第17話 新しい仲間




「……その手を離せ」

「離さない」


袴姿の魔法少女の腕をプリンセス・アリスは掴んでいた。


「離さないのなら斬る」

「斬れるの?」


袴姿の魔法少女は観念した。何を言っても無駄だと。これだから、一度失った者はめんどくさい。もう、後悔したくない。と、本気で足掻いてくるから。


「おい、そこのやつ!こいつうざいからさっさとどこかに連れてけ」


袴姿の魔法少女はラピスラズリに矛先を向けるが、ラピスラズリは困った表情をする。


「一緒に戦って」

「くどい!」

「何であなたは1人で戦うの?」

「失いたくないからだ」

「私とラピィは強い。安心して、失わないから」


ほんとうに…扱いに困る。こういうバカは…と、袴姿の魔法少女はプリンセス・アリスと、ある魔法少女の姿を重ねる。


袴姿の魔法少女の脳裏にあの時の記憶が蘇る。


「アカネ、ごめんね。あなたは…生きて……」


3人の魔法少女から強襲を受けて、魔法少女たちの気配に気づいていなかったアカネは反応が遅れた。反応が遅れたアカネは共にいた仲間を失った。出会って少しの仲だったが、お人好しで、すごく…バカだった。


大切な者を失う苦しみを知った。


もう、何も失わない。


だから、私は1人で戦う。


直後、アカネは3人の魔法少女を斬った。容赦なく。斬った。仇打ちだとは思わない。アカネは1人で自分がこれ以上何も失わないために戦ったのだから。



「最悪だ……」


かつての仲間とプリンセス・アリスの姿が重なる。お人好しで、バカ、あいつとこいつの違うは…大切な者を失う苦しみを知っているか否か…こいつは、私と同じ苦しみを知っている分、タチが悪い。


「私たちと一緒に戦って…」


アカネは断らない。そう、確信したように真っ直ぐな目で、プリンセス・アリスはアカネに申し込む。


「………アカネだ」

「え?」

「アカネだ。フレンド登録とパーティー登録をしてやる。そうすればお互いの居場所がマップで確認できたりチャットくらいはできる。何かあれば呼べ…気が向いたら助けてやる」

「うん。これからよろしくね。私はプリンセス・アリス、あちらはラピスラズリ、ラピィって呼んであげて」

「………お前以外とは関わるつもりはない」


そう言いながらアカネはさっさとプリンセス・アリスとフレンド登録して、プリンセス・アリスとラピスラズリのパーティーに加入した。


「気が向いたら…会ってやる。じゃあな…もう、失うなよ」


アカネはプリンセス・アリスにそう言い残して森の中に消えた。


「アリスちゃん…これ、どう…する?」


ラピスラズリがスマホの画面を見ながらプリンセス・アリスに尋ねる。パーティー加入したアカネの居場所がマップで確認できるのだが、アカネは森に消えた後、その場に止まっていた。プリンセス・アリスがチラッとアカネがいる方に目を向けると木に隠れているアカネの姿が目に映った。


「ま、まあ…近くにいてくれるってことじゃないかな?」


プリンセス・アリスは笑いを堪えながらラピスラズリに答える。


「ツンデレさんだねぇ…でも、なんか怖いなぁ……」

「ま、まあ、危害を加えてくることはない…はずだし、強い仲間ができた。と思えば心強いよ」

「油断したところを狙って斬ってきたりしてぇ…」

「それは怖いね」


と、プリンセス・アリスとラピスラズリは笑いながらそんなやり取りをした。


プリンセス・アリスとラピスラズリがそんなやり取りをして笑っていると、プリンセス・アリスとラピスラズリのスマホが震える。さっそくアカネがチャットか何かを送ってきたのかな?と思いながらプリンセス・アリスとラピスラズリはスマホを確認した。


「………アリスちゃん、どうする?」


スマホの画面には通知が表示されていた。

新たなミッションの通知が……



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る