第5話

最初は父の言っていることに耳を疑った。この人は僕の行きたい高校を諦めて、わざと偏差値の低い高校に進学させて、犯人の娘らしき人物に復讐をしろ と言っているんだ。確かに父の気持ちは十分に理解できるものだが、本人は悪くないし、根拠もない人物をどうやって復讐したらいいんだ...? と考えた。いや待て。僕は今復讐する前提で話を進めてしまっていた。僕は大三島大学附属高等学校に3年間も行きたいと言ってきたんだぞ。それなのにこんな一瞬で気持ちを切り替えていいのだろうか...?

「これは僕一人で復讐するの?」僕はそう父に尋ねた。すると父は「お前がやってくれるなら東高には警視庁の関係者を2名程派遣しようとは思っている。もちろん、誰にもバレないようにだ。」そう聞いて僕はすごく何だか安心感がでた。自分以外にも仲間がいるならすごく関心が湧いた。

母さんが亡くなってからうちは変わってしまった。一人っ子だった僕は父さんと二人暮らしになった。しばらくの間は父さんは母さんが亡くなったことを受け入れられず全く話しかけることができなかった。この犯人はうちから全てを奪った。何もかも奪った。その犯人の娘らしき人物が今近くにいる。こんなことはもしかしたら人生において二度とないかもしれない。もう僕の脳内からは大三島大学附属高校のことは完全に消えていた。そして父にこう告げた。「やってやろうじゃねえか。」

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