第十三話 人間とプラモデル

「お前の教え子、なにやってるんだ?」


「言うわけないよぉ~。それじゃ面白くないだろう?」


 ボーンとステークは戦場の上空から様子を見ていた。戦闘に関わる気はないが、自分たちの教え子の様子は気になる。


「お前と言う奴は……昔から本当に嫌な奴だよ」


「それに付き合う君も同類さ!」


「なあ、今戦ってるシュウとメイの顔、お前にわかるか?」


「あはは、分かるよ~」


「だろうな!」


 即答したステークにボーンはぶら下がりながら毒を吐いた。


「まったくこのお気楽野郎め!」


「お気楽で緩いのはあの家から変わらないさ~。それに、ボクはプラモデルだから野郎でも無いしね~」


「そういうところが性格悪いってんだ!」


 ボーンは精一杯の抗議を込めて手足をばたつかせた。


「にぎゃあー! 落ちる落ちる落ちる!」


「たまには落ちろ!」



 戦場の上空でふざけている彼らを誰も見ていない。二体のプラモデルは自分たちが人間と似てきたと感じていた。人間同士の友も、こういうやり取りをしているのだろうか。


 少しでも似ているというのであれば、それは彼らにとっての僥倖だった。





「ねえねえ。ボーンちゃんのとこの二人って、仲良しなのかい?」


「……俺達よりはな」


「こっちも仲良しだから、これからの長期戦でも連携が取れるんだよね~」


「だろうな。俺らみたいなことにはならんだろうな」


 皮肉を交じえるボーンと笑っているステークの二体は、岩山へ墜落し倒れたままの姿勢で話していた。


「あーあ~、本気で落とさなくともいいじゃないか」


「そっちこそノリで落ちるんじゃねぇよ」


 軽く笑い、ボーンは体を起こし戦場へ顔を向けた。


「こっちの教え子たちの動きはだいたい予想できるが、そっちはどうすると思う?」


「うーん……そうだねぇ」


 あお向けの状態からバーニアを吹かしてふわりと浮き上がり、ステークも首に手を当てて考え答えた。


「こっちも、まだまだ決まり手があるからねぇ」


「けっ!」


 やはり具体的には言わないかと吐き捨て、ボーンは森林エリアを見やった。


「お前らしい戦法ってところか?」


「さあ? ボクは基本を教えるタイプだからね」


 どうにもこうにも、相も変わらず食えないプラモデルだとボーンは半ば感心すらしていた。そして上空から見た戦場の様子を見合わせ。


「なんか予想できたわ」


 嫌な予想が確信に変わった。


「さすがだねぇ」


「お前の考えることだからな」


 呆れながらも、ボーンは内心では少し焦っていた。予想が当たっていた場合、二人が勝てる確率を考え。


「信じるしかないかぁ」


 ボーンは二人を信じることにした。



 二人がどこまで強くなったのかを確かめたい。そうすれば、ここから助け出すまでの時間が短縮される。



 辻褄の合わない理屈だが、まだ明かしていない秘密がある。詳しい理由を、まだ二人には伝えられていない。

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