俺好みの美少女に間違いない!

第13話 「ウサギとカメ」

 クビって……クビってなんの事?

 俺もイマダンも、どう対応すればイイのか分からずにいた……て、クビぃぃ‼︎


 バレたのか? おれたちが悪霊……いや、異世界転生者である事が!

 分からない……思い当たる場面が多過ぎて、どれがどれなのか分からなぁい!


 俺たちの冒険が始まったばかりなのに……ここで皆んなとお別れなのか?

 これが俗に言う追放ものと呼ばれるものなのか……


 イマダンが足を震わせながら地面に膝を付けた。

 両手も地面に付け、土下座をしながら告白を始めた。


「お、おれ……み、皆んなの体臭で欲――」


 イマダンの恥ずかし過ぎる告白を魔童女がさえぎり理由を語り始めた。


「オマエを、このパーティーのリーダーから解任する!」


 ……?

「……?」


 えっ! リーダー……解任? なんの事?


「どうだ、悔しくて声も出せないだろう!」


 魔童女が勝ち誇った態度でイマダンを見下ろした。


「今のオマエの状態ではリーダーは務まらないからな。

 元々、オマエが一番年上で男だから……都合が良いからヤラしてあげたんだからな!」フン!


 ふうっ!

「ふうっ!」


 良かった……そんな事で……皆んなとお別れかと思ったよ。

 モトダン[元々の魂の男]が、このパーティーのリーダーだったのか。


 イマダンも皆んなの前で、あの恥ずかし過ぎる告白をせずにひと安心のようだ。

 しかし『オマエはクビだ![You're fired!]』は酷いよな。

 安心した俺は無性にトランプゲームがヤリたくなった。


 魔童女の話はまだ続くようで、小さい胸を張って偉そうに喋り出した。


「次のリーダーはオマエより一つ年下で、女子の中で一番年上のオレが新リーダーだ!」エッヘン!


 ええーっ‼︎

「ええーっ‼︎」


 魔童女は、このモトダンと一歳しか違わないの⁉︎

 しかも女子の中で一番年上だなんて!


「なんで、ここで一番驚くんだ!」ムッ!


 イマダンの驚きの表情がオーバー過ぎて魔童女が怒り出した。


 魔童女が童女じゃなかった!

 この衝撃的事実は驚くよ。

 これからは元を付けて呼ばなければならないのか? 元魔童女、いや魔元童女と。


 衝撃的な事実を知った俺は、甲冑少女と詩人少女を見た。 

 それじゃあ、二人の歳はいくつなんだ?

 魔童女に合わせたら二人とも小学生、十歳前後……イヤイヤ、ありえない。

 イマダン、皆んなの年齢を聞いてくれ!


「キサマ! 今、オレの事、可哀想な目で見ていただろ!」プンプン!


 魔童女は子供のような癇癪を起こした。

 彼女を見上げていた土下座スタイルのイマダンは顔を伏せて反論した。


「そ、そんな事……」


 成人女性に至る第二次成長期を逃した魔童女を憐れんでいるのだろう。

 その気持ちは分かるぞ、イマダン。

 俺も魔童女を慰めてあげたい、頭をヨシヨシと撫でながら『君はこのままでも充分需要があるよ』と教えてあげたいと心底思っているのだから。


「そんな事ないププッ……ですよププッ!」

「キサマぁ!」


 イマダンは笑いを堪えるために顔を伏せたのか……

 でも、笑うのは酷いんじゃないかな……幼くて小ちゃくてカワイイんだけど……言っておくけど俺は少女趣味じゃないからな、そこの所、間違えないように。


「いい加減ケンカはやめなさーイ!」


 妖精っ娘が割って入った。


「モウ、この話はコレで終わり!」


 二人の間をクルクル飛び回りながら説教をしてる。

 妖精の彼女が一番大人かも知れない。

 二人のやりとりを止めずに、このあとの展開をワクワクして見学している甲冑少女と詩人少女よりも。


 やっぱり仲間の少女たちの年齢を知りたい。

 神様~! 皆んなの歳を教えて~!

 ……

 神様は現れてくれなかった。

 これくらいの事ではしゃしゃり出てくれないか。


「さあ、行くぞ! 前しーん!」


 魔童女は気を取り直して、杖を高々と上げて元気よく号令を掛けた。


「♪ふんふんふん~」


 リーダーになれたのがそんなに嬉しいのか、鼻歌を唄いながら腕を大きく振って先頭を歩き出した。

 ああ、魔元童女は年齢のままではなく、見た目通りのロリっ子で心がホッコリ安らぐぜ!

 やっぱり呼び名は魔童女でイイ。


 ところで我々は、どこへ行くのだろうか?

 イマダン、これからドコに行ってナニをするのか聞いてくれ!

