第21話 剣豪と狙撃手





「囲まれてるぞ」


泣き続けるプリンセス・アリスを抱きしめて慰めていたラピスラズリの元に、アカネからチャットで連絡が入った。連絡を確認したラピスラズリはアカネに詳細を尋ねる。


「10人前後に囲まれている上に嫌な気配がする。伏兵がいる可能性が高い。さっさと離脱しろ」

「アカネちゃん、戻ってこられる?ラピィの転移で離脱したいんだけど、離脱した先でもこの人数に囲まれる事態になったら、ラピィだけじゃアリスちゃんを護れないかもしれないから合流できるならして欲しいかなぁ」

「………5分経って私が合流しなかったら置いていけ。すぐに向かう」


と、その連絡を最後にアカネからチャットで返信が来る気配はなかったので、ラピスラズリはスマホから目を逸らし、プリンセス・アリスを抱きしめながら片手で転移宝石を掴んで周囲を警戒する。




「さて、殺るか……」


ラピスラズリとのチャットを終えたアカネは迷わず刀を抜刀した。刀を地面と平行になるように構える。そして、些細に刀の角度を調整する。


そして、刀を地面と平行させた状態で水平に360度回転させる。すると、アカネを軸として円を描くように斬撃が飛び交う。さらに、追撃を加えるように気配がする方角全てを目掛けて刀を振るい次から次へと斬撃を飛ばした。





「え、何!?」

「クリスタル!スナイプ!伏せて!!」


円を描くように綺麗に森の木々が一瞬で伐採されていく。円の中心から外側へ、流れるように森が崩壊するのを見たボムボムは、クリスタルとスナイプを突き飛ばして強引に伏せさせる。クリスタルとスナイプを突き飛ばしたボムボムだったが、自身が伏せるのが遅れて胴体から左手が切り離された。


「スナイプ!」

「わかってる」


片手を失いながら叫ぶボムボムに答えながらスナイプは既にスコープ内にターゲットを捉えていた。円の中心にいる袴姿の魔法少女目掛けて狙撃を行う。スナイプは急所を狙った。だが、袴姿の魔法少女は狙撃に気付いたのかその場から飛び上がり回避をするが、片足を失う。


「ちっ…」

「ちょっと!私の片腕とあいつの片足じゃ割に合わないよ!」

「わかってる」


ボムボムの要望に応えるようにスナイプが宙を舞う袴姿の魔法少女を狙撃しようとした瞬間、袴姿の魔法少女が空中で刀を振り始めた。


「伏せろ!」


スナイプの指示に従って全員が伏せたことで3人とも袴姿の魔法少女の攻撃を回避する。


「スナイプ!敵の大将狙おう!派手に暴れてるけど、大将さえ倒せばあいつは消える!」


ボムボムに言われて、何故そのことに初めから気づかなかったのか、とスナイプは悔いた。スナイプだけでなく、下でプリンセス・アリスではなく、袴姿の魔法少女の方に向かって行く11人の魔法少女たちも、袴姿の魔法少女の策に乗せられていた。派手に暴れて、自身が脅威だとアピールして大将からターゲットを自分に移す。今、考えればなんでこんな策にひっかかったのか。と思うほど幼稚な策だが、いざ、命の危機に一度晒されると意識は嫌でも持って行かれる。歴戦の戦士ならばそのようなことはないが、この場にいる大半が普通の日常を過ごしていた一般人にすぎない。


反省は後、と一旦、先程のミスを忘れてスナイプはスコープの狙いをプリンセス・アリスに定める。ラピスラズリに抱きしめられたプリンセス・アリスをスコープに収めるが、ラピスラズリに隠れて急所を狙いにくい。スナイプは迷わず、切り札である魔法の弾丸を使うことにした。スナイプは魔法の弾丸をライフルに詰めて、再びプリンセス・アリスをスコープで捉え、魔法の弾丸を発射した。


魔法の弾丸は一直線にプリンセス・アリスの元に向かい、一瞬でプリンセス・アリスの元に到達する。そして、巨大な轟音と共に、プリンセス・アリスとラピスラズリの周囲一帯ごと、全てを吹き飛ばした。


その場には何も残っていない。砂埃が立ち上り、砂や小石が爆風により飛ばされている風景だけが、スナイプのスコープに残った。





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