最強キャラドリームデスマッチ

黒百合咲夜

プロローグ

 命乞いをする最後の勇者の心臓を、龍牙が貫く。今ので、この惑星を護っていた連邦軍は全滅した。

 涙を流し、血を吐いて事切れた勇者の少女の亡骸を冷たい目で見ながら、龍牙が不満を口にする。


「弱い……もう少し、まともな奴はいないのかよ……」


 万を越える連邦軍の死体を踏みしめながら、龍牙は天を仰ぐ。空一杯を埋め尽くすのは、地上を制圧するために部隊を運んできたドラムグード王国の輸送艦隊だ。

 龍牙が先行して攻撃し、連邦軍を壊滅。その後、別部隊を降ろして惑星を制圧する。それが、ここ最近のドラムグード王国の戦法だ。

 が、その戦法に龍牙は不満を持っていた。

 相手が勇者とはいえ、龍牙からすれば有象無象。こんな弱い連中の相手よりも、他の四天龍が担当した聖天龍相手のほうが楽しめると思っていた。

 苛立ちから、近くにあった連邦軍の戦車のがらくたを蹴り壊す。それでもまだ、文句をやめない。


「こんなのソーマにやらせろよ。あいつは対軍隊戦術のエキスパートだろうに……」


 惑星にある各都市へと乗り込んでいく制圧部隊を眺めながら、龍牙が踵を返す。本国に帰ったら、統兵局の連中に文句を言ってやると心に誓って。

 迎えの船などいらない。神化して、龍の姿で本国まで飛んで帰ろう。そう考え、龍牙は指を口に咥える。


『――退屈そうだーねー! 面白い世界に案内しよーかー?』


 いかにも胡散臭い声が聞こえ、龍牙が動きを止める。周囲を見渡してから、低い声で尋ねる。


「何者だ? 姿を見せろ。さもなくば、ここら一帯を消し飛ばすぞ」


 全身に魔力を満ちさせ、警告ともとれる殺気をばらまく。その殺気に怯え、ドラムグード王国軍に乱れが生じた。

 だが、それを気にしないように変わらない口調は続く。


『強い敵と会いたいのだーろー? なら、いいじゃないかー!』

「はぁ? それは、どういう……」

『乗り気だねー? じゃあ、ご案内ー!』


 龍牙の体が光に包まれる。その正体を、龍牙は即座に看破した。


「強制転移!? どこに……!?」


 龍牙の姿が消え、静寂が訪れる。

 そして、目覚めた龍牙は、見知らぬ場所に立っていたのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る