握って離して

加賀美まち

握って離して

学校の校門を出て5分の

大きな池のある公園で

僕らは待ち合わせをする

木のベンチには君が座っている

白いイヤホンで流行りの音楽を聴きながら

目を閉じて座っている


僕はいつものように君の隣に座る

そうして君の隣で本を読む

5分、10分、30分。

時間がゆるやかに過ぎていく。

きりのいいところで僕は本をしまう

そうして隣にいる君の手を握る

君はそっと僕の手を握り返す


熱。

てのひらから伝わる熱を

確かめるようにお互い握り返す

不意に人の気配がしてパッと手を離す


繋いだままでいられないのはなぜ?

僕は君と外で堂々と手を繋げないことが

少しかなしい


閉じたまま。

誰にも言わない僕らだけの秘密

宝箱のように隠してる

でも時々誰かに知られてしまいたくなる

僕と君の宝物を

そうしてそれが宝物であることを

僕は知ってほしい

僕の恋人がとても素敵なことを

でも僕らは言わない

それが今の僕らの最善だから


厚くてごつごつとした僕の手と白いけれど筋肉質で筋張った君の手。


僕らは明日も繰り返す

君の右手と僕の左手

しっかり握ってそっと離して

君の右手と僕の左手

ゆっくり握ってそっと離して

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