第28話 囚われの女騎士



 その日の朝。


 俺は女性の悲鳴で目を覚ますことになる。


 えーっと……どうしてこうなったっ!?

 声のした方に向かってみると、そこにいたのは紅色の髪を持った見知らぬ美少女の姿であった。



「無礼もの! 何を見ているのです!?」 



 おそらくスライムたちに『侵入者は見つけ次第、無力化すること』と命令していたことが関係しているんだろうな。

 スライムたちに揉みくちゃにされた紅髪の少女は、あられもない姿になっていた。



「こ、この痴れ者がっ! 早く! 早くわたくしのことを助けなさい!」



 強がってはいるが、羞恥心で狼狽しているのがバレバレである。

 衣服は奪われ、下着姿になった少女は、歯ぎしりをしながら恥辱に耐えているようであった。



「……ロゼ。何をしているのです」


「お姉さま!? 良かった……やはり生きていたのですね!」



 もしかして二人は知り合いだったのだろうか?

 リアの姿を目の当たりにした目に涙をためながらも感動の笑みを浮かべていた。



「主さま。紹介します。彼女の名前はロゼッタ。年齢は近いですが、王都の騎士団には私の2年ほど後に入隊しました」


「そうか。つまりはリアの後輩だったのか」


「お姉さま! 今すぐに王都に戻りましょう! お姉さまの力が必要なんです!」 



 紅髪の少女は縋るような眼差しでリアに言う。



「何者かに月が破壊されてからというもの王都は大変なことになっています! この混乱を鎮めるためにはお姉さまの協力が……」


「……愚問ですね。私は人族のヨウジさまに忠誠を誓った身。王都に戻ることなどありえません」


「人族? お姉さまは、このニューマンが人族と仰いますの?」


「その通りです。ヨウジさまはこの世界で唯一人族。遺跡探索の折に私は、この方に命を救って頂いたのです」


「……………」



 リアの説明を聞いたロゼは訝しげな表情を浮かべる。



「なあ。リア。ニューマンって何だ?」


「ニューマンというのは人族の血を色濃く引き継いだ種族になります。その能力は平均的ですが、外見的には人族とウリ二つのものをしています」



 なるほど。

 つまり初対面だと俺の外見は、そのニューマンという種族に見えちまうってわけか。


 正体を隠したい俺にとっては何かと都合が良さそうな存在である。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る