~鬼女~6

占竜の声に二人ともビクッっとなり我にかえる…



光一と登さんは占竜を掴んでいる手が変貌し


占竜が苦しそうにもがいているのを見て慌てて逃げだした!


家の外まで逃げると、もう安全だなと登さんは確信して

光一の肩に手をおいた…


「光一…


母さんと婆ちゃんを頼むな…」



光一に別れをつげると

そのまま、占竜のもとに向かおうとした…



「イヤだ!


父さん何で行くんだよ!


あんな奴にかなう訳ないじゃないかぁ!


占竜さんだってやられたんだ!


行ったって何ができるっていうんだよぉ~!


無駄死にするだけじゃないかぁ!!!」



登さんは光一の方を向き…


ニッコリと笑うと

そのまま鬼女きじょがいる二階へと…



光一はその場にふさぎこんで泣いていた…



「チクショウオォ~!」


光一は地面を殴りつける…



「占竜さん…


俺はどうしたら…」



登さんが二階に戻ると

占竜はぐったりと倒れていた…


「占竜さん!」



駆け寄りほほを叩くが反応がない…


占竜さんまで魂をとられてしまったのか…


壁を睨みつけ登さんは鬼女に語りかける!



「もういいだろう!


貴女あなたが苦しんだのは十分わかった!


ちゃんと供養するから…


もうやめてくれぇ~!!!」



登さんは土下座をしながら叫んでいる!


「ヴエェェェエェェ…」


女性の顔とは思えないモノが壁からでてきた…


髪が燃えているように真っ赤で…


頭には二本の角が生えている…


目からは黒い血を流し…


吐く息は悪臭を放っていた…



「クルシ…ムガイ…イ…


ナキ…サケ…ブガイ…イ…


ワ…レガ…アジワッ…タ…


クルシ…ミ…オマ…エ…ニ…モ…


アジア…ワセ…テ…ヤロ…ウ…」



登さんはくそぉ~っと

占竜を引きずり一緒に逃げだそうとしていた…



それをあざ笑うかのように鬼女は登さんを掴み

魂をえぐり出そうと胸に手を突っ込んだ!



その時っ!



「父さんを離せぇ~‼‼」



登さんは声のする方を見ると

光一が震えながら立っていた!



「光一!


何故戻ってきたぁ!


逃げろぉ~!


お前だけは生き残るんだぁ!」



登さんが叫ぶ!


光一はくそぉ~!と叫び

占竜さんから借りていた念珠を鬼女に投げつけた!



パァーン!!!


念珠が弾け飛び鬼女の体にめり込む!



「ヴエェェエェェ!?」



鬼女は登さんを離し苦しみもだえている!


怒り狂った鬼女は標的を光一にかえ掴みかかった!


その時、まばゆい光が鬼女の体から飛び出し

鬼女の手をはじく!



「孫に手を出すなぁ!!!」


念珠をその身受けたショックで

おじいさんの魂が解放され鬼女の攻撃を防いでいる!



「コザカシイ…ワァ…」



鬼女はニヤリと笑うと

おじいさんの魂を壁に叩きつけた!



「ノウマク サンマンダ バザラダン センダ

マカロシャダ ソワタヤ ウンタラタ カンマン!!!」



鬼女の体が赤く燃え上がり苦しみだす!


それを見た登さんは

息を吹き返している占龍に気づいた…


「占竜さん!」


占竜は、淡々たんたん真言しんごんを唱えていた…



占竜は鬼女が苦しんでいるのを見て水晶玉を取り出し

おじいさんの魂に近づけた…


魂は水晶玉へと吸い込まれる…


水晶をふところにしまうと占竜は息を切らしながら叫んだ!!



「登さ…ん…


ひとまず逃げるぞ!…」



占竜は登さんにそう伝えると

|真言を唱えながら家の外にむかった…





外に逃げ出した占竜達はその場にへたり込む…



占竜は笑っていた…


「登さん、光一、助かったよ…


光一が投げた念珠が俺とおじいさんの魂を

鬼女の体内から助け出してくれた…


魂を抜かれた時は…


流石にもうダメかと思いましたよ…


まさか鬼女とは…」



占竜は登さんと光一に御礼を言いった…



登さんは震えながら笑っていた…


「一旦は怖くて逃げ出しましたけどね…」



「息子さんを逃がす為でしょ?」



占龍は大笑いした…


おっと忘れるところだった!


ヒトガタをだしてもらえますか?



