第21話:超人気女優ですらも寝顔には敵わない



「ただいまー」


「たっだいまぁ!」


「お邪魔します」



 華と春渼さんが話し合った後、なぜか華が積極的に家へ招き入れようとし、僕が押されて折れた。



「さて!それじゃあお兄ちゃんはソファで座ってていいよ!私はちょっと心音さんと話をするから」


「ん?そうなの?じゃあお言葉に甘えさせてもらおうかな」



 話ってなんなんだろうな…気になるけど女子の会話はあまり聞かない方がいいってお父さんが言ってたな…。


 僕は言われた通りソファに座り、テレビを見始めた。



 今日は少し疲れたな…人助けをしたり、初めてカップル用ジュースを飲まされたり…。



(あれ……?少し眠いかな……。ちょっとだけ寝ちゃおう……)



 僕はソファに転がり、そのまま眠りへついた。



〜心音side〜



「さて…こんなものね!」



 私は春渼 心音。訳あって助けてもらった人に恩返しをするべく、家へ上がって料理を作った。


 彼は男だよね…?制服男物だし…。下手したら私より可愛いかも?


 というぐらいに可愛らしい男子に助けられた。



 あの場所で助けてくれたのは彼だけだったし、とても嬉しかった。


 彼は笹田 七美というらしい。いろいろなこと(自慢話)を彼の妹の笹田 華ちゃんに聞いた。


 最初はすごく睨んで警戒していたけど、出会ってすぐにブラコンだと気づいたので、それをうまく利用して恩返しをすることにした。



 今私が作ったのは冷蔵庫に入っていたものを使い、ペペロンチーノを作った。


 一応自炊はしているので、料理もそこそこできるのだ。



「料理も作り終えたし、七美くんは……寝ているのかな?」



 ソファで寝そべっていたので、そうわかった。



「ほーれ七美くん、私特製のペペロンチーノができ…た…………」



 私はその場でフリーズしてしまった。



 ここ数年、私は仕事が忙しく、とても“癒し”に飢えていた。


 そう、目の前にはなんとも愛らしい、可愛らしい、守ってあげたいという気持ちが出てくる。

 これが母性というものか。



「か…………か、可愛すぎる……!!」



 気がつけば無意識に手がわきわきと動き、気持ち悪い動きをしながら近づいていた。


 そして私の手が手が彼の頭まで伸びて撫でていた。


 妹の華ちゃんがいたら多分、いや、絶対怒られると思うけど今はおトイレに行っている。

 ペペロンチーノもちゃんと置いてきたから大丈夫…。



「んん?んふ〜〜………♡」


「ぬわあああ!!眩しい……!その笑顔、守りたいっ!!」



 七美はにっこりと笑い、それはそれはこの世とは思えないほど可愛いかおであった。



《心音はハートに深い傷(いい意味)を負った!!


ゲームオーバー……》



 そんなアナウンスが流れた気がした。




「んん?ぁ……あれ?春渼さん……?」


「はっ!?なっ、七美くん!ご飯ができたわよ!!」


「んんー……?」



 どうやらまだ寝ぼけているようで私が撫でていたことには気づいていないようだ…。


 あれは世界を揺るがす力を持っているわ…。確信した。




 ワナワナと体を震わせながらそう思う人気女優であった。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

※実際にはアナウンスは流れていません。


高評価お待ちしてます!

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