第11話 決死の叫び




「逃げきれない…か…クソッ…とりあえず応戦して隙を作るか……」


ウェディングとウェディングに操られているボムボム、クリスタルの3人により、スナイプとアゥアは追い詰められていた。スナイプがどうやって離脱を試みても全てを監視されているようにスナイプの逃げ道にウェディングたちは待ち構えている。


「そろそろチェックメイトにしようか。ボムボムちゃん、次で確実に仕留めること!」


ウェディングがボムボムに命令するとボムボムは無言で頷く。クリスタルの水晶を見ながらスナイプとアゥアの行動を監視してウェディングは少しずつ、スナイプとアゥアを逃げ道のない通路へと追い込んでいたのだった。次で確実に殺る。ウェディングはそのつもりで、スナイプとアゥアを追い詰めた通路へと向かう。


「この子だけでも窓から外に逃すべきか?だが…逃したところで……」


アゥアは弱い。力もなく、知性もない。スナイプと一緒にいなければアゥアは…この子は……


「あれ、アゥア?」


状況分析やアゥアのことを考えることに夢中だったスナイプはその場からアゥアが居なくなっていたことに気づくことができなかった。


「クソッ……」


スナイプはアゥアを探すために移動を始めた。一刻も早く離脱しないと徐々に追い詰められる。スナイプはそれをわかっていてもアゥアを見捨てない選択肢を選んだ。ここでアゥアを見捨ててしまったら…生き残っても後悔するだろうから…




「お、動き始めたねぇ。こっち来てるみたいだし、ここで迎え撃とうか」


ウェディングはボムボムとクリスタルにそう言い、一直線の通路に陣取る。


「………はぁ?」


ウェディングは気づいていなかった。水晶に映るスナイプにばかり気を取られて、足元を見ていなかった。ウェディングが気付いた頃にはもう手遅れだった。


魔法少女アゥアは、スナイプを護るために戦う道を選んだ。


「ボムボム、ボサッとしてないでなんとかしろ」


ウェディングが命じてようやくボムボムは狙いをアゥアに定めた。ウェディングの足にしがみついたアゥアはウェディングの体をよじ登りウェディングの胸のあたりまで上り詰める。ウェディングは必死で抵抗するが、アゥアは負けなかった。アゥアは大きく息を吸った。


「やめろ…やめろー」


スナイプの目に映った光景、ウェディングにしがみついたアゥアに手を伸ばすボムボム、最悪の未来が、スナイプの脳裏に浮かんだ。


そして、スナイプが思い描く最悪の未来…その通りに現実は進んだ。


「アゥァァァーーー」


アゥアが大声で超音波を放つ。その、超音波でウェディングは倒れた。アゥアが、スナイプを護るために…倒さなければならない相手…それがウェディングと判断したから、アゥアは決死の覚悟でウェディングを倒した。いや、アゥアにそれだけの知性があるとは思えない。

ただ単に…自分を大切にしてくれていたスナイプをいじめていたウェディングを許せなかっただけ…なのかもしれない。


アゥアが、ウェディングを倒したのと同時に、ボムボムの手が、アゥアに触れた。ボムボムは、ウェディングからアゥアを引き離しアゥアをスナイプの方へ投げつけた。


「やめ……」


スナイプは床に落下したアゥアを優しく抱き上げる。動きはしない。爆発物に巻き込まれたようにアゥアの体は黒くなっていた。


「あっ…あっ…あぁ…」


スナイプの腕からアゥアは消滅していく。細かい光になるアゥアを逃さないように…スナイプはアゥアの光を掴むが…スナイプが拳を開くと光は消滅していた。


「……よくも……よくもアゥアを……」


スナイプは背にあるスナイパーライフルを手に取りボムボムに向ける。許せなかった。アゥアを…殺したボムボムを……


「え、あ…え…」


至近距離でスナイプに狙われ、スナイパーライフルを向けられたボムボムは困惑した表情を浮かべる。


「ちょっと待って」


ボムボムを護るようにクリスタルが両手を挙げて戦う意思はないとアピールするようにしてボムボムとスナイプの間に立つ。だが、スナイプに取ってはどうでもいい。クリスタルも、アゥアを殺したボムボムの仲間なのだから…


「私と、ボムボム、あと私の仲間2人はさっきまでそこにいた魔法少女ウェディングに操られていただけだ。操られていた時の記憶はある。ボムボムがしたことについては謝ろう。だが、ボムボムも本意ではなかった。それをわかって欲しい…」


半分生き延びるための言葉で半分、罪悪感を感じての発言だった。クリスタルはボムボム、タクト、ペイートと共にウェディングを殺そうとした。他の魔法少女も4人で殺すつもりだった。だが、1番最初に、ボムボムが奪った命が…幼い、いや、産まれて間もない少女で…クリスタルとボムボムも…思うところがあった。


「うるさい…うるさい……」


スナイプは引き金を引けなかった。操られていただけの魔法少女を…撃てなかった。


「……虫のいい話だと言うことはわかっています。ですが可能であれば私はあなたとパーティーを組みたいと思っています。あなたが狙撃専門の魔法少女であることは見ればわかります。私の魔法はこの水晶で私の半径10キロメートルを見ることができます。私とあなたが組めば…狙撃戦で私たちに勝てる者はいません。それに加えて、ボムボム、彼女の魔法は近距離特化の魔法で触れたものを爆発させる魔法です。もし、近距離に詰められても彼女がいれば安心です。どうです?私たちと組みませんか?」


クリスタルはこの殺し合いに勝ち抜くプランを描いた。誰にも見つからず、全員撃ち殺す。もし、見つかり距離を詰められてもボムボムが対処する。このプランが成立すれば…クリスタルたちは勝てる。クリスタルはそう思い、スナイプに話を持ちかけた。当然、スナイプはクリスタルやボムボムに敵意を抱いている。だから、先にクリスタルとボムボムの魔法・勝利するためのプランを説明し、クリスタルとボムボムの仲間としての価値を示した。


「………」


クリスタルの提案に対してスナイプは………








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