第20話 「僕たちは興味津々」

 神様ぁ〜、神様ぁ〜、お願い神様ぁ!

 

「ほほっ、ワシの可愛い信者よ、どうしたのじゃ」


 神様ぁ、この得点の意味を教えてちょーだぁい!


「それはじゃ、ゲームに得点はつきものじゃからの」


 やっぱゲームじゃん! ふざけやがって、なにがワシの可愛い信者よだよ、気持ち悪! このふざけ神!


「なんと!」


 あのゲーム操作盤、コマンド入力とか出来ないのか?


「ほほっ。

 はて、なんの事かのぅ?」


 お爺ちゃん神だから古いレトロゲームしか知らないのか。

 やっぱり役に立たないな。


 それと俺がイマダンを操作していた時の記憶が彼にあるような事、呟いてたんだけど意味分かるか。


「オヌシに操られている間の記憶がないのは、あの男も辛いじゃろうて。

 じゃからあの男の記憶を操作してオヌシが操作している間、ささやかな記憶を与えたのじゃ。

 これならオナゴ達とも上手くいくじゃろ」


 またしても神お得意の記憶操作か、マッドサイエンティストだな。


「ほほっ。

 ここでお別れのようじゃな」


 えっ?


「ワシの助言も、もういらぬであろう。

 これからは自分で考えて判断し行動するが良い」


 それは……


「さらばじゃ、へやぁぁぁ‼︎」じゅばばば!


 神様は銀色に輝きながら天空へ飛んで行き、お星様となった。


 一方、人間界ではイマダンを除け者にして女子会が開かれていた。

 彼の不可解な行動についての考察だろう。

 話し合いは終わり、焚き火にあたりながらの食事の続きが始まりイマダンもその輪に入った。


 戦闘で中断した食事も終わり、盾も洗ってもらって元に戻してもらってゴキゲンな彼。

 

 “クンクン”


 盾の匂いを嗅いで臭そうな表情のイマダン。

 まだ調理した野ウサギの匂いが染み付いているのだろう。

 しかしコイツは匂いフェチなのか? やたらと匂いを嗅ぎたがるなぁ。

 匂いを嗅いでブサイクな顔になったその時、後片付けを終えた魔童女が近付いて来た。


「なんだ、ひとりでもあいからわずだな」


 彼女もあいからわず毒舌だ。


「今日はこれで帰るぞ。

 オマエの調子が知れたからな。

 明日は朝早く出発するから早く寝るぞ」


 魔童女は言い終わると同時に歩き始めた。


「ま、待ってくれ〜!」


 なにも準備していないイマダンは慌てて自分の荷物をかき集めて彼女たちを追いかけた。


 明日は早朝から妖精を退治するのか。

 我々の戦うモンスターは悪い妖精だと知れた。

 いよいよ本格的な戦闘が始まる……俺は一日たった三分しか活躍出来ない……これからの戦い、コインの使いどきを見極めなくてはいけないだろう。


「明日の朝って……また戦うのか?」


 イマダンは疑問を声を出して女子たちに聞いて来た。


 お前たちは悪の妖精討伐隊なのだから当たり前だろ、イマダンはなにをしに異世界ファンタジーに来たんだ!


「オマエはバカか!

 オレ達はただ、ピクニックをやりにこんな危険な地域に来たというのか!

 この島の平和のために戦うに決まっているだろ!

 バカめ」


 イマダンはシュンとへこみながら帰路についた。



   ***



 帰りの道中、俺はあれこれ考えていた。

 この壮大な森林、澄み渡る大気、透き通る清流……あっ、シカだ! シカは我々を見て森の中に隠れてしまった。

 野生のシカは初めて見た……うれしい……いや、奈良の公園で観たっけ。

 ……俺は荘厳な大自然に抱かれて心は洗われたが、後悔は残った。

 

 小、中学生の頃はサッカーをやっていたので、女子にモテた……はっきり言おう、俺はモテてた!

 サッカーの試合の時なんか、学校の女子から応援されたし、ほかの学校の女子からも声をかけられたりした。

 バレンタインの時はチョコをたくさんもらったし、告白もされた。

 うんうん、間違ってないよな……俺、モテてたよな……


 でもこの頃は友達と遊んだ方が楽しかったし……女子といるのは恥かしかったし……友達に見られて冷やかされて、なお恥ずかしくなったりした。

 子供の俺はまだ恋愛の事はよく分からないし、まだ早いと思っていた……女性の事はいろいろと興味津々なのに。


 高校に入ってあちこち周りの男女がくっつき始めた頃、俺はプログラム開発部に入った。

 この部活を始めてから女子との会話がなくなった気がする……明らかに女子と疎遠になった。

 部活は楽しかったが、色恋が遠ざかって行くのが辛かった。

 女性の事はすべてに興味津々なのに。

 男子高校生だもん、恋したいよね。


 そして俺は神様に騙されて異世界に来てしまった……

 それはまぁいいとして……俺はなぜ躊躇したんだ! 

