~鬼女~

さてと…


「今日の予定はっと♪」


…………


新しく開店する居酒屋店主の占いかぁ…


佐藤さんから商売繁盛しょうばいはんじょう

するように見てくれとの頼みだが


店主は占いを信じないと言っていたしなぁ…


いくら佐藤さんの友達だからと言っても…


気が重いなぁ…


占いを信じないなら頼むなよなぁ…


ブチブチと愚痴ぐちりながら占竜は準備を始めた


待ち合わせ時間は15時かぁ…


そろそろ行くかな…




愛車に乗り込み現場に向かう…


居酒屋についたのはいいが


鍵が閉まって誰もいない…


店に電話しても誰もでない…


ドタキャンかぁ?


それなら、それでかまわない♪


店を外から霊眼れいししてみたら嫌な気を出しているし


厄介そうだし触らぬ客にトラブルなし♪


30分待って帰ってこなかったら帰ろっと♪


コンコンッ


「占竜さん

こんにちは♪」


車の窓を誰かが叩くので振りかえって見るとそこには佐藤さんがいた。


「こんにちは

友達はお店にいませんでしたよ?」


佐藤さんに見つかってしまったと

内心ガックリしている占龍だが表情は笑顔だ。



「えっ?


光一さん


いないんですか?」



いないも何も15時15分になっているのに

車で待機しているからわかりそうなもんだが…



佐藤さんは、ちょっと天然入っているのかな?…


だが、それがいいっと


どこかで聞いたセリフを思い

ひとりでクスクス笑ってしまった…



「えっ?

何かおかしいことでもありました?」



「なっ何でもないですよっ」



とあわてて誤魔化す。



「光一さん、いないみたいだから

帰ろうかなと思っていたとこなんです」



佐藤さんは顔をくもらせ

鞄の中に手を突っ込みゴソゴソと携帯電話をとりだした…



「ちょっと待ってください

今携帯鳴らしてみますから」



あっ余計なことをと思ったが

言う訳にはいかない占竜は苦笑いをしていた…



プルルルル…




プルルルル…





プルルルル………………



佐藤さんが携帯をならしているがでないみたいだ…



しめた♪


とっつぁ~んから逃げられそうだ!っと


これまた、どこかの三世が言うセリフを思い浮かべて

一人クスクス笑っていたら…



「和美ちゃ~ん♪」



と前方から声が聞こえた…



「あっ!


光一さん!


どこに行っていたのよ~!


占竜さん、ずっと待っていてくれたのよ!」



「ごめん、ごめん♪

確変かくへんが終わらなくて!」



ニコニコしながら光一こういちさんが

にやけながら走ってきた…


あぁ~あ…


帰ってきちゃたよ…


占竜は予約の確認のため光一に話しかけた…



「こんにちは、

占いは今日で良かったんですよね?」



イヤミをこめて言ったんだが

うん、そうだよ、よろしくっと笑顔で返されてしまった…



経営者になろうと言うのに先が思いやられる…



「ちゃんと占竜さんに謝りなさい!」



佐藤さんはカンカンに怒っているが

光一さんは笑いながら


「占竜さん、ごめ~ん、

お詫びにこれっ」


と缶コーヒーを占竜に渡して

さあどうぞと店に入って行った…



「占竜さん、本当にごめんなさい

後で締め上げておきますから…」



と佐藤さんに謝られたら

許さないって言うわけにはいかない…


大丈夫ですよっと佐藤さんをなだめるしかない…



「では、占いの準備をさせてもらいますね」


光一さんに断りを入れ

テーブルに占い道具を並べる



「準備ができましたから

こちらにお願いします」



店のすみで佐藤さんにこってり絞られていた

光一さんを呼んで占いを始めた…



「さて、何を占いましょうか?」



もうかるか占って」


ストレートな質問できたな…


まあ、いいかと、呪文をとなえ水晶玉をのぞきこむと…


えっ?


