美少女と異世界転移したと思ったら親父だった~俺と親父が伝説になる話~

きゅーず

~伝説の始まり~

どうしてこうなったんだろう。

割と平凡な人生を歩んできたはずなのに……

広大な緑の大地で絶望している1人の少年こそが、この物語の主人公、近藤 翼である。


近藤 翼、15歳は平凡な毎日を送っていた。普通に学校に行き、友達もいた。

しかし、ある日のこと、部屋でネットサーフィンをしていると、突然目が見えなくなるほどの光が襲い、俗に言う異世界転移をしてしまったのだ。


ただの異世界転移なら良かったんだが……


「ん……?だれだこいつ? 」


転移した事実に絶望してまもなく、気が付くと隣に小さい女の子が寝ていた。

小さい体にフサフサとしたケモ耳とやらがついている。

「かわいい…… 」

思わず呟いてしまったが、無理もない。

俺は女という生物と関わったことがほとんどなく、

耐性がない。しかし、俺が見たことのある女性の中では、ダントツで可愛かったのだ。


「んっ……んん……ん? ここはどこだ? 」


ケモ耳の少女が目を覚ました。


「あっ大丈夫ですか? 」

「ん……ん?おお、翼じゃないか。ここは一体どこ

なんだ? 」


ん?なんでこの子は俺の名前を知っているんだ?

というか、この話し方、どこかで聞いたことのあるような…


「おい、おい!翼! 」

「はい! 」

「どうしたんだ急に黙り込んで。てかここはどこなんだ?ちゃんと明日には帰れるんだろうな?

明日は大事なプレゼンなんだよ 」


プレゼン?なんのことだ?おい、まてプレゼンってまさか……!


「すみません、名前を教えていただけますか? 」














「何言ってんだ?俺は近藤 徹、お前の父親だよ 」


間抜けな顔でケモ耳美少女が言った。


あまりの衝撃に数秒固まった。

目の前の美少女が実の父親だと言われたら無理もない。しかも数分前には、「かわいい 」という、健全な男子高校生が父親に絶対言わないであろう言葉を発してしまったのだ。信じられるわけが無い。


「血液型は? 」

「A型」


「好きな食べ物は? 」

「馬刺し 」


「妻の名前は? 」

「近藤 咲良 」


「全部合ってる……………… 」


認めざるを得なかった。

この美少女があの強面でおっかない親父だということに。


「おい、どうしたんだ翼?急に訳の分からん質問をして。説明しろ!」


俺はため息をつきながら、説明をした。

どうやら異世界転移をしてしまったこと。

親父がケモ耳美少女になっていること。

ここがどこだか分からないこと。


「おい、翼 」


「ん? 」


「この状況結構まずくないか? 」


「知っとるわ!!!!!! 」


何せ丸腰で異世界に転移しているのだから、危険以外の何物でもない。こんな状況でモンスターみたいなやつに襲われたら即刻死だ。



グォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ




「なんだ今の声!」

「やばいやばいやばい!とりあえず逃げるぞ!! 」



走った。ただひたすらに走った。

ふとして後ろを振り向くと、小さい体を必死に動かしている親父と、得体の知らない生き物がいた。

でかい。とにかくでかい。あんなのにふみつぶされたらひとたまりもないだろう。

しかも……なんかこっちに向かって来てないか?


「やべえ……親父!走れるか!? 」

「はあ……はあ……はあ…… 」


無理そうだ。小さい体になって体を動かすのもままならないようだ。


「くっそ……! このままだと追いつかれる! 」


意を決して親父を抱き抱え、走り出した。

事情を知らない者が見ればロマンティックに見えるのかもしれないが、俺は、実の父親を抱き抱えているという羞恥心に耐えつつ、とにかく走るしかなかった。


(くそっ!これが親父じゃなければ……)


「翼!もうすぐそこまで来てるぞ! 」


「くっそ!せめて親父だけでも!おらああああああああぁぁぁ 」


次の瞬間、翼の目の前は真っ暗になった。









「……さ、……ばさ!翼!起きろ!!! 」

愛嬌のある声が呼んでいる。


「こ……ここは?どこだ…… 」

「近くの洞窟だよ。全く、俺を投げ飛ばすなんて無茶しやがって! 」


「な、なんで俺は生きてるんだ? 」


「あの野郎、お前を蹴ったあともずっと走っていったんだ。お前は打ち所がよかったみたいだな 」


「そ、そうか 」


「そんなことより、近くに街があったぞ! 」




「まじか!行くっきゃねえ!! 」






外の眩しい光に向かって2人は走った。





人々はまだ知らない。

彼らが伝説になることを。







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