第2話

  今回はセリフ多めです。地の文はすくないかもです。ちな前回より字数が多いっす…




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あの後、自己紹介と部活の詳細な説明を受け、入部届をその場で書かされた。まあ運動部でやっていける自信はなかったし、文化部の方にも特に入りたい部活もなかったのでこれで良かったのかもしれない。

 

 「いやー、嬉しいね。この部活にも新入部員が入ってくれるなんて。」男子部員A改め竹ノ塚峰斗(たけのつかみねと)先輩。高身長。甘いフェイスとは彼のための言葉と思わせるイケメン(だと少なくとも僕は思う)。高2なんだそう。


 「うんうん、ポスター頑張った甲斐があったよね!」引き戸を開けてくれた先輩、曳舟青空(ひきふねそら)先輩。ゆるふわな印象を持たせる人。髪型はサイドテール?とにかく横で髪を結った髪型で、活発な印象を与える。同じく高2。


 「やっ↑たぜ!」女子部員Dこと雫石美冬(しずくいしみふゆ)先輩。身長小さめ。お姫様カットの幼女然としたいでたち。またしても高2。


 「やったなり!これで鉄研が我が校の部活の覇権を握る日も近い…」なにやら不穏なことを呟いているこの人は佐貫春汰(さぬきはるた)。メガネ男子。顔は整っているがメガネが本体だろう。こんなこと言っているが僕と同じ新入生。この学校の部活事情の何を知っているというのか。


 「あなたも新入部員でしょうが…」佐貫の発言に呆れたような雰囲気の彼女は勿来瞳子(なこそとうこ)先輩。黒髪ロングの正統派な委員長キャラ。彼女曰く委員長ではないんだとか。実は高3で、こうして部活に出るのは1学期末までが限界なのだそう。


 「全然話変わりますけど、僕鉄道詳しくないんですよね…」和気藹々とした雰囲気で話す部員たちにそう言ったのは僕、横瀬遙(よこぜはるか)。はるかなのに男の子という僕は小学校の時はさんざんイジられた…訳もなく普通に友達と楽しく遊んでいた。


 「「「「えぇ…」」」」


 ……ちょっと知らないだけじゃないか。引かれるようなことでもない、と思う。

 

 「まあ詳しくない人が入ってくることもあるだろうとは思ってたから僕は不思議ではないけど。これから知っていけばいいからね。」

 「ただ、部誌を書いてもらうときに大変だろうから今年の旅行は横瀬くんに鉄道を知ってもらう旅にしよーよ!」

 「いいね、大宮とかね。」

 おー、助かる。せっかく部活に入ったのに無知が祟って話についていけないというのではあまりに寂しいからね…

 「大宮以外に鉄道を深く知れる場所ってあるんですか?」

 「そうね。大宮の鉄博、名古屋のリニア鉄道館、京都鉄道博物館は国鉄、JRの広い歴史とかかつて使われた車両とかを扱っているわ。だけど横川の碓氷峠鉄道文化むらとか加悦鉄道資料館みたいに特定の路線を紹介する施設もあるわね。」

 「そうなんですか。」

 「例えば碓氷峠鉄道文化むらは主に信越本線について。それも横川〜軽井沢間っていう鉄道好きなら一度は調べる区間の歴史と運行していた車両を紹介しているね。」

 「ほんほん。」

 「これまた語ると長いんだけどね、この区間は昔から交通の難所として知られていてね、特に途中の勾配は66,6パーミルという驚異の急坂として知られているんだ。もちろんこの勾配では列車、それも観光客やビジネス利用する人たちを乗せた長大編成の列車は登れない。だから国鉄はEF63という電気機関車を用いて協調運転という仕組みをとることで長い列車もらくらく登れるようにしたんだ。ここにもある秘訣があってね、それはアプト式っていう日本にはほとんど現存しない方式の鉄道をここに敷設したんだ。つまり往年の急行能登や特急あさま号といった北陸を目指す有名な列車がー」

 「長い」

 「それじゃ伝わるモンも伝わらないなり」

 「早口だったからね…」

 竹ノ塚先輩…怒涛の早口解説を披露してくれたが何言ってるか全く分からんかった。

 

 「そもそもアプト式って?」

 「まあジェットコースターの最初の上り坂みたいな感じだよ。レールの真ん中にもう一本レールを用意して歯車を噛ませて、モーターと歯車を巻く力で急坂を登る方法だね。」

 「現存するアプト式の鉄道は大井川鉄道井川線にしか残っていないのだ」

 「雫石先輩の声聞くの久々な気がする」

 ふむ、そうなのか。井川線にも乗ってみたくなってきたな。

 

 「ちなみに信越本線は今はないんですか?」

 「いいえ。分断されているけれど、まだ残っているわ。」

 「一部は第3セクターとなって、JRではなくなってしまったけどね」

 「高崎〜横川が信越本線、横川ー軽井沢は代行バス、軽井沢〜篠ノ井はしなの鉄道、篠ノ井〜長野は信越本線、長野〜妙高高原はしなの鉄道、妙高高原〜直江津はえちごトキめき鉄道、直江津〜新潟が信越本線と飛び飛びで存在してるのだ」

 「へ〜、そうなんですね。でも途中を別の会社の路線にしちゃうなんてそんなに採算がとれなかったんですか?」

 「採算が取れない路線だったというよりは、これから採算が取れなくなりそうだったって感じかな。」

 「というと?」

 「上越新幹線が開業して、ここをJRがそのまま持ってると利用客減少による赤字をもろに受けちゃうから、JRや自治体がお金を出し合って維持するという第3セクター方式を採用して別会社にすることで、赤字を被るのを回避したってわけ。」

 ほう、そんな歴史が…思っていたよりもこの路線は奥が深いのかもしれない。というか曳舟先輩の説明が非常にわかりやすい。

 「でも新幹線開業の影響を受ける路線ってまだまだありますよね?」

 「上越線とか最たる例なりな。でもあそこには一定数の観光客が見込めてるし、土合駅がモグラ駅として有名になって来訪する人数が年々増えてるなり。」

 「スキーとか登山とか?」

 「そういう需要もあるわね。苗場スキー場とか谷川岳とか、そうしたレジャー需要もあったから利用客はそこそこいるわ。でもやっぱりローカル線のイメージよね。」

 確かに都会を走るイメージは薄い。でもこういう路線は一般利用のお客さんも意外と多かったりするものだ。

 「その辺のこともよく知るために碓氷峠鉄道文化むらに行こう!」

 「いいわね、日曜日に東京駅集合でね。」

 「じゃあ早速顧問に報告するなり!」

 「そして集合時間は早朝6:30なのだ!」

 「みふゆちゃん…横瀬くんにそれは酷じゃない…?」

 「顧問って誰なの?」

 「金山由美先生よ。」

 「…担任じゃないっすか。」

 

 まさか顧問が担任だったとは…あの人のテンションちょっと苦手なんだよね…

 「まあトリッキーな人だけどいい先生よ。仲良くしてあげて頂戴ね。」

 どの目線での発言なんすか、勿来先輩。さて、どうやら次の部活は日曜日、僕の鉄道勉強会みたいな感じらしい。結局集合時間はほぼ始発の時間に決まった…辛い…

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