第3話 意識高い系オメガ転校生にエロ展開もビッチポジも持っていかれそうで泣く


※wikiphilliaより引用ーーーーーーーーーーーーーー


ナチュラルオメガ


オメガの中で特定の思想を持つ集団の名称。

または思想そのものを指す。

別名「自然派オメガ」「意識高い系オメガ」「おフェミメガ」。

別名は蔑称として使用されることがある。


▽概要

オメガは抑制剤等の科学的、また各種の制度等の社会的なコントロールは受けず、ありのままの姿であるべき、そして、ありのままの姿で社会に受け入れられるべきである、という思想。そして、その思想を堅持するオメガの集団。

ナチュラルオメガの「ナチュラル」は生まれたままの姿を指すといわれる。


ナチュラルオメガは抑制剤やヒート期間の自宅待機をしない。ハーブやオーガニック製品を日常的に愛用し、自然とともに過ごす心身と環境に優しい生活を心がける。


ヒートが起きた場合は、鎮静祭ちんせいざい(鎮静剤と音を同じくしている )というパーティを開き、同じくヒートが起こったオメガの仲間や、仲の良い友人、ときにはアルファを招待して、お互いを慰め合う。

場合によっては乱交パーティとなることがあり、

21××年には公然わいせつ、公然わいせつ幇助、売春防止法違反(周旋目的誘引)、風営法違反等で、オメガのパーティで逮捕者が出ている。[1]


▽歴史

オメガへの差別が強い時代における、オメガの被差別解放運動団体が源流であるという説もある[2]が、

209×年にテレビ出演中にオメガをカミングアウトした俳優の折おり樹輝いつきが広めたとされる。[3]

云々


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


カチカチっとマウスを動かしながら、

保健室でちょっと拝借したパソコンのディスプレイを覗き込む。


うーん…

新しい情報がないような、あったような。

分かったような分からないような。




「ナチュラルオメガはヤバい」


という噂はよく聞く。


乱交パーティもびっくりするんだろうけど、

僕からすれば、

抑制剤無しで過ごすことの方が衝撃だ。


病院に薬を貰いに診察を受ける時は、

担当医と薬剤師さんに

「飲み忘れないように!」って念押しされる。


抑制剤のMASKに限っては、

予約日に診察のときに、担当医の前で飲み、服用を確認される。

(子供の頃は、薬を飲んだら、ご褒美にお菓子が貰えた。僕は年に一度のこの日を「お菓子の日」と呼んでいた)


それくらい徹底されている世の中なのに、






あえて飲まない!!!





こわっ!

僕は薬を飲まずにヒートを起こしたことがないから、

素直にこわい。


以前、オメガ向けの病院のカウンセリングで、

ヒートを起こしたオメガの映像を見た。


ヒート中の苦しそうな姿も怖かったけど、

何よりヒート中に暴走して、落ち着いた後に、





自己嫌悪で泣きじゃくる姿の方が怖かった。






カウンセラーの先生に

「薬が開発・普及されていないときは、こんな風に苦しむオメガがたくさんいたの。

だから、あなたは、ちゃんと薬を飲んで欲しい」


と静かに言われた時、

僕は絶対にちゃんと薬を飲もうと思った。





アルファとアンアンハァハァしたいんだけど、

めっちゃくちゃアンアンハァハァしたいんだけど、


苦しいのとか悲しいのは嫌なんだよな。

だから抑制剤は忘れずに飲んでる。


都合いいなぁと思うんだけど、

都合よく気持ち良くなってみたいというか、

あんまりドロドロした世界はいらないっていうか。





ほんとに小説とかマンガとかのエロいとこだけ切り取りたいんですけど、






無理だろうか?






無理かなーーーー。血涙






……




…………





いや、ここは乱交パーティに話を戻そう。

乱交パーティは重要。


エロいとこだけ切り取れるかもしれない!


諦めるな、僕!

しんみりするんじゃない!

オメガ仲間だって見つかったわけだし!

うんうん!




乱交パーティについては、

都市伝説みたいなもんだったんだけど、

実際に逮捕者が出たときは、大ニュースだった。


本当か知らないが、

パーティでは怪しげなハーブが出てきて、

キメセクしてたという話まである。


このwikiphlliaに書いてあるハーブを愛用って、

そのハーブのことか?


けっこう、当時は騒がれて、

「これがオメガの実態だ!!!」

みたいなゴシップが溢れたんだけど、



オメガが見つかりにくい世の中だし、

その後、ナチュラルオメガに関する事件も起きず、

情報供給がなくなって、

いつの間にか過去の話になっちゃったんだよなー。


確かに芸能ニュースの方が、

はるかに情報量多いし、波乱万丈だし、

そっちに流れてしまうのは分かる。


需要と供給のバランスは大事。




きっと、この事件は、

オメガの中の一部のナチュラルオメガの中にいる、さらに一部の人たちが起こした事件なんだと思ってる。


ナチュラルオメガの中にも、きっと色んな人がいるんだと思う。


SNSでナチュラルオメガを公表して、

日々の自然派な毎日を綴ってある人もいる。

僕もSNSを見たことあるけど(そりゃ興味はある)、

その人の場合は、




すっっっごいストイックな健康マニアな印象だった。




菜食主義で、ヨガとマラソンが好きで、

嫌なことがあったら瞑想でリセットするそうだ。



…ちょっと意識高いなぁとは思う。



でも、別に嫌悪感はなくて、

「こんな人もいるんだなぁ」という感想だった。

別世界の人。


きっとジムに通って筋肉に目覚めたマッチョとか、

2.5次元に目覚めて全国ツアーを制覇するファンとか、

自分を探しに世界一周しちゃうとか、


突き詰める性格の上に、行動力が乗っかっちゃった人なんだなぁって思ったんだ。



僕は、行動力とか仲間とか、

一人でやり遂げる力とか無いから、

素直にすごいなぁと思う。




主義主張とか思想とか、

そもそも持とうとすら思ったことないし。




うーん、

乱交パーティは魅力的なんだ。


でも、


抑制剤飲めないことも、

逮捕されることも、

"自分"を強く持ってる人に囲まれることも、





こわいんだよーーーーーーーーー!!!





