第7話 罠





「うーん。しまったなぁ…待ち伏せして潰そうと思っていたらなんか相手が5人に増えちゃったよ…まあ、でも…1人殺してくれた訳だし手打ちにして引くべきなのかな…」


水晶でアヤカが魔法少女を殺しプリンセス・アリスたちとやり取りしている様子を見ながらウェディングは1人で呟いていた。


「まあ、でも…殺るなら位置が掴めてる今か……ペイートちゃん、さっさと閉じ込めて」


ウェディングが側にいた虹色の髪の毛をツインテールに纏めてカラフルなドレスを着ている派手な感じの魔法少女に命令すると魔法少女ペイートはカラフルな巨大な筆を取り出して宙に絵を描くようにして筆を動かしウェディングたちと、アヤカたちを閉じ込めるように巨大な箱を描いた。




「敵…か?」


アヤカは警戒するように周囲の様子を観察する。それに続いて、ドリームも地面に剣を刺していつでも魔法を使える状態にする。


「ドリーム、魔法の扉!拠点に戻ろう」

「うん。わかった。開け!魔法の扉」


プリンセス・アリスが魔法の扉を開くが、拠点には繋がらない。


「ダメ。たぶんこの箱に閉じ込められてる」

「ラピィ、転移宝石は?」

「みんな、手を繋いで」


プリンセス・アリスの魔法がダメと判断すると、ドリームはすぐにラピスラズリに指示を出す。ラピスラズリがプリンセス・アリスの手を握ったのを確認したドリームはアヤカの手を取り、プリンセス・アリスと手を繋ぐ。全員が繋がったのを確認したラピスラズリは転移宝石を1つ手に取って割る。


「転移宝石もダメか…」

「一瞬消えた感覚はあったから、箱の中なら転移できそうだねぇ…」


ドリームの呟きにラピスラズリが答えると、アヤカは状況を分析する。


「何を言っているかよくわからないが、つまり、アレは私たちを閉じ込めるものという認識で良さそうだな…とりあえず、術者がまともに話を聞くかわからない…いつ襲われてもおかしくないし、グループで行動している可能性もある。警戒しておけ、襲われたら…情を捨てろ…大切な者を護りたいならな…」

「わかっている。襲われた場合、離脱を優先する。術者を最短で倒して、アリスかラピィの魔法で離脱する。それでいいか?」

「わかった」


ドリームがアヤカに方針を尋ねるとアヤカは了承した。プリンセス・アリス、ラピスラズリ、祭神も同意して頷く。


「っ……」


建物の上から赤髪の女の子-やんちゃそうな感じで赤と黒をベースにしたワンピースのような服、左は黒、右は赤のニーソを履いている魔法少女が飛び降りてくるのを確認したアヤカは、祭神の魔法で強化された身体で、全力で地面を蹴り、飛び上がり赤髪の魔法少女を迎撃しようとする。祭神の魔法で強化されたアヤカのスピードは驚異的だ。アヤカは先程のように赤髪の魔法少女を瞬殺すると思ったが、突然、アヤカのスピードが遅くなる。


アヤカのスピードが遅くなり、アヤカに迫る赤髪の魔法少女がアヤカに手を伸ばした。


「っ…」


ドリームは即座に魔法を発動して、アヤカと赤髪の魔法少女の間まで地面を伸ばして壁を作る。赤髪の魔法少女がアヤカとの間に作られた壁に触れた瞬間、壁は爆発した。


「ラピィ」

「うん」


ラピスラズリはすぐに転移宝石を割り、アヤカの元へ移動、アヤカの腕を掴み、再び転移宝石を割りドリームの元へ戻った。


「ラピィ、転移宝石の数は?」

「あと2つ」

「助かった。礼を言う」

「綾香、大丈夫ですか?」

「ああ、もう異常はない」


ドリームに残りの転移宝石の数を尋ねられたラピスラズリはドリームの問いに答える。ラピスラズリに礼を言うアヤカを祭神は心配したが、アヤカは普通に動けるようになっていた。


「私が動けなくなった魔法は赤髪の魔法少女のものではない。赤髪の魔法少女と私に何かした魔法少女、私たちを閉じ込めた魔法少女、少なくとも3人はいるぞ」

「みたいだな…ラピィ、転移宝石は躊躇いなく使うんだ。離脱はアリスの魔法で行う」

「「了解」」

「ドリーム、次、赤髪が来たら私が迎撃に向かう。ドリームは援護を頼む。さっきのやり取りから分析すると、あいつの魔法は触れたものを爆発させるような魔法だろう。さっきみたいに壁を作って欲しい」