 俺と繋がっているのなら、俺の想いがお前に通じるはずだ。


「すう、はぁー!」


 コラ! また少女たちのいい匂いを嗅いでいるのか!

 またもよおすぞ!

 俺の想いはイマダンに伝わらず、彼は嬉しそうに少女たちの香りを楽しんでいた。



  ***



「ストップ! よし、着いたぞ!」


 そこは短い草が一面に生えそろった原っぱだ。


「なにをボケっとしている、テ……!」


 俺もイマダンも少女たちの魅惑的な香りを嗅ぎながら歩いていたのでボ~っとしていたようだ。

 あれ! 今、テ……って、モトダンの名前?


「こ、ここはどこ……ですか?」


 それより今、魔童女はこの身体の名前を呼ぼうとしなかったか?

 聞き出せるんじゃないか、その身体の名前?

 彼女の頭を撫でたり、くすぐったりしたら簡単に白状してくれるかもしれないぞ!


「コホン! ここでなにをするかって……フン! それは狩りだ!」


 カリ?

「カリ?」


「宿屋では大した食事が出なかったからな……肉だ!」


 ニク!

「ニク!」


 そういえば俺、お腹が空いていない。

 宿屋の料理が不味そうだったから食欲はわかなかったが、ずっと空腹感を感じない!

 満腹感もないけど……身体がないから、守護精霊だから?


「アッ! 獲物がイタぁ!」


 妖精っ娘がなにかを見つけて叫んだ。

 遠くの草むらで小さいなにかが動いた。

 なんだなんだ?


「野ウサギがいたヨ!」


 妖精っ娘が示した先に灰色の小さい生き物、野ウサギが草を食べているのが数羽見えた。

 さっそく魔童女がイマダンに命じた。


「さあ狩って来い! オマエの真の実力を見せてみろ!」


「え~! おれが……ですか?」


「今までもオマエが狩をして肉を用意していたんだ」


「え~! おれが……ですか?」


「……調理はオレ達がやるから、とっとと捕まえに行け!」


「え~! おれが……で――」

「え~い、うるさい! これ以上拒否したら、プンプンだからな!」プンプン!


 これってお前の事を試しているのかも知れないぞ!

 真の実力を見せろって言ってたし。

 今までの記憶がないお前と、これから一緒にモンスター退治をするのだから使えるのかどうか調べているのかも知れない。

 そもそも、この世界では食料も自ら調達しないと生きてはいけない。


 でも野ウサギか……この装備ではキツイのではないのか? 弓矢とか罠を仕掛けるとかしないと難しいんじゃないか?

 そもそもイマダンは狩の経験はないだろうし……自分もだが……まあ、無理だな。


「無理だ……」ぼそ……


 でもすぐに諦めてはいけないぞ!

 今までモトダンが狩をしていたみたいだし、方法はあるはずだ。


「オマエ、好きだったな……必要以上に切り刻むのが……」


 魔童女が遠くを見ながら思いにふけった。

 モトダンは動物虐待が趣味なのか?


「む、無理だ! 可愛いウサギを傷つけるなんて!」


 イマダンは首を振って拒否した。


「オマエは言ってるんだ?」

「ナンダか、オカシな事言ってるヨ?」


 意外な拒否反応に魔童女だけではなく、妖精っ娘も驚いた。

 そして俺も驚いた……本当にネーチャーを愛する男だったのか?


「ウサギは友達だ!

 それを殺すなんて……あんまりだ……おれは、おれは学校でウサギの飼育係をずっとやっていたんだ! 

 あんなに可愛くてキュートな……マミ、エミ、ユーミ!」


 ウサギの飼育係だったのか!

 それよりも最後の方に、名前呼んでたよな……まさかウサギに名前をつけていたのか?


「貴様ぁぁ!」ブー、ポンポン!


 魔童女が激オコだ! これは偽物だと確実にバレるぞ!

 話に介入出来ない俺は、ジレンマでゲーム操作盤の両端を握って激しく左右に揺らした。


 “ガタガタ!”


「♪お肉! お肉! お肉が食べたい!

 今日のお昼はやっぱりお肉だね、わん!」


 詩人少女がリズムに乗って歌いながら割って入った。


「♪わたし、お肉が食べた〜い、にゃん!」


 リズムに合わせて豊かな胸が上下に激しく踊り出した。

 それを見ているイマダンも頭も上下に激しく踊り出した。


「わ、分かった! ま、任せてくれ!」


 イマダンは胸の誘惑に負けて、簡単にOKの返事を出した。

 まったくコイツは大っきい胸に弱いな、ずっと見てるよ。

 少しはデリカシーというのはないのか!

 俺は詩人少女の上下に弾む大っきい胸をガン見しながら、イマダンをけなした。

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