暗く冷たい水底を歩いているような気分です

 私の母は人形の怪異に殺された――この物語は、不運な、しかしあやふやな記憶の中で生きている女子の訴えから始まります。
 冷徹で読みやすい文体ゆえにサクサクと読み進めることができますが、すりガラスの向こう側を覗き込むような、或いはおぼろに光のさす水底を歩いているような奇妙な感覚を、主人公の目を通して強く感じました。
 果たして真実はいかなるものなのか。それは読んでみないと解りません。