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歌以外に体操とドッキングした歌体操とでもいうのか?そういったカリキュラムもある。その際、簡単なみんなが知っている日本の歌が指定されているのだが、そんな時はクラシックをやっていた事が功を奏していた。勿論、体操の様々カリキュラムの際は、ダンサーだった事で体の筋肉の仕組みみたいなものの理解がしやすく、これも功を奏していた。ただ、体操をやる気にさせる手法はその都度、その日の空気や様々な要因で中々難しい。でも、それも私の場合多少なりとも上手くいっている方だったと記憶しているが、それでも自分の中ではジレンマがある。


そういったレクに関する事以外に私は介護をしにきているのだ。という意識もキープしなければならない。利用者様とのコミュニケーション。情報。そういったものも新人といえるうちに熟知せねばならない。毎日がバラエティに富んだ日々でもあり、それも功を奏し合いながら、利用者様との相互理解にも繋がって行っているかのように見えていた。


ある日それに影が見え始めた。

仕事を始めて1か月程過ぎたくらいの頃だったか?何十人もの人の名前と顔、既往歴、その方の生活機能レベル等様々覚えるうちに、頭の中がパンクしそうな頃だったのだと思うが、

新しく入られた方の名前を間違えてしまった。


その時、謝罪し、その方もニコニコと気分を害したようには見えなかった。

さしずめNさんとしておこう。

数日後、入浴外介助(着換えなどの介助)の際、Nさんはご自身で殆ど出来る方で、一部だけ介助と聞いていたが、


御人身でおやりになると言われ、では「何かお手伝いが必要なら言ってくださいね。」と声掛けして見守りをして終えたその日の帰りのミーティングでNさんからのクレームとして、入浴の外介助で「何も手伝ってもらえなかった。」と言っていると聞いた。


介護の場合、してあげたいとして何でも手伝うというのはNGで、ご自身で出来る事はしてもらうというのが基本。やりすぎはその方の残存能力を奪ってしまうということになります。

私の聞き方が悪かったのか?そんな気分に見舞われましたが、どう思い出してもそんなことは無い筈としか答えようが無く、その後、Nさんをよく観察するようにしました。

その後、気を使いながらも硬くならないように注意しながら介助をしましょうか?とお尋ねすると「触らないでくれ。自分でやるから。」と言った直後、他の職員をおもむろに呼び、その人に「背中を拭いてくれ。」とおっしゃった。

その数日後、私が「背中を拭きましょうか?」と言うと、ご自身でやる。とおっしゃる。

そこで私は悩みました。何がいけなかったのだろうか?と。。


どう考えても私のミスらしきものは最初に名前を間違えた事しか思い浮かばない。

しかし、嫌われていることだけは確かなようで、何がいけないのか?見当もつきませんでした。


それが、私の「歌」だったと知ったのはその方が入られて2か月弱程経ったころだったのです。



Nさんの悩みが始まりだして居た頃、私はセッション目標の利用者様の相手をしながら、他の利用者様の希望を叶えるべくレク時間には歌ったりしているころで、


そんな時、もう一人、私に気になる利用者様が一人増えました。

さしずめSさんとしておきます。


Sさんは、いつもニコニコしている方。私に「歌上手いね~」と気さくに声をかけて下さいました。でも、気づくと、私が歌いだすと、トイレに行こうとされる。

最初の頃、私がトイレ介助に同行しようとすると、他の職員が変わります。と合図を送ってくれるので甘えて歌を継続していたのですが、どうもSさんの様子がおかしい。。

日々、様々な利用者様が歌ってくれと言い、何がしか歌うようにしていましたが、もしかしたらSさんの様子がおかしいのは私の「歌」が原因ではないか?と感じ始めました。

Sさんも歌う方。で、ご自身が歌い終わると「歌って!」と私に言うものの、自分はカラオケをやめてしまわれる。。

この方。。本当は私に歌ってほしくはないのだろう?と思い始めました。

この時から私は歌い控えるようにはしました。

それとは裏腹に強硬に歌ってくれと言う方も結構多く、私は断り方に困りだしていた。丁度その頃、セッション目的の方はやはり楽器は無理だろうとの事で側に付いて歌う事は辞めていましたが、その方などは今までうたってくれて何で歌わないのか?日に何度も聞かれた。



数名からは「何で歌わない?」「ここにきてもつまらない」等を言ってくる人も。。「あなたの歌ですべてがわかる。だから歌って」等も言われた。

でも、きっぱりと歌うのはやめようと決断しました。


私は今日は声の調子がおかしいから。とか喉が痛いから。等言って断る日を続けました。Nさんに嫌われる理由はまったく分からずじまいでしたが、Sさんは私の事を嫌ってはおらず、でも、きっと「歌」が原因で何かがある思いはじめた。

同時に歌い控える決断をした理由がもう一つあります。職員の空気感が変わった。それは「いっせいのせっ!」といった変わりようで。。非常に分かりやすかった。何がどうなっているのか?理由はわからないけれど、イケイケどんどん。だったのが急変。だから、きっとSさんが何かクレームでも出したのだろうか?と思った。私にダイレクトに言えないのだとしたらお気の毒です。だったら、私は歌わなくてもいいのだから。。と思って歌うのをやめました。



何故?歌わなくてもいいのか?は

ある事に気づいたからです。

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