第9話 実録‼ 本気で身の毛がよだつ話(生物編)


 おかげさまで、本作ももうそろそろ10話を迎えようとしているところなのですが、改めて振り返ってみると、子供の頃のボヤっとした夢の話だったり、過労死寸前のところで垣間見た死の直前の幻覚と思しき光景も多分に含まれているような様相に今更気づいたもので、ここは香竹三十ウン年の人生でも五指に入るまさに身の毛のよだつ話を披露させて頂きたいと思います。だいぶ久々になりましたしガツンとしたのを一つ。正直思い出したくもない話。


 あ、今のうちに断っておきますが、香竹はこう見えて(見えてねえ)日本地図で見ると東北地方のど真ん中に位置する山中で生まれ育った結構な野生児で、子供の頃は数々の得体の知れない生き物たちに遭遇してきたものです。山で遊んでいた時に、ぶっといシマヘビと思い棒で突いていてよく見たら化け物みたいなナメクジだったこともあれば、釣り餌を調達しようと岩をひっくり返してみたら落花生くらいある黄色い縞模様の入った化け物みたいな蟻の大軍がわらわら出てきたこともあります。何なら蛇の一匹くらいは素手で捕まえられますが、そんな香竹もトラウマになるレベルの体験談なので、そのおつもりで。


 今から十年ほど前、現在も務めている仕事の見習いをしていた頃のお話。

 当時香竹はとある資材の購買部門を担当していたのですが、わりと結構かさばる輸入品(木とか草の塊とか。用途は秘密♡)も取り扱っていたので、色んな謎のものが現地から海を越えてへばりついてくることがままありました(日本では絶対にお目に掛れない大きさのコガネムシのミイラがくっついていたり)。


 新入りの香竹は朝一番に出社して倉庫の掃除をするのが日課だったのですが、或る朝、昨日入庫したばかりの輸入資材の周りを箒で履いていたところ、妙なものがコンクリの床の上に転がっているのを見つけました。


 見たことある人は判ると思いますが、よく公園なんかに、異様に長い松ぼっくりが落ちてたりするじゃないですか。今ウィキペディアを見てみたらオウシュウトウヒというらしいけれど、小さい頃家族で某城址公園に遊びに行った時、丁度この木の剪定をしていたおじさんから、まだ熟していない真っ青な松ぼっくりを沢山もらったことがあったのでとても印象に残っている。

 それが、なぜか職場の倉庫にゴロンと落ちていた。それもかなりでかい。テレビのリモコンくらいある。バナナよりでかい。周りは雑木林。普通の松の木も生えていない。なんでこんなところに。


 首を傾げながら、そのテレビのリモコンくらいある緑色の謎の長いものを箒で突っついてみた。


 ……そしたら、それが、くねくね動き出した。


  サアァ――、と血の気が引いた。


 20センチは優にある巨大芋虫でした。多分、昨日の輸入資材にくっついて来たんでしょうね。成虫になったらどんな生き物になるんでしょうか。


 いや、これだけの描写ではインパクトが足りないかもしれない。ちょっとお手元のテレビのリモコンを手に取ってみてほしい。で、これが鮮やかなエメラルドグリーンで、それも芋虫で、ぷよぷよの触感で、フラワーロックみたいにくねくね動いて見せるところなど想像してごらんなさいな! ――嗚呼っ!

 

 なお、この話を帰宅後母親に話したところ、

「結局その芋虫どうしたのよさ?」

「顔を背けながら倉庫の隅っこに箒で転がして隠したわさ。帰るときに見たらいなくなっていたわさ。それはそれは気持ち悪かったわさ」

 そしたらお袋はカンカンになって怒った。


「何で持って帰ってこなかったのよ! 見たかったのにっ!」


 ……さて、本当に恐ろしいのは?(「食人族」のモンロー教授風に)



 ちなみにその芋虫は翌日這い出したところを臨時社員のおっさんの運転するフォークリフトに轢き潰されたらしくゴーストバスターズみたいになってました。


 というような話。


 余談ですが、カリカリに揚げた鳥の餌レベルの芋虫なら昔東京の劇団さんのところに遊びに行った時に御馳走になったことがあります。意外と美味しかったです。おかわりしました。

 



 


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る