あー!もっと気軽な乱交パーティないんかーい!!





タターンターン!

とキーボードを叩き、PCをシャットダウンする。


はぁ、もう、転校生のせいで普段使わない頭をつかってしまった!







「ふふ、乱交パーティ、気になるの?」


背後から耳元で急に囁かれて、

ほわぅ!!とビックリしてしまう。


首だけ振り向くと、さっきの転校生が目の前でクスクス笑っている。





距離が近い!!





いやいや、それより、言うことがあるだろうよ。

結局、ヒート起こして暴走モード入りそうな君を引きずって(非力な僕はお姫様抱っこなどしないし、出来ない)、

保健室まで送り届け、

暴れる君に緊急鎮静剤を注射するのを手伝い寝かしつけ(緊急鎮静剤すら嫌がる)、

注射の時に怪我をした養護教諭の先生の代わりに君のそばにいて、

君がいつの間にか起きて背後霊状態←イマココ!!



確かに迎えにいったのは、若干!若干遅かったけど、

(遅れたのは本当に悪かったし、ぶつかったのも悪かったし、あ、けっこう僕も悪かった、うん、ごめんなさい)


でも、早々に教室に案内してたら、大変なことになってたからな!

始業前で人が廊下にほとんどいなかったから騒ぎにならなかったし、

僕はオメガだから、別に何も影響なかったし、

適切な対応も知ってたし!



「アルファじゃ、ない、よね?」



転校生は僕の驚きをよそに、

探るような瞳で質問を続ける。




だーーーーかーーーーらーーーーー


僕はアルファに会ったことないんだよ!!!


エロエロな運命の番大募集中なんだよ!!!




「僕、アルファじゃないよ」




なめられたくないから、キッパリと返事をする

(キッパリの割に、声が小さいことについては質問は受け付けません)。





転校生は、ジッと僕を見て、ちょっと間を置く。



「ボク、ナチュラルオメガだから、抑制剤を飲んでなくてー。


だけど、ヒート来ちゃってー。


もしかして、ドキドキ、させちゃった…?」



転校生は軽く上目遣いで、僕を覗き込む。

こいつ、なんていうか、オメガらしいオメガの外見。

色白いし、細いし、ちっこいし。

目が大きくて、色素薄いから髪も茶色っぽいのに、唇は真っ赤だし。


転校生はデスクの上においてある僕の手の甲を、

ツツーっと人差し指で撫でる。







ゾッワーーーーーーーーーーーーーーーー!!!







身の毛がよだつとはこのことか!!!

背中の産毛が全部逆立ってること間違いなし!



「ボクねー、アルファ以外も、経験、あるよ」



今にもキスしようとせんばかりに、真っ赤な唇を寄せてくる。



おい!おい!おい!



これ、絶対誘ってるよな?!

なに勘違いしてんのか知らんがな、

僕はオメガだ!


お前がヒートだろうがなんだろうが、

お前なんか圏外なんだよ!大気圏外!!

ばーか!ばーか!!!


しかも「アルファ以外も」って、

お前アルファとの経験あんのかーーーーー!?

ベータも食ったのかーーーーーーーーーー!?

うらやまけしからん!!!!!

詳しく聞かせろください、バカやろーーーーーー!!






「あ、あぁ、ごめんね、ぼ、僕、えぇと、た、た、



淡白だから」








僕のバカーーーーーーーーーー!!!!!


なんでカミカミで「淡白」とか言ってんだよ!!!


こういう時こそ毅然と、

僕もオメガなんだ。仲間に会えて嬉しい(キラーン

って、言わないんだよ!!



やっと出会ったんだぞ!

オメガ同士でオメガトーク出来るんだぞ!

なんならアルファの性事情きけるかもしれないんだぞ!

待ちに待ったチャンスなんだぞ!!







そう、待ちに待った…





チャンス…





チャンス…か?



この状況は悪い予感しかしないんだが?




この転校生、

ナチュラルオメガで学校でヒート起こすし、

それは思想の問題としても、

ヒートを口実にアルファ探しするし、

ベータでもいいや♪みたいに初対面の男を誘うし、

誘う場所も気にかけてないし、

経験豊富そうだし←ココ重要



トラブルの臭いしかしない!!






こいつとオメガ仲間になるということは、

僕がオメガであると告白することになるんだけど、




こいつ、信用できるか?








いやいやいやいや、絶対バラすでしょ!!


むしろ「なんで黙ってるの?」とか言い出すでしょ!

絶対ナチュラルオメガに引き込もうとするだろ!


少なくとも何するか分からんやつと組んで、

こっちの信用が失われたら、


僕のコツコツと薄いラップを重ねるが如く積み上げた今までの努力が一瞬で水の泡だ!!





はい、却下。


僕は貝になる。





早く教室に行こう。

そうしよう。




ササーっと手荷物をまとまて、保健室から去ろうとドアまで歩く。


「残念!仲良くなれると思ったのにー」


転校生は自分の唇に指を軽く当て、一瞬しゃぶるようなそぶりを見せる。






はぁーーーーーーーーーーー?!?!


なんだ、そのビッチな仕草はーーーーーーー?!


そういうビッチテクニック、










詳しく教えろくださーーーーーーーーーい!!!












バーーーーーン!


雑念に飲み込まれる寸前に、

僕は無言でドアを開けて飛び出した。

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