第40話 サボテン、財宝、昼ごはん

 財宝を探す生業の人間をトレジャーハンターという。

 考古学者から言わせると端倪すべからざる破壊者らしい。


 それはさておき、ここ敵刺てきさす村で大崩落があった。

 直径百メートル、深さ三十五メートルに渡り大穴が空いたのである。

 当初、埋め戻そうとしたが、地下に古代文明の名残があるとの噂がたち、トレジャーハンターが大挙した。


 ある新聞によると、


『にわかに景気がよくなった。

 七十年前のゴールドラッシュも思い起こされるほど、いやそれ以上に好景気だった。

 例を挙げるとなると選出に困るほどである』


 しかしこの記録は嘘である。

 実際は、トレジャーハンターによってあちこちが破壊され、敵刺村の元々の住民は全ていなくなってしまったのだ。


 そのうち、トレジャーハンター同士も徒党を組み、殺戮と盗掘と破壊を組織的に行うようになった。

 十年もするうち、戦争のための戦争になり、財宝のことは忘れられた。

 今日もまた、サボテンの催眠毒で恐怖を消したならず者共が突撃する。

 昼飯に戻れるかさえわからない。


 敵刺に空いた大穴。

 そこに古代文明の財宝などなかった。

 あるのは、ただ暗闇ばかりである。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る