第21話 知的好奇心(※微エロ注意)

 スライムはこの天使を宿主と認識したようで、袋からはみ出してはいたけれど天使から離れようとはしなかった。スライムは天使の手足の先からゆっくりと体を包みこんでいったのだけれど、その動きに呼応するかのようにこの天使は微かにではあるが艶めかしく痙攣していた。私はその光景に息をのむことしか出来なかったけれど、アイカは天使の動きの一挙手一同を見逃すまいと集中しているようだった。


「あのさ、アレって普通のスライムじゃいないんだよね?」

「多分そうだと思うけど、私は普通のスライムも見たことないかも」

「私も見たことはないんだけどさ、アレって体に付いたらまずい感じになるんだよね?」

「うん、マズイって言うか必要以上にドキドキしてしまう感じかも」

「それなら、直接触れないように何か棒っこでも探してくるわ」


 アイカは部屋の中を探し回っているのだけれど、そんなに都合よく探し物が見つかるとは思えなかった。なにせ、この部屋はガラクタ置き場も兼ねているような場所なのだ。棒状の物なら探せばあるかもしれないけれど、探している間にスライムは天使の体のほとんどを包みこんでしまった。申し訳程度に口と鼻は空いているのだけれど、背中に生えている羽の一枚一枚も綺麗に包みこんでいた。


「ちょうどいいものがあったよ。これって凄くない?」

「うん、何がちょうどいいのかわからないけど良かったね。それって何か特別なの?」

「えっと、この棒は強力な振動を与えて穴を開ける装置なんだけど、壊れていて穴を開けるような強力な振動が起こせなくなってるんだよね。ちょっと動かしてみた感じだけど、マッサージにはちょうどいい強さなんだよね」


 眼鏡の奥でアイカの瞳が怪しく輝いたように見えたけれど、レンズにスライムの光が反射しただけかもしれない。スライムの光?


「ねえ、あのスライム光ってるんだけど、爆発とかしないよね?」

「スライムが爆散したら私達にもついちゃうかもしれないってことだよね。それはまずいかも。何か防護服的なモノ無いかな?」

「そんなモノ探したって簡単に見つかるわけないじゃない。本当に爆発したらどうしたらいいのよ」

「スライムがつかないようにするだけなら俺が守ってやるよ」


 ルシファーがそう言うと、私の体にバリアを展開してくれた。アイカはなぜかそれを拒否したのだけれど、それには何か深い理由があったのだろう。


「光っているのって、もしかして、スライムじゃなくて天使の羽じゃない?」

「本当だ、羽が光っているように見えるね。アレってどういう現象なんだろ?」

「アレはな、たぶん、力を貯めている状態なんじゃないかな。俺もミカエルも本気で戦う時は羽が増えたり光ったりしているからな。でも、あいつは何と戦っているんだ?」

「きっと、羞恥心と自尊心と戦っているのよ。私もこれ以上知的好奇心を抑えることが出来ないから、行かせていただきます」


 アイカはその持っている棒を天使の体に押し付けようとしていたのだけれど、狙っている場所を上手く突くことが出来ないようだった。振動機能はまだ使っていないようだったのだけれど、単純に筋力が足りないらしく棒を持つ手がプルプルと震えていた。

 その固い棒をどこに押し付けたかったのかはわからなかったけれど、天使の太もも付近に当たったまま振動すると、その動きに抗うことが出来ない天使は微かではあるが吐息を漏らしていた。そのままゆっくりと棒を動かすアイカではあったけれど、その動きは雑な物でどこを狙っているのかわからなかった。それでも、天使はその振動に耐えることが出来ずにいたようで、漏れていた吐息には少しだけ声が混じっていた。


「ねえ、この振動って私も辛いんですけど。サクラが変わってくれたりしないかな?」

「ごめんなさい。私そういう事担当じゃないんで出来ないんです。それに、私って巫女だから天使を傷付けるのとか良くないと思うし、それはアイカが自分の知的好奇心を満たすためにやればいいんじゃないかな?」

