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その方向を見ると黒い野戦服の雲突く大男が切り詰めた散弾銃を片手に仁王立ちしている。
その声を聴いた索敵隊員共は「隊長!」「大将!」と口々に叫ぶと、まるで我に返ったように急に勢いづき効果的な反撃を始めた。
雄叫びを上げ、果敢にウルグゥ戦士に挑みかかり白兵戦を始める。
マズイ、あのお香の効果も薄れかけている。数に勝る敵が有利だ。
コイツが隊長か?ならこいつを潰して指揮命令系統を混乱させるしかねぇ。
塹壕の隅に教授を横たえ、綿の襟巻を畳んで銃創に当て軍用包帯で固定する・・・・・・。気やすめだろうがな。
手当が終わると立ち上がり、奴さんに声を掛けた「お宅がこいつらの隊長さんで?」
俺に気付いた奴はこちらを睨むと。
「如何にも、俺がソブロ・ゴルステス大尉、バルハルディア人民国海兵隊第3索敵大隊第4中隊隊長だ。ひょっとしてアンタがライドウ少佐殿か?」
「おうよ、おれがオタケベ・ノ・ライドウだ」
「なかなか味なマネそてくれるじゃねぇですか?エエ少佐殿。サル共と思いきや、中々楽しませてくれる兵隊に仕立ててくれちゃって」
「早くお家へ帰って、冷えた
「残念ですなぁ少佐殿、そいつは永遠にお預けだ。アンタはここで、死ぬからなぁ!」
いきなり散弾を叩き込んでくる。
そんなの読めてたんで素早く動き、塹壕の中を駆け抜けヤツへの接近を試みる。
ところがあいつもそれを読み、いきなり目の前に飛び込んで来やがった。
彼我の距離 一
銃剣を突き立てるが大男にも関わらず器用によけやがる。
発砲するが銃身を跳ね上げられ全弾命中とは行かねぇ、何粒かは奴の顔面を捕らえたが頬肉を削った程度だ。
「痛てぇじゃねぇか!」物凄い勢いの蹴りがまっすぐ叩き込まれてくる。コンゴウ式で受け止めるが、冗談だろ?銃身と機関部が物凄い音を立てて泣き別れ!
バケモノか?コイツ。
蹴りの勢いで後ろに吹っ飛ばされ、土嚢に思い切り叩きつけられる。
ゴルステスはコキコキ首を鳴らしながら近づいて来た。
「愉快だ、ホントに愉快だ。自分はですなぁ、弱い者いじめも大好きでありますが、実は強い奴をぶち殺すのもだぁ~い好きなんでありますよ。少佐殿、気に入りました、で、ありますから」
そしてものすごい勢いで突進してくる。
「影も形も無く成るほど派手にブチ殺して差し上げますよ!」
巨大な軍靴の底が迫る。身を逸らして除け、肩から吊った二十式将校銃を引き抜き、顔面目掛け連射。
ところが奴は両腕で顔面を覆い七.五粍 《ミリ》弾を受け止めやがった。・・・・・・コイツ、本当に人間か?
今度は強烈な右の拳が襲ってくる。身をかがめて交わし、地面を蹴って奴の脇をすり抜け後方に回る。が。
気付かれ俺の行く手に脚を伸ばして来た、わき腹を蹴り上げられる。つま先が胸の右横にめり込み体の中で嫌な音がする。
肋骨、二、三本やっちまったか?
だが、移動しながらだったのと奴も不意を突かれたのもあり蹴りの威力は幾分殺された様だ。でなきゃぁ今頃、俺、死んでるぜ。
奴の背後に転がり込み、何とか態勢を立て直す。
半分になったコンゴウ式を拾い、ミンタラ刀を回収すると右手に二十式、左手にミンタラ刀を構えゴルステスに向き合った。
深呼吸をするが恐ろしく痛い。肺挫傷?
構わず二十式を撃ちまくりながら突っ込む、奴も散弾をぶち込んでくる。
鉛の球の嵐が俺の顔の横、左の脇をかすめる。奴も七.五
二人が交差した。俺は奴のわき腹に刃を送り込み、奴は俺の足元目掛け散弾を叩き込んでくる。
すれ違い立ち位置が変わる。
俺は奴の散弾を何粒か左腿に喰らい、出血が酷い。まさか動脈とかやってねぇだろうなぁ?
奴もわき腹を強かに切りつけられたはずだが、その割には血の量は大した事ねぇ。まさか筋肉で止血してるとか?
益々人間離れしてやがるぜ。
二十式の弾倉は空、予備弾倉を装填する間もない。武器はミンタラ刀と革脚絆に刺した短剣のみ。
ヤバい。相当にヤバい。
「少佐殿に飛び道具を使うとは、飛んだ失礼な真似を致しましたなぁ、それじゃあ反省して、コイツで遊びましょうか?」
散弾銃を銃嚢に戻し、左腰から抜き出したのは反りのある蛮刀。お椀のような鍔を持ち握り手を護る籠上の金具もついている。
「俺の故郷で『チェッテ』って呼ばれてる奴でしてねぇ、俺の親父はこれでブタとつかえねぇ使用人の首を良く落としてましたよ。アンタの場合は首を落とすだけじゃ申し訳ねぇ、元の形が解らなくなるまで刻んで差し上げますよ」
と、何が嬉しいのか大笑い。俺も釣られて笑っちまったぜ。まったく。
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