからアーシュランにあてられたショートソード(剣)を指さすリュース公


「断る」すげもなく言う


「姫(アルテイシア)が敵の手に落ちたと言っても?」リュース公


「アルテアが!」


「そうでなければ 誰が貴方を傷つけないとなどと・・」


「私が本気で思ってると・・?」リュース公は そっと優しく話しかける



そう言いながら 私は振り返り 剣を握った彼の左手首を取り 

そっと服を脱がしにかかる・・肩の上の方 少し胸元近くが はだけて見える


今度は 私の唇が彼の首筋にあてられる・・


「・・えっ?」「えっ?」


青くなるアーシュラン


握っていた私の手を 振り払い ピタリと私の顔に前に剣を向ける


「こ・・今後の事を話し合うか?」



もう片方の手で 赤くなりながら ぎゅっと自分の服の胸元を押さえる


なんと!初々しい・・などと思いながら

私は微笑んで 彼に話かける


「どうしました?声がうわずっていますよ?」くすくすと笑う


あの時の顔・・表情は 本当に愛らしかった


その後 無事にアルテイシアを救出して 事なきを得た


成人して 凛々しい姿の彼も良かったが

今は あの頃の同じ 子供の姿・・


思わず笑みが零れる


すると 部屋のドアを叩くノックの音


召使の一人がドア越しに声をかける

「リュース公様 黒の王と白の国のリアン殿が訪ねて来られてます」


なんと アーシュラン様が!それにリアン殿とは! 

今回はいつも一緒の白のエルトニア姫でなく

変わった組み合わせだな


「今 行く」リュース公は 髪と服を急ぎ整え 二人の待つ 客間に向かう 


「こんにちは リュース公殿 」リアンが微笑む


「ひさしぶり リュース公 元気だったか?」明るく話しかける黒の王 少年の姿のアーシュラン


「悪いな・・急に訪ねてきて・・実は 巨人族の国の本が多数こちらにあると聞いて 来た」


「? 巨人族の本ですか?」


「ええ・・巨人族の言葉や文字は少しはわかるのですが・・やはり少々勉強不足でして

アーシュラン殿も 覚えていたはずの巨人族の言葉や文字を少し忘れたと言われて・・


二人で勉強する事にしまして・・あいにく 黒の王宮には 巨人族の本が少なくて・・

こちらに 多数の蔵書があると聞きまして・・」

 

「ええ・・城の図書室に多数 蔵書がありますよ 幾らでもどうぞ・・」微笑むリュース公


「ところでアルテイシア姫は?」とリアン


「ああ・・いつもなら飛んでくるのに アルの姿が見えないな」黒の王アーシュランことアーシュ


「今日は 留守にしております 明後日には戻るそうです」


「それは残念です」リアン


「・・・」微妙な顔のアーシュラン



「ああ!そうだ お二人とも 昼のお食事は?」とリュース公


 「いえ まだです」とリアン


  「まだだ・・」アーシュラン


「では 先に昼の食事をされませんか? すぐに用意させます」


「良いのですか?」とリアン


「ご遠慮などされずにそうぞ・・」


食事をしながら 会話は弾む 


そして二人をそれぞれ見ながら リュース公は思う


やはりアーシュラン様は いい・・

それに 片腕だが あの淡い金の髪 青い瞳のリアン殿も


にっこりとリュース公は笑う


「どうせなら 泊まっていかれれば どうですか?お二人とも

私で良ければ 巨人族の言葉をお教えしますよ・・。」


「それは有難いですが よろしいのですか?」とリアン


「いいのか?」アーシュラン


「ええ どうぞ!」とにっこりと微笑むリュース公


数日前・・アルテイシアは しっかりとリュース公の顔を 見据えながら言ったものだ


「・・昔みたいに アーシュラン様を お父様の毒牙にかけようなどと・・

押し倒そうととするなどど そんな事は決してしないようにね!


お父様の性癖は どうしようもないけれど・・


だから他の方は どうでもいいけどね・・まあ そっちは刃傷沙汰だけは避けて頂戴!

見逃してあげる!


死んだお母様か 

あのエリンシア姫がお父様の妻なったのだったら 浮気はしないとは 微妙に怪しいけれど そう思うのだけど


でもアーシュラン様は 私とエイルの二人だけのものですからね!」


「はいはい まだ 諦めてないのですか? 第二の王妃の座?」


「当然じゃない すたれたけど 一応 重複結婚 今でも可能なのだから」


笑ってウインクするアルテシア


「はたから見ても アーシュ様は あのエルトニア姫ひとすじ・・本当にあきらめの悪い子だ」


「なんとでも おっしゃい! 今度のお出かけの時にお土産買ってこないわよ」

笑いながら 言うアルテイシア


などなどと・・・良く出来た娘アルテイシアとの会話を思い出しつつ・・


今宵は 何も覚えてないアーシュラン様に

何も知らないリアン殿と三人


アルテイシアは留守


二人を愛でながら 楽しい夜になりそうだ


そういえばリアン殿に関しては・・何も言わなかったな ふむ


まあ・・なかなかに 手が出せないのが 残念だが

リュース公は思った・・。


しかしアルもいない事だし・・二人に眠り薬か痺れ薬でも一服盛るかな・・


FIN


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