【甦生契約条件⑵】

[契約、ありがとうございます。]

そう言った死神は黒い蝋燭を契約書で巻いた。そして、それを持ってまた変な呪文を唱えた。その瞬間、黒い光––––胡散臭く聞こえるが本当にそう見えたのだ––––が勢いよく広がり、目の前が真っ暗になった。死神はその光が無くなったのを見計らい

[これで契約は完了しました。あとはこの蝋燭に火を灯すだけです。]

と言った。蝋燭には私の名前が白い文字で書かれていた。

[では、こちらへ。]

死神は蝋燭を持って立ち上がり、机のもっと奥にある扉を開けた。私もあとに続く。

 その部屋は先程までいた部屋と同じく天井が高く、高いところから低いところまで全ての空間を埋め尽くすように鉄の燭台がならんでおり、そこにはたくさんの白い蝋燭が灯っていた。それには異なる名前が書いていて、それぞれ長さが違った。

[これは何ですか?]

私が聞くと

[人の命です。]

と死神は答えた。・・・命か。その時、風が吹いて、目の前にあった火が消えた。それを見て、死神は

[今、この人は死にました。]

と静かに言った。風ひとつで死んでしまう命は本当に儚いのだなと思った。私は何となく申し訳なくなって一礼した。死神は私を横目に奥へと進んで行った。私も後を急ぎ足で追った。カツカツカツという私の足音だけが静かな部屋に響いた。少し歩いたところで死神が止まって

[ここです。]

と呟いた。私の目線くらいのところの燭台には蝋燭が立っていなかった。

[では、灯しますね。]

そう言って死神はその黒い蝋燭を立て、またもや呪文を唱えた。その瞬間、私はきらびやかな光に包まれた。



 死神によって生き返された私は『ユカ』として髪型を変えタカに近づき、結婚までした。十分だった。でも、もっともっと一緒にいたいと思ってしまった。

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