第3話 ようこそわが家へ

 私は、幽霊の女の子をわが家に連れてきた。


「ようこそ、我が家へ。まあ、間取りは変わらないけどね」


 そう言って、女の子を家に招いた。


「……明るい」


 女の子はボソッと呟いた。


 この子は今までずっと一人、暗い部屋で過ごしてきたのだ。

そぞかし、心細かっただろう。

明るい部屋に表情を緩ませるのも分かる。


「これからは、ずっと明るいからね」

「うん!」


 私は、女の子の目線に合わせると、そっと頭を撫でた。


 こうして、頭を撫でることも出来るし、体温だって感じることが出来る。

背中に乗ってきた時は、重さだって感じたし、今ではこうしてコミュニケーションを取ることだってできている。

あまり、幽霊だとは思えなかった。

こんなに可愛いこの子が本当に幽霊なんだろうかとも思う。


「ねぇ、何か、霊的な事出来る?」

「霊的なこと?」


 幽霊の女の子は、少し顔を上げて言った。


「うん、あまり幽霊っていう感じがしなくてさ」


 私は、女の子に目線を合わせたまま言った。


「そうだ! よく、テレビとかで電気を消したり、ドアを開け閉めするでしょ?」


 いわゆる 、ポルターガイストというやつだ。

隣の部屋では実際にポルターガイストが起こっていたのだから、出来るのだろうと考えた。


「あっ、それなら、得意だよ。ずっと、やってきたからね!」


 幽霊の女の子は、少し表情を明るくして言った。


「得意なのは、どうなんだろう……」


 そう思ったが、生で見るポルターガイストに、どこか期待している自分がいた。


「ドアを、閉めます」


 女の子は、張り切った様子で言った。


「おぉー」


 私は、期待で口を開くと、床に直に座って、女の子を見上げていた。


「いく、ね」


 そう言って、女の子は、大切に抱えていたボロボロになったぬいぐるみを頭の上に乗せた。


『そこに、乗っけるんだ……』

 

 心の中で呟いた。


「どうぞ!」


 私の言葉で、女の子は動いた。


「んっ!」

『一体、どうなる……』


 固唾をのんで、女の子を見守っていた。



 バタん!


「えぇ!!」


 なんと、女の子は普通に両手を使い、ドアを閉めた。

それは、人間の女の子と何も変わらぬ動作で。


「んふぅー」


 ドヤ顔で幽霊の女の子は、私の方に振り返った。


「ドヤ顔!? もしかして、全部、手動でやるの?」


 私の疑問に女の子は、一瞬不思議そうな顔を浮かべたが、すぐに笑顔で頷いた。


「うん!」

「幽霊とは……」


 しかし、可愛いことに変わりはなかった。


 こうしてみると、ますます、彼女は幽霊なのか疑問が膨らんだ。

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