冥剣術士ナズナ

アオピーナ

序幕

000 開幕


 ――我は我の課題をクリアした。後は……、



 どこかの真っ暗な空間で、少女の声が木霊していた。


 夜闇よりも暗く、深い。


 人の身であれば気軽に到達し得ない境界。



 ――さて、久々の異世界だが。



 はやがて境界を越えて。



 ――果たして、誰が我の糧となるだろうな。



 やや上機嫌に呟いた少女の声と共に、白い空間の向こう側へと消えていった。

 

◆◇◆◇


「ロユリ、貴様の努力は徒労に終わるぞ」


 女王は玉座に座り、左手に着けてある四つの指輪に視線を移し、四色に光るそれらを撫でて再び呟く。


「筆頭騎士団を遣わす前に、まずは『大剣霊』でも用いて貴様を――『冥剣』を手中に収める。『開闢の刻限』の成就は、揺るがない」


 女王は、そう言って笑んだのだった。


◆◇◆◇


 やがて、剣に囚われた少女が隣合う世界の、ごく平凡なアパートのドアポストに刺さった時。


 一人の女がその剣を引き抜いて、二世界を巻き込む物語は幕を開ける――。

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