彼女は今日も星をひろう

さくらりづ

プロローグ 


私は、この世界が欲しい。

いっぱい星を降らせたい。




夜、空を見上げると、私の視界に、たくさんの明滅する星が一面に広がる。あれは、白色なの?黄色なの?と貴方と他愛もない会話で笑い合う。手を伸ばしても届かないソレが私はどうしても欲しかった。あんなにたくさんあるんだもの、ひとつぐらい私にくれたっていいじゃないと、いるのかいないのかわからない神様にお願い事をしてみても、星たちが届けられることはない。輝き続けることに飽きた星が、力尽きて落ちてこないかなと、毎日毎日手を合わせて、両手を放り出しても、その手にあの暖かな光が舞い降りることはなかった。



なぜ、なぜなの。

あんなに、美しく輝く星たちは、どうして私のものならないの。あんなに千万億万もある、光を、私にくれないなんて。と、私は、涙をながした。ただ、孤独を感じた。いつでもそばにいる星たちは、決して私のものになることはない。毎日、私をみて、それぞれのリズムで好きなように輝くだけ。愛されたい。愛されていない。私の孤独を、ひたすらに増すための星たち。




だから私は、星を生み出した。

私の星たちを。




彼らが迷子にならないように、真っ白い大きな月殿を作った。

彼らがさみしくないように、五つのエリアを作った。

彼らが諍いを起こさないように、できるだけ似た者同士を集めてしまおう。

知識を司る者たちはメティスへ。

土地を守るモノたちはデメティウスへ。

愛あふれる強きものたちはアティナス。

や美術、芸術を心とするものはアポロネス。

  中央はゼウトーシャ。大切な人達。

  私は、月殿で、星たちを待つの。




私の大好きな星の形。中央から北に時計回り。月殿。メティス。アポロネス。アティナス。デメティウス。最高で、完璧な私の建国物語。




泣いて、笑って、喜んで、怒って、悲しんで、愛し合って。星達には、幸せをあげる。私は、毎日、あなたたちを見守っているから。あらあらメティスのあの子は、いつも転んでは泣いていたのに、もうあんなに逞しくなっちゃって。アティナスの青年たちはいつも、アポロネスの女の子たちの噂ばかりしてるのね。でも、アポロネスの彼女は、毎日デメティウスの彼を海まで見送ってるのよ。けれど、それは知らない。知らない話。私だけが知ってる話。




この国オーディスは私のもの。

この私月神子のもの。




愛しい私の可愛い星たち。今日もたくさん輝いてね。と、祈りを捧げる。



愛されていると、私はみなに必要にされていると思えていたうちは。けれど、ある日気づいてしまう。私は、愛されていないと。これは、愛なのかと。愛が足りないと。涙がこぼれた。いつぶりか、人の体温をした涙が、双眸から、一つ、二つ。



床にカラン、コロと転がっていった私の涙を手に取る。

これは、私の愛。私の星たちへの愛。ぎゅっと握しめて、その二つを、月殿の庭に埋めた。

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