占竜から言われて

登さんと光一は胸にしまっていたヒトガタをだし占竜に渡す…



白い紙で作っていたヒトガタが真っ黒になっている…



すさまじい邪気だな…」



そう言うと占竜はヒトガタにライターで火をつけ

呪文を唱えてその場を清めた…


ヒトガタも燃え尽き占竜は二人を見てニッコリと笑う


「とりあえず…


おじいさんの魂だけは取り戻せたよ」



そう言うと占竜はふところから水晶玉を取り出した…



「水晶玉をおじいさんの胸にあててください…」



占竜は水晶玉を登さんに渡す…


水晶を受け取った登さんは占竜にたずねた…



「占竜さんはきてくれないのですか?」



「自分は鬼女を調伏ちょうふくする為に

身を清めて準備をします…


とりあえず病院におくりますよ…」



登さんはわかりましたと言うと

光一と一緒に占竜の車に乗り込んだ…


車の中で登さんが鬼女をやる時は必ず連れて行ってくださいと頼んできた…



「もちろん、そのつもりですが

再戦は今日の夜中になります…


あまり間をおくと今残っている封印がとかれてしまう…


そうなると、まず、今の家の主…


光一がマズい…


でも今日はおじいさんの通夜つやになると思いますが…」



「鬼女を放置して通夜にでていたら

親父に臆病者おくびょうものがぁって怒られてしまいますよ!


鬼女を倒して葬式の時には胸を張って親父を見送ります!」



占竜はニッコリと笑いうなずいた…



「わかりました…


では再戦まで壁を壊す道具を準備しておいてください…


それと、鬼女をなんとかする前に

あの店には絶対に近づかないように!


後はご飯を食べて睡眠を取り体力をつけていてください!」



登さんはわかりましたと笑った





登さんと光一を病院に送り届けた時にはすっかり夜が明けていた…



「朝日がまぶしいな…」



占竜は身を清め精神集中の為に滝を目指す…



その頃、登さんと光一は道代さんと久恵さんに一部始終を話し

みんなで霊安室のおじいちゃんのとこにむかった…


登さんは占竜に言われた通りに

水晶玉をお爺さんの胸につけると水晶玉が光り出し

お爺さんの胸に光が吸い込まれていく…


苦悶くもんの表情をしていたおじいちゃんは穏やかな表情になる…



それを見ていた道代さんはお爺さんに話しかける…



「お帰りなさい…


今日はお通夜ですぐにお別れになるけど…


また会えて良かった…」


お婆さんはおじいちゃんの手を握り締めて泣いた…



登さんはちょっと申し訳なさそうに久恵さんに話しかけた…



「久恵、通夜と葬儀の方は頼むな…


俺は占竜さんとけりをつけに行くよ…


最後まで見届けたいんだ…」



「はい、気をつけてくださいね」


久恵さんは登さんに優しい笑顔を見せ

それ以上は追求しなかった…


その様子を見ていた光一が登さんに言った…



「父さん俺も行くよ!」



「ダメだ!


あんなに危険だとは思わなかったからな…


お前は通夜にでなさい…」



「なんでだよ!


俺が行かなきゃみんな死んでいたんだぞ!


俺が借りた家のせいでこんなことになったんだ!


ケジメつけさせてくれよ!」



登さんは困った顔をしていた…



「わかった…


でも、危険と感じたら

今度は一人でも逃げろよ!」



光一と約束して一緒に行くことを承諾しょうだくした…



色々ありすぎてみんな疲れ果てていたので

久恵さんがとったホテルに行き

食事をとった後みんなで爆睡ばくすいした…






滝についた占竜は服を脱ぎ捨てフンドシ一枚になり滝の中へと入って行った…


「我が身を清めたまえ…」


占竜は滝にあたりながら気を高めていく…


一時間くらい滝を浴びた占竜は

自宅に車を走らせ鬼女調伏きじょちょうふくの準備にとりかかった…




準備が整った頃には23時になっていた…



鬼女よ…


待っていろよ…



苦しみの因縁いんねんを断ち切ってやるからな…


そう呟くと占竜は登さんと光一を迎えに車を走らせた…




葬儀社に到着した時には、お通夜にきた人が沢山いた…


コッソリと携帯で登さんと光一を呼び出し車に乗せた…



「さあ、気合いをいれてくださいよ!


今日でけりをつけます!」



「はいっ!」


車を発進させようとした占竜は

ふと、葬儀社の入り口を見ると

おばあちゃんと久恵さんが深々と頭を下げて

見送っているのがわかった…



占竜も頭を下げて絶対に負けられないなと

再度気合いを入れ直した…


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る