あとがき

 読んでくださった皆様、ありがとうございます。


 『日本書紀』によれば、迹見赤檮とみのいちい中臣勝海なかとみのかつみを殺したのは夏四月のことだそうです。

 しかし、この度は友人とハーフワンドロをした都合で、お題である「山」と「秋」に沿って初秋を舞台と致しました。


 赤檮が一体いつ、だれの舎人だったのか、詳しいところは分かっておりません。しかし一説には、彦人皇子の舎人であり、後に聖徳太子として名高い厩戸皇子うまやとのみこの舎人であったともされています。物部と蘇我が正面衝突をした丁未ていびの乱では、蘇我軍の兵士として参戦し、敵方の大将・物部守屋もののべのもりやを射落としたとの話です。


 なぜ、いつ、彦人皇子は赤檮と出会ったのか。

 なぜ、厩戸皇子の舎人ともなったのか。

 そして、彼らはどのような最期を遂げたのか。


 今となってはそれも分かりません。

 しかし、多くの皇子が参加した丁未の乱に、彦人皇子の記述は見えませんでした。

 蘇我の血も物部の血も引かない彼は、果たして中立を保ち続けることが出来たのでしょうか。

 そして丁未の乱の前後、彼はどこで何をしていたのでしょう。


 しかし確実に言えるのは、赤檮が勝海を斬ったのは夏四月だと言うこと。そして今の皇統は、蘇我方についた皇子でも物部方についた皇子でもない、彦人が紡いだ子孫たちであること。

 春の陽気が残るあたたかな季節に、彦人に見守られながら、赤檮が新たな門出をきったことを祈ります。



 ここまでのご愛読、ありがとうございました。





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