第4話 証拠

「そして、これらも証拠として回収させてもらっている」


見おぼえのある壺を取り出した。


「<イフリートの壺>。

そして、<ペレのハンマー>と<フェニックスの護符>

これらはすべて8階の収蔵品目録にも記載されている。

そして<カラーヤの台帳>にはしっかりお前の署名がある。

禁忌の品を持ち出した証拠だ」


昨夜、剣を作る時に使ったものだ。


「『塔外に持ち出しを禁止した魔具は持ち出せないように魔法をかけた』と魔法をかけたリーシーズの言葉が残っている。

だから、持ち出せた時点で、それは禁止の品ではない」


ネズミが反論するが、それは通らないだろう。


「それに8階の魔具の持ち出しが禁じられているなら、俺より前に持ち出した人はどうして罪に問われていない」


「なに?」


「私の前に8階の魔具を持ち出している人がいるのに罰せられていない。

8階の魔具が全部持ち出し禁止にされているのならば、先に罰せられているはずだ」


「<ミグリアレ>の事をいっているのか。あの件は別だろう」


魔剣<ミグリアレ>名前は知っている。

数年前に発見された存在を忘れられていた魔剣。


すでに滅んだ国の王のために作られた魔剣で、そのいきさつから王家の物となった。

この国唯一の魔剣。

塔にあったのか。


「違うよ」


ネズミはあっさりと否定して。


「<ミグリアレ>や私が持ち出した3つ以外に8階から持ち出されている」


「おまえは何を言っている。

<カラーヤの台帳>に書かずに持ち出せるはずがないだろう」


怒鳴られている飛びネズミは立ったまま平然としている。


本体はベットの上で煤けて動けないままだが。

ネズミが、たぶんその声帯のもっとも出せる低い声を出す。


「カリーエ様」


「はい?」


「申訳ありませんが、お手伝い願えませんか」


「何をでしょうか」


カリーエ様が戸惑っている。


「<カラーヤの台帳>の180番から順に番号と魔具の名前を読んでいただけませんか」


「俺が読み上げる」


「ダメだよ。

カリーエ様にお願いします」


ネズミが、カリーエ様に頭を下げて言う。

カリーエ様がアマト殿から台帳を受け取り、読み始める。


「180 <カゼの瓶>。

181 <ウロの呪符>。

182 <過炎の剣ネセルシュト>。

183 <瀑布の剣グリス>」


「何!」

アマト殿が

「どこに!」

カリーエ様が手にしていた台帳をのぞき込む。


「無理だよ、アマト。

俺たち魔法使いには認識できない」


アマト殿は声の主ではなく、煤けた魔法使い本体に目を向けた。


「対魔法使いの魔法がかかっている。

似たようなものを知っている。

その魔法のインクはマナを扱う俺たち魔法使いには書いてあることすら認知することができない。

そして、184番に<影翔の槍ニプルス>かな。

全て魔力を帯びた武具、8階にあるなしに関係なく塔外に出してはいけない物だ」


「誰がもち出しているのですか」


アマト殿がカリーエ様に聞いている。


「ラバーシムとなっています」


アマト殿は一瞬、理解できなかったらしい。


「なぜ塔の長が」


「持ち出されていることには気付いていたけど。

塔の中にあっては確かめようもなかった。

今確認がとれた」


「俺に持ち出させたのか」


アマト殿は再度、炭を見つめていた。


「<時戻し>だよね、アマトの固有魔法。

手に持てるものを少し過去に送れる。

期待していたんだ」


アマト殿の顔が真っ赤になっている。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る