 素直にモトダンの身体に入って転生すれば良かったのに……生まれついての優柔不断が悔しい!

 後悔してもしきれない!


 転生すれば今頃……

 俺は目の前の彼を見た。

 彼は下を見ながらトボトボと最後尾を歩いている。


 俺も同じ目に合っていたのか……でも、肉体があるのとないとでは全然違う! あったほうが良いではないか、熱き血潮を感じたい!

 

 女の子をさわってみたい……いやいや表現を間違えた! 

 女の子にふれてみたい……目の前にカワイイ女子がいるのにふれる事さえ出来ないなんて……


 俺は先頭を歩いてる一番お気に入りの娘を見た。

 一瞬だったけど甲冑少女は今までで見て来た女性の中で一番可愛く感じたし、一番俺好みに感じた。

 眩しく感じたのは美少女だから? 美少女は発光するのだろうか?

 戦闘の最中だから一番生命力が満ち溢れていたからかもしれない……

 それとも彼女に一目惚れ……恋……したから……これが恋……初恋? ぽっ!

 頭の中はお花畑で満ち満ちていた。



   ***



 いろいろ考えていたら村の門の入り口に着いていた。

 皆んなは手の甲の戦士の紋章を空中に浮かび上がらせている。

 イマダンはまたあたふたしている。

 戦士の紋章を出す言葉を忘れたらしい、魔童女にまた叱られている。


 宿に帰ってまたあの不味そうな野菜スープをいただいて、それぞれの部屋に入った。


「ふぅ!」


 イマダンはため息をついてベッドに倒れ込んだ。

 さすがに今夜はこのまま眠るだろう。

 あんなに皆んなから責められて心も身体も萎えているはずた。


「おれ、皆んなに怒られてたなあ……

 あんなに怒らなくてもいいのに……」


 ほらね。

 

「でも、怒った顔もたまらん!」


 えっ!

 イマダンはそそくさとズボンを脱ぎ始めた。


 嘘だろ……


“ドンドン!”

「キュピ!」


 部屋のドアを力強く叩かれた。

 今、レッドキャップのカワイイ悲鳴が聞こえたぞ、どこだ! 

 村の中、この部屋にも悪い妖精が潜んでいるのか? 俺は周りを見渡したが見つからない。

 ……今のイマダンの声?


 急いでズボンを履き直したイマダンは恐る恐るドアを開けた。

 そこには、これからオカズにしようとしていた女子たちが並んで立っていた。


「ち、違うんだ!」


 慌てふためくイマダンは、もう口癖と化した言い訳をしていた。

 当然、彼女たちには意味不明な行動に映ったであろう。


「なにを言っている? これから『みんなの大衆浴場』に行くぞ!」

「記憶がなかったから昨日は行けなかったにゃん? だから連れて行ってあげるわん!」

「一緒に行こうヨ」

「……」


 みんなの大衆浴場……そうだ、昨日からコイツ臭いんだ。

ちょうどいい、皆んな連れて行ってくれ。


「う、うん」


 よし、いい返事だ。

 イマダンは元気よく部屋を飛び出した。



   ***



 村の中はあいからわず閑散としている。

 公衆浴場までの道中、村人とはほとんどすれ違わなかった。


 彼女たちはそれぞれ小さな荷物を持っていた。

 お風呂セットに違いない。

 この中にはきっと、し、下着が入っているに違いない!

 あとシャンプーや石鹸やバスタオル、入浴後の乳液などの化粧品も入っているかも。

 妖精っ娘も小さいポシェットを首から掛けている。

 それに引き換えイマダンは着の身着のまま、手ブラでお風呂に入るつもりだ。


 服装も軽装で、魔童女はあの杖とフード付きのマントを羽織っていない。

 マントがないと小さいのとかなり華奢である事が良く分かる。

 どこから見ても立派な幼女だ。


 詩人少女は琴や身体に付けた秘宝魔具は着けていない。

 大衆浴場よりも宿屋に置いた方が安全との判断だろう。


 それに引き換え、甲冑少女と妖精っ娘は普段通りの格好だ。

 妖精っ娘はイイとして甲冑少女のそのフル装備はなんなんだ。

 その甲冑しか服はないのか? もしかして甲冑の中は裸なのか?

 まさか、甲冑を着たままお風呂に入らないだろうな?

 腰にはレイピアを携帯したままだ。


 銭湯で戦闘が行われるのか?

 俺は自分のダジャレに高得点をつけて、ひとりほくそ笑んだ。

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