「わかっ……」


ドリームがアヤカに返事をしようとすると、赤髪の魔法少女が再びアヤカに迫ってきた。一直線に迫る赤髪の魔法少女を迎撃するためにアヤカは猛スピードで飛び出すがアヤカの動きが再び遅くなる。


「そこか…アリス、私の代わりに扉でアヤカの援護を頼む」

「え、あ、うん。わかった」


プリンセス・アリスの返事を聞いたドリームはジャンプして近くの建物の2階ガラスを割り建物に入る。


「魔法の扉」


プリンセス・アリスはアヤカと赤髪の魔法少女の間に魔法の扉を作る。すると、赤髪の魔法少女は進路を変えて、アヤカを素通りし、プリンセス・アリスたちの方を目掛けてやってきた。


「魔法の扉」


プリンセス・アリスは咄嗟に魔法の扉を作る。すると、魔法の扉は輝きながら開いた。開いた魔法の扉から、銀色の鎧を身につけ、身長よりも長い槍を持った可愛らしい小さな兵隊が4人現れた。


「え、何これ?」

「魔法の扉の兵隊さん?」


困惑するプリンセス・アリスにラピスラズリは呟く。魔法の扉から現れた魔法の扉の兵隊さんは赤髪の魔法少女目掛けて進んで行く。


「アリスちゃん、あの子任せたよ」


ラピスラズリは祭神を指差して転移宝石を割りその場から消えた。ラピスラズリが消えたことに困惑したが、プリンセス・アリスは目の前の敵に集中した。魔法の扉の兵隊さんはかなり強く。あっという間に槍で赤髪の魔法少女の動きを封じた。


トドメを刺すべきなのか…プリンセス・アリスは迷った。


「殺しちゃうの?」


赤髪の魔法少女の後ろに、純白の魔法少女と虹色の魔法少女が現れる。


「その子、私が魔法で操っているだけだよ」


純白の魔法少女ウェディングはプリンセス・アリスにそう告げた。操られている。その事実を知れば、プリンセス・アリスは赤髪の魔法少女にトドメを刺せないと…水晶を通して先程のやり取りを見ていたウェディングは知っているから…


「ペイートちゃん、あっちの片付けてきなさい」


ウェディングが命令すると、虹色の魔法少女ペイートは動きを封じられていると言っても過言ではないアヤカの方へ向かう。

今現在、局面はウェディングの計画通りだった。長い黒髪にタキシード、魔法の指揮棒を持ちまるで指揮者のような装いをしていた魔法少女タクトの魔法でアヤカの動きを封じる。その際、わざとドリームに見つけられそうな場所で魔法を発動させた。それにより、ドリームを引き離す。そして、クリスタルの姿を見せることで、3人のうち誰か1人…できれば、プリンセス・アリス以外のどちらかを引き離すことができればいいと思っていた。

ペイートにアヤカのトドメを刺させた後は、タクトにドリームの動きを封じさせてその間に大したことなさそうなのをじわじわと仕留めていく。プリンセス・アリスは抵抗できない。彼女たちが操られていると知れば…何も抵抗できない。性格が悪いウェディングはそのことをよく知っていた。わかっていた。


「いいのかな?操られているだけのボムボムちゃんにこんな酷いことして」


ウェディングはニヤつきながら魔法の扉の兵隊さんに押さえつけられている赤髪の魔法少女ボムボムを指差す。


「っ…」

「綾香…」


何も出来ないプリンセス・アリスの横を、祭神は通り抜けた。アヤカを護るために


「行かせないよ」


祭神の前にウェディングが立ち塞がる。ウェディングはなんとなくわかっていた。プリンセス・アリスと祭神程度なら自分でも抑えられると…ウェディングは時間稼ぎに徹すればいい。あとはジワジワ削るだけ…

ペイートにアヤカを殺させて、ペイートにボムボムを解放させる。そして、ボムボムをタクトの元に送りドリームを排除、そして、ラピスラズリと鬼ごっこをするように命じたクリスタルにボムボムとタクトを合流させて確実にラピスラズリを仕留めて、ペイートとウェディングで今、ウェディングの目の前にいるプリンセス・アリスと祭神を仕留めて即、ゲームセット


ウェディングが描いた計画は順調に進んでいた。





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