死?……………



占術師が死期しきを見るのはタブーとされている…


しかし、光一さんの死相しそうがあまりに濃い為


質問内容と関係なく水晶にうつしだされていた…


近いぞ…


いつだ…


占龍はあまりの展開に冷や汗をかきながら

水晶を凝視ぎょうしした…


かなりヤバそうな雰囲気なので

光一さんに告げずに死期を占ってみた。


1ヶ月以内…


絞り込めば、まだ細かくだせるか?…


「どう?儲かる?」


唖然あぜんとしている占竜にニコニコと

光一さんは話しかけてきた


「あっ…


ええっと…


そうですね…


今のままだと不味まずいですね…


つぶれてしまいますよ…」



占龍は死期が近いと言う訳にもいかずに遠まわしに答えた…



「え~!


そんな訳ないよ~!


店の資金は親が出しているから

どんなに赤字でも、つぶれることはないよ!


やっぱり、占いって適当だなぁ」



笑いながら光一さんに言われたが

店主てんしゅがいなくなれば、

お金があってもつぶれるよとは言えなかった…



「店に問題がありそうなんで

ちょっと調べてもいいですか?」



光一さんは、どうぞ、どうぞと、

たかが占い師が何を調べるんだ?


占い外れたなっと言いたそうな表情で、ニヤニヤと笑っている…


占龍がペンデュラムを取り出したとたん

店の中がうす暗くなっていく気がした…


なんだ?


急に邪気じゃきが強くなってきやがった…


これではペンデュラムが狂ってしまう…


チィッ


今の装備で原因を見つけるのは難しい…


ここまでの邪気を放つとはここはかなり悪い場所だな…



仕方なく占竜は光一さんに

ここはまずい違う場所で店をした方がいいと

アドバイスをしてみたが何バカなことを言っているんだと

一蹴いっしゅうされてしまった…



それならお祓いをした方がと言ってみたが…


「そうやって客から金を盗るんだろ?

俺は騙されないからな!」


と聞き入れてくれない…



「なっ何、失礼なことを言っているの!

占竜さんは私の命の恩人よ!」



佐藤さんが光一さんに食ってかかってくれた…


「和美ちゃんも騙されているんだよ

占い師なんて、詐欺師サギしとかわらないさ♪」



と笑いながら光一は言い放った…



「そうですねぇ…


占術師は詐欺師みたいなもんですよ…


願いを叶えられない時はね…」



昔を思い出したのか

占竜は寂しそうにポツリと言うと…



「今日の占い代は結構です

あまりアドバイスできませんでしたので…」



占竜は寂しそうに言うと

ラッキーっと光一さんは喜んでいた…



光一をにらんで佐藤さんが怒鳴どなる!


「そんな、わざわざお店まで来ていただき

待たせた挙げ句に占い代まで…


光一さん!」



占竜の寂しそうな顔を見て佐藤さんは言っているんだろうが

待たされた、占い代が欲しいなどではない…


危険な場所にいる光一を救ってやれない


油断しまくっていたおのれを恥じているだけだった。


今回は引き下がり

様子を見ながらリベンジだと占龍は考えていた。




自宅に帰った占竜は強力な結界を占術部屋に張りめぐらし

光一さんの店を遠視えんししようと試みる…


嫌な邪気の奥底に凄まじい怨念おんねんが見えた瞬間しゅんかん



パーン!



と占竜の念珠ねんじゅが弾け飛んだ!


………



クソッ気づいていやがる…



俺とやる気か?


来るなら来い!


来てくれたなら光一さんは救うことができる…



何者かは知らんが相手になるぞ!


と思っては見たが

光一の店でペンデュラムをなおした瞬間に

邪気を薄めるくらいかしこいやつだ…


相手はそこまでバカではないだろう…


わざわざ俺を殺りにくるより

光一さんを殺った方が…

俺が苦しむのをわかっているハズだ…


俺はその後でもかまわないだろうからな…


「くっ…」


無力な己をのろう…


修行が足らないな…


怒りや憎しみでは何も解決できない…


初心に戻らなければ…


光一さんが殺られる前になんとかしなければ…


切なる思いをあざけ笑うかのように

時は無情にも流れ占龍の占いまでも外れてしまう…




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