天気屋さん

ここは、町はずれの一角にひっそりとある、一人の魔女が営むカフェ。

『ウィッチカフェ』

一般のお客様には見えないように魔法が掛けられており、店の前に斜めに置かれてある看板を、まっすぐに直すとお店が現れるという仕組みになっている。


ひっそりと営業しているウィッチカフェには、いろいろなお客様が訪れる。

いろいろな種族、動物、時には一般のお客様も。

仕事の合間に来る人や、ちょっとした観光、常連さんになってくださっている方も多い。

そんな方々の、ちょっとした憩いの場なのです。


さぁ、本日はどんなお客様が来てくださるのでしょうか?


カランコロン。


「いらっしゃいませ!」

「今日は雨ですね。まぁ、私が運んだんですけど。はい。一人です」

「あ!天気屋さんじゃないですか!こちらの席へどうぞ!」


そう、この方は名前の通り、世界に天気を運んでいる方のなのです。

ある日は晴れを、ある日は雨を、またある日は雪を。

その日によって違う天気を世界中に運んでいるのだ。


その為、お店に来られるのは突然。夏のある日に来たり、冬のある日に来たりとバラバラなのだ。

でも、お店を出してから毎年必ず来てくれる常連さんなのです。


「今日はどうして雨だったんですか?」

「どうして。いい質問ですね。天気の神様がそうおっしゃったからです」

「天気の神様……」


ゼウス様やヘラ様のような神様がいるように、この世界には天気の神様もいるらしいのだ。


「あ、何にします?」

「では、いつものを貰おうかな」

「かしこまりました!」


天気屋さんが言ういつものとは、ホットミルクとシュークリームだ。

天気屋さんは、大のシュークリーム好きらしい。


「お待たせしました、シュークリームとホットミルクです!」

「ありがとう」


天気屋さんは、シュークリームを一口食べ、幸せそうな表情を浮かべる。


「やはり、ここのシュークリームは美味しい」

「ありがとうございます!」


なんだか照れ臭い。


「そうだ。これを進呈しよう」

そう言って天気屋さんは、ポケットから小さな便箋のようなものを取り出した。

「これは?」

「これは雨の雫の結晶が入った便箋。しかし、普通の雨の雫ではない。世界で数滴しか落ちる事のない雫なのだ。その雫の結晶を持つものには幸運が訪れると言われている」

「幸運!?」

「左様。なので受け取ってくれたまえ」

「は、はい。ありがとうございます」


便箋の中で主張する訳でもないのに、何故だか目が行ってしまう。それくらい綺麗な結晶なのだ。


「さて、明日も天気を運ばなければいけないので、この辺でお暇させてもらうよ」

「ありがとうございました。またお待ちしていますね!」


カランコロン。

「ありがとうございました!」


天気屋さんは、空中に浮き、空へと消えていった。


では、本日のウィッチカフェはここまで。如何だったでしょうか?

本日のお客様は天気屋さん。明日はどんなお客様が来るでしょうか。

楽しみですね♪


それでは、いい夢を🌙

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