第7話 彼女の詩

 言葉にできない想いがある


 わたしの指先に触れる

 あなたの指先の震え


 夜が静けさを際立たせた


 見つめ合い なにかを伝えようとするけれど

 息をのんだまま声にならず

 流れていく白い吐息が

 冬の空に消えていく


 わたしたちは若い

 きっとふたりは

 目の前に揺蕩う未来を

 密かにおそれているのだと思う


 幾億の言葉を費やして

 それでも伝えられない想いがある

 そんな微かな予感に怯えているんだと思う



 これほどの想いが

 不確かな ものであることが悲しくて

 悲しさを乗り越えられるほど

 わたしは大人ではない

 傷つくのが怖い



 言葉にできない想いがある


 だからこそ

 その想いが伝えられるなら

 その想いが伝えられるうちに


 どうか伝えて

   

 言葉じゃなくても、いいの。


 明日

 全てだと思っていたものは

 消えてしまうかも知れないのだから

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る