「そんな事は言わないでよ。私って、見た目以上に体力ないからもう限界が近いのよ。このままじゃ天使にだって良くないと思うのよね。やっぱり、丁寧な対応が求められると思うのよ」

「わかったわ。わかったけども、もう少しアイカが頑張ってちょうだい。私がどうしたらいいのかわかるくらいにはやり方を見せてちょうだいね」

「了解。今から私も頑張ってみるから、私の頑張りを見逃さないでね」


「「あ」」


 アイカが振動する棒を脚から上へと動かしている時に、その振動によって天使が着ていた服が溶け落ちてしまった。どうやら、このスライムは人体以外の物を溶かしてしまう性質があるようだ。心なしか、振動している棒も短くなっていっているように見えたのだけれど、このままだと私に渡されるときには物凄く短くなっているのではないだろうか。そう考えると、私はここにきて初めて選択を間違えたような気がしていた。

 若干ではあるが短くなった棒を持ったアイカは少しだけ天使に近付くと、その棒をわずかに膨らんでいる胸あたりに移動させていた。胸の中心部分に近付くにつれて天使はビクビクと動いていたけれど、アイカはその棒を中心から遠ざけるように首元へと移動させた。アイカの目は集中しているようだったけれど、その口はやや半開き気味でとても楽しそうだった。


「ねえ、この天使って今何を考えているんだろうね?」

「さあ、案外何も考えていないのかもしれないよ」

「そうかもしれないけどさ、それだったらそれでどうにかしたくなっちゃうよね」

「アイカってそう言うのも好きなわけ?」

「好きって言うか、どんな反応するんだろうって気にはなるよね。そうだ、忘れ物あったからちょっとこの棒を持っててもらってもいいかな?」

「え、忘れ物って何?」

「いいからいいから。任せたよ」


 アイカは私にこの棒を持たせると、いったん部屋から出て行った。私は振動する棒を持ったまま何をしていいのかわからなくなっていたけれど、この棒は最初に見た時よりも十五センチくらい短くなっているように思えた。

 棒の振動に合っているわけではないのだけれど、天使が時々ビクッとなるのが何だか面白くなってしまい、私は少しだけ意地悪をしてみる事にした。棒を天使の耳の位置から肩に真っすぐにおろして、そのままゆっくりと真っすぐに下へと向けて動き出した。ゆっくりとゆっくりと動かしていると、鎖骨を過ぎたあたりで天使の声が再び吐息に戻っていた。何かを期待するようにゆっくりと長い吐息を漏らしている天使ではあったけれど、私はその期待にすぐに応えようとはせずに再び少しだけ上へと動きを戻した。


「ああっ」


 天使の声が漏れていたのだけれど、私はそれに応えるように再び下へと動かしていった。そのまま下へと動かしてはいたのだけれど、中心付近には触れないようにしてそのまま棒を腰の方へと下ろしていく。棒が短くなった弊害なのかはわからないけれど、最初に渡された時よりも振動が強くなっているように感じていた。感じているだけで実際が強くなっているのか、私が強くなっていて欲しいと思っているだけなのかはわからないが、足の付け根を刺激し始めた時の天使はその体を後ろにのけぞらせていたのだった。

 私が足の付け根を重点的に責めていると、天使から懇願するように「お願いします」と切ない声で言われてしまった。私はそれをもう少し続けて欲しいんだと解釈して、そのまま前から後ろに移動してみる事にした。

 背中に生えている羽が若干抜け落ちてはいたけれど、床に落ちている羽はスライムがついていないのに艶々とした輝きを放っていた。それが私にはとても美しく見えて仕方なかった。

 そろそろ前に戻って足と足の間を責めようかと思っている時に、アイカがあさみを連れて戻ってきた。


「さあ、ここからはお姉さん達の時間ですからね」


 アイカは得意げにそう言っていたけれど、急に連れてこられたらしいあさみは状況を理解することが出来なかったようで、ただただ狼狽えていた。それでも、私が持っている棒を見ると理解した様子で、ニコリと笑って暖かい表情になっていた。

 二人の目は真剣そのもので笑ってはいなかったけれど、私も似たような感じなのだろうと実感していたのだ。

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