アサシン・ストラグル

今日は師匠を殺そうと胸に誓っていたのに、台無しだ。

さっきのクソッタレパーティのクソッタレ主催者のクソッタレ護衛が俺達を追って来てやがったのだ。

とにかくどうにかしてという難題なリクエストを押し付ける師匠の言葉を呑み、俺はアクセルを踏む。


「いで!」


師匠が前方に叩きつけられた。

痛そうだ。

まあ、師匠なら大丈夫だろうが。


「シートベルト付けてねえのか師匠」

「付けてるよ。ゆるゆるだけどね」

「ダメじゃねえか!」


BLAMN!BLAMN!BLAMN!

ヤツら、道路でもお構いなしに銃を撃ってきやがった。

幸い車は対弾仕様で、ガラスも強化されている。

だが長く持つとは思えない。

師匠が窓を開け、後方の椅子に置かれていたアサルトライフルを構えた。


「撃ちやすいように頼むよ!」

「また難題だな!」


俺はハンドルを切り、長い直線の道路が続く場所へと車を移した。

相手の車は二台。

この道路上で終わらせる。

師匠もそのつもりの筈だ。


BRATATATATATATATATA!

師匠がアサルトライフルを連射する。

流石師匠と言うべきか、狙いは身を乗り出して撃ってきている黒ずくめと、タイヤだった。

KARAAAASH!

タイヤに銃弾が命中し、制御不能になった車一台が道路から外れ消火栓に激突したのがミラーで見えた。


「一台撃退、っと!」


BLAMNBLAMNBLAMN!BRATATATATATATATATA!

しかし銃弾の嵐が絶えることはない。

そして俺はミラーで見た。

二代目の車の射手が、ロケットランチャーを構えた。

それはまずい!


「ヤバイロケットランチャー!」

「わかってる!」


BOOOM!

俺は咄嗟にハンドルを切ったが、それよりもロケットランチャーが早く車体に着弾した。

車が、吹っ飛んだ。

俺達は車の中を舞い、おそらく転がってるであろう車の中で何発も叩きつけられた。


「アークソ……師匠、生きてるか?」

「死んでる」

「生きてるじゃん」


転がる車の傍に、黒ずくめのクソッタレどもの車が停まった。

ヤツらはアサルトライフルを構え、こちらにゆっくりと近づいてくる。

俺は師匠を見た。

師匠はウィンクした。

やるしかないようだ。


「出てこい!アサシン!」


黒ずくめがそう言ったと同時に、俺と師匠は車内から弾丸のように飛び出した。

BLABLAMN!BLABLAMN!

そのまま師匠が右側面に近づいてきたヤツを、俺が左側面に近づいてきたヤツの眉間を二連続でぶち抜いた。

黒ずくめは俺達に対応できないまま、血を流して倒れた。


「ナイスキル!」

「ナイスキル」


だがそう言っている間にも、俺達に近づいてくる黒ずくめ達の車があることに気が付いた。

師匠は俺に目配せしてくる。

ここからは徒歩で行こう、と言っている。

そしてハンドサインで、あっちの路地裏へ、と言っていた。

俺は気づかないうちに、師匠の言いたい事が本当によくわかるようになってきてた。


BLAMN!

俺がそう思っていると、足元に銃弾が着弾した。

正確な位置までは分からないが、どこかのビルにスナイパーライフルを持ったクソッタレがいることが、はっきりと分かった。


「行こう!」

「ああ!」


俺は師匠と背中合わせにカバーリングを行いながら、一緒に路地裏の方へと逃げ込んだ。

路地裏は暗く、光もないため見えづらかった。

だがライトを付けるわけにもいかない。

見つかりやすいからだ。


「助手くん。この路地裏は確か反対の街に繋がっていたね?」

「……そういえばそうだったか」

「反対街まで逃げれば、ヤツらも追ってこないだろう。それまでの辛抱だ!」

「わかったよ」


何の辛抱かはわからないが、とりあえず俺達は路地裏の奥へと入ることにした。

奥へ入っていくと路地裏は迷路みたいに入り組んでいたが、暗黒商店の看板とかが光っていて、比較的明るかった。


「ン、スマホに通知が入ってるな」


師匠は銃を構えながら、スマホを取り出し確認した。

こんな時に通知、嫌な予感がする。


「あー……私達に賞金掛かってるね」

「……何でだ?」

「危ない!」


BLAMN!

師匠が俺を咄嗟に地面に伏せさせると、銃弾が俺達のスレスレを飛んでいった。

BLAMN!

師匠は拳銃を持っていたホームレスの眉間に銃弾を撃ち込み、黙らせた。

柔らかい感触が俺の顔に当たっている。

やっぱり、師匠のアレはデカい。


「戻ろっか。このままだと永遠に追われちゃう」

「師匠」

「よし、とりあえずパーティー会場に戻ろう」

「師匠!」

「何……?ああ、なるほど」


師匠はゆっくり俺から離れた。

そして俺に唇に指を当ててきた。

何のつもりだろうか。


「今のはご褒美だ」

「いや……ああ、うん」


何の意図かは不明だった。

師匠も何だか顔が赤かったから、照れ隠しだったのかもしれない。

俺達はパーティー会場に戻